竹林で猛るショタコンビは尊い
クール系少年のアスカ君とカワイイ系の翼君、ショタコンビが少年士官として活躍するみたいです。期待されているのは戦闘だけではないようで……?
マタドール地方ラッセル基地、この帝国軍基地には名物がある。それはショタコンビと称されるふたりの少年士官だ。
その少年士官のひとり、空色アスカは鋭い瞳で食堂を見渡していた。昼時で皆が食事をしているなか、彼は注文した料理にはまだ手をつけておらず茶碗からは湯気が立ち上っている。
「アスカくーん、お待たせ!」
明るい声でお盆を手に現れたのは天瀬翼、もうひとりの少年士官である。ショタコンビは一緒に食事をするのがいつもの日課だ。
翼が向かいの席に着くとアスカも箸を手に食事を始める。
「タケノコご飯、美味しそうだよねえ」
笑顔を見せる翼、表情豊かで愛嬌のあることで有名だ。ここが帝国軍基地の食堂ではなく街のカフェだったらスマホで写真を撮っているだろう。
「もうそんな季節か」
翼が食べるタケノコご飯に対し、アスカが食べるのはタケノコの煮物。その味は家庭料理の平均より薄い。肉体が資本の兵士の食事ゆえ砂糖は少ない。
「ラッセル町の特産品だからな、タケノコは」
「おいしいなぁ~」
基地内放送のベルが鳴った。
“空色アスカ、食事が終わったら司令官室に来い”
基地司令、ダイオーガ将軍本人の声でそう命令が下った。アスカはまるで聞こえていないかのように普通に食事を続ける。
「アスカくん、頼りにされてるね」
翼は苦笑いだ。アスカは食事を終えて食器を片付けると司令官室へ向かう。
「ダイオーガ閣下、何の依頼で?」
基地司令ダイオーガ将軍が待つ司令官室に入るとアスカは単刀直入に説明を求める。
「マタドール竹林にオークの連中がうろついている、蹴散らしてこい」
将軍はそれだけの命令を命令書と一緒に出す。
「お前なら1人か2人で十分だろ」
現状、ここから多数の戦力を出すわけにはいかないことはアスカも理解している。
「それはいいが、敵の戦力はどの程度だ」
「ようわからんがせいぜい偵察兵の10体くらいだ」
命令書にはマタドール竹林のオーク軍活動について記された報告が付記されているが、その内容は漠然としていて、本来ならもっと情報を得るために偵察しろという命令を下すほうが適切だろう。
アスカは命令書を手に退室する。
「アスカくん、司令からの命令は?」
司令室の外で翼が待っていた。アスカは命令書を見ながら語る。
「村の木こりがマタドール竹林でオーク軍の偵察兵が活動していることを目撃し、ウチの斥候が連中の活発化を確認したようだ。それでオレに討伐しろとのことだ」
「そうなんだ、君が率いる戦力は?」
「オレを含めて2人」
アスカは報告書付命令書を翼に見せる、翼はその内容の乏しさに引きつる顔を見せる。
「翼、オレと来てくれ」
「うん!」
アスカと翼は戦闘服に着替え、車庫に向かう。屋根を装備していない小型車両に乗り込んで竹林に向かう。
アスカの運転する車が街道を走る。
「街を歩く人が多くなってきたね、あったかくなってきたからかな」
翼のつぶやきにアスカが答える。
「冬眠から目覚めたか、普通の人間は真冬を走り回ることはしない」
アスカは翼と一緒に行った今季の冬季訓練を思い出す、今回は関係ないが。アスカが思考と止めると翼が提案する。
「情報が不足しているから、とりあえず町の人たちに聞き込みしてみよう」
「報告では町の木こりが竹林でオーク軍の兵士を目撃したらしい」
そこで町の木こりの集会所へ向かう。
「今の時間じゃ、木こりは皆が外に出ているよ、竹細工職人に話を聞いたら?」
「竹細工はこの町の名産品だからな、オレはよく知らないが」
「ボクは一般人向け体験に参加したことあるよ」
竹細工職人はあちこちに点在していて一か所に集まることはしないのでショタコンビも町中をめぐる。
「ワシはガラン、竹細工職人じゃ。若い木こりが話をしておったよ」
老職人は大らかな笑顔で少年士官たちを出迎え、木こりの目撃談を教えてくれた。町の外にある竹林や里山でオーク兵がオノを抱えて歩き回っていたらしい。
「オークは気付かなかったのか? あの単細胞連中は敵を見るなり攻撃するだろう」
「竹を切ることばかりに夢中で気付かれなかったそうじゃ、ここ数カ月は無計画に切られた竹がそこら中で見られる」
ガランは険しい顔を見せる。無計画な伐採は資源枯渇を招くのだ。
「この町が授かる恵みを守るためにも頑張らないとね! アスカくん!」
さらに話を聞いてまわることで、アスカと翼はオーク部隊がいそうな場所に目星を付けることができた。そちらへ車を走らせる。聞き込み情報で奇妙な点は、敵があまりに少数であること。敵はいずれも単独で行動しているらしい、それが何を意味しているのか不明だが頭の片隅に留めて置いた。
「さて、ここからは歩きだ、竹林かつ里山で動きはかなり制限されるぞ」
車から降りる。ふたりは緊張感を高める。
「わりと竹が密生しているな、動きにも支障がでる」
竹林は狭いため拳銃とナイフだけで戦う。武器を構えつつ周囲を確認しつつ進む。この見通しの悪い竹林では耳で聞く音の方が重要だろう……だがそれで足下が疎かになってはいけない。
「ふみゅっ!」
翼がそんな声をあげる。足下の罠を見落とした翼は坂をゴロゴロと転がり落ちていく。そのままふもとで転がっていく。
「大丈夫か?」
ガシっと受け止めるアスカ、彼は大ジャンプで先回りしていた。
それを待ち伏せる影があった。オーク軍の兵士である。
「おお、そろそろ人間どもが動きだすと思ったんだ」
「脳筋のオークにしては小賢しい罠を仕掛けるんだな」
翼の手当てをしながらアスカが挑発する。
「この、竹林破壊作戦はオレサマだけの任務だからな、小細工もする」
「敵は実際には1匹だったのか」
その言葉が合図だったのかのように、翼は拳銃をオーク兵に発射、命中してひるむ。さらにアスカが敵に飛び込んでいきナイフでトドメを刺す。
――基地の司令室、アスカに対してダイオーガ将軍が語る。
「あの爺さんがタケノコを献上してきたんだ。あいつはカワイイ男子が好きだからな! お前らに魅了されたんだろう!」
(こいつ……オレたちを派遣させるためにわざと敵を多く見積もったな!)
なぜダイオーガ将軍は『敵は1匹』という判断をしなかったのか、それは情報の問題ではなく基地戦力の切り札であるショタコンビを出動させるためだったらしい。
「将軍閣下でさえ、自国領の駐屯地で無神経な徴発はしないのだな」
アスカのジト目。
アスカが司令官のややこしい謀略を悟った時、基地のキッチンで翼がエプロンを着て鼻歌を歌いながらタケノコを調理する。
「アスカくんは先端部分が好きだったよね~♪」




