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深夜1時、彼女は換気扇の下で屁をこいた。

掲載日:2026/10/29


その夜、美咲と健太は仕事終わりに近所の焼肉屋へ行っていた。


お互い酒好きで、休み前になるとこうして飲みに行くことが多い。


ビールを飲んで、肉を焼いて、くだらない話をして笑う。


追加で頼んだレモンサワーの氷が、グラスの中で静かに鳴っていた。





深夜一時。


静まり返ったアパートの台所で、美咲は換気扇をつけた。


付き合って三年。

同棲して一年。


それでも彼氏の前で屁だけは絶対にしなかった。


どれだけ腹が張ろうが、どれだけ苦しかろうが、乙女の尊厳として守り続けてきた。


だが今夜、限界だった。


焼肉。

ビール。

キムチ。

炭酸。


役満である。


ベッドでは彼氏の健太が寝ている。


確認済みだ。いびきも聞いた。


美咲はそっと布団を抜け出し、換気扇の下へ向かった。


音をごまかすため、水も流した。


完璧な作戦。



「よし。」



覚悟を決める。



――ボフッ⋯ブッ⋯⋯プウゥゥ。



思っていたより三倍は大きい音がした。


換気扇が一瞬「ヴンッ」と吸い込み負けるほどの量。


しかも長い。


美咲は固まった。



静寂。



そして背後から声。



「……美咲?」



終わった。


振り返ると、半目の健太が目をこすりながら立っていた。



「起きてたの!?」



「いや……地鳴りかと思って」



「……最低!!」



顔を真っ赤にしてしゃがみ込む美咲。


もう人生終わりだ、くらいの勢いで落ち込んでいる。



健太は少し黙ってから、真顔で換気扇の下に立った。



「……俺も、ここ使ってた」


「え?」



次の瞬間。



――ブフッ。



美咲は目を丸くして、顔を上げた。



二人の目が合う。


深夜のアパートに笑い声が響いた。



翌日。


換気扇の下に「予約表」が貼られていた。



一時から一時十分、美咲。


一時十分から一時二十分、健太。



少し曲がった文字を見て、美咲は吹き出した。



換気扇の音が、今日も静かに回っている。



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