第3話 ―カラスにやられた朝 名門コースのキャンプイン―
三月になった。
長かった冬の寒さからようやく解放され、今年もゴルフ仲間との「キャンプイン」の日がやってきた。
今日は、いつもの庶民的なコースではない。
少し背筋が伸びるような、名門コースでのラウンドだ。
初めて訪れるコース。
国道からゴルフ場へ入る道の両脇には、丁寧に刈り込まれた植木が続いている。
その整った景色を見ているだけで、「今日はいい一日になるぞ」と、自然と気持ちが高鳴ってくる。
受付を済ませ、クラブハウス前でスタートを待っていると、仲間たちが次々とやってきた。
「久しぶりやな」
「冬の間、練習してたか?」
そんな元気な声が飛び交う。
久しぶりのラウンドに、皆どこか嬉しそうだ。
ゴルフができること、それ自体を喜んでいるような空気がある。
そのとき突然、
「あーっ、やられた!」
仲間の叫び声が響いた。
スタート前に、思わぬ事件発生である。
見ると、持ってきていたポテトチップスの袋が荒らされている。
犯人はすぐに分かった。
カラスだ。
見上げると、生い茂る樹の上に黒い影。
カラスが枝にとまり、こちらを見下ろしている。
そして、
カア、カア。
まるで勝ち誇ったような声で鳴いた。
どうやら完全にしてやられたらしい。
仲間たちの笑い声が広がる。
「歓迎されたなあ」
「名門コースのイベントや」
スタート前の、ちょっとした歓迎行事のような出来事だった。
やがてスタートの時間が近づき、ティーグラウンドへ向かう。
第一ホールはパー5のロング。
名門コースの最初の一打だと思うと、いやが上にも緊張が高まる。
ポケットの中では、お供のボール「キラボーイ」がキラキラと光っている。
まるで、
「よし、今日は飛ぶぞ」
とでも言っているようだ。
空は見事な晴天。
見渡すコースには、まだ淡いながらも確かな春の気配が漂っている。
芝の色も、冬のくすみから少しずつ生命を取り戻し始めていた。
深く息を吸う。
カラスに歓迎されながら始まった、今年最初のラウンド。
どうやら今日は、
何か楽しい一日になりそうだ。




