第8話「決着、そして赤き髪への導き」
都市に戻ったシュウたちの次なる行動──それは、遺物を「売る」こと。そして、稼いだ金の使い道をイヴが明かすとき、物語はまた一歩“核心”へと近づく。
イヴが追う“とある人物”とは? そして、浮かび上がる謎の赤髪の影。
「世界が終わったあと、祈りが残った」第8話、開幕です。
第三ヤードの空に、火花が舞った。瓦礫の隙間から噴き上がった爆風は地を揺らし、男たちの足元を狂わせる。
「うおおっ!?」
レイジが身を低くして避け、シュウはイヴの方へと目を向けた。
イヴは淡々と告げる。
「次、いきます」
第二波。遺物の残骸が再び振動し、空気を切り裂くような高周波が辺りを包む。
「ぎゃあああっ!」 「耳が……耳がァ!」
遺物回収ギルドの男たちが叫び、混乱に陥る中、一人だけ冷静な視線を保っていた。
グラン=バルト。
爆音と振動の中心を睨み、彼は言葉を呟いた。
「これは……見せかけの攻撃だな。だが……あの端末、本物か?」
彼の視線の先には、シュウが握るスマートフォン──《神の遺物》。
やがて男たちは次々と戦意を失い、グラン=バルトは低く唸ると、背を向けた。
「引け。今は時期じゃねぇ」
撤退を始めるギルド一味。
その背中を見送りながら、イヴが呟く。
「……あの男だけ、怯まなかった」
その言葉に、シュウとレイジは互いに目を見交わす。
圧倒的なテクノロジーを目の前にしても、ひるまなかった男。その正体と背後にある何かを、彼らはまだ知らなかった。
***
セラントの陽が傾き始めた頃、一行は都市に戻ってきた。
イヴはホログラムを非表示にしている。
「敵を傷つけずに戦うには、かなりの演算資源を使用します」 「じゃあ……殺す気で戦えば?」 「一瞬でぺちゃんこにできます。消し炭にでも。どちらがいいですか?」
静かな口調に、シュウとレイジの背筋が凍る。
「冗談に聞こえねぇ……」 「……俺も、戦えるようにならなきゃな」
シュウの呟きに、イヴが小さくうなずいた。
***
街の片隅、奇妙な色のランタンに照らされた遺物専門の買取屋。
「《この世の理》って店名、なんだよそれ……」
突っ込むシュウに、レイジが苦笑する。
「この街で商売うまくやってる奴は、大体ヘンなやつなんだ」
店内には、壊れた通信端末、空飛ぶはずの羽根型装置、謎の液体を保存したカプセルなど、訳のわからない遺物が所狭しと並んでいた。
がっしりとした大柄な店主が現れる。
「ほう……これはいい。しかも稼働率100%の燃料チューブ……見たのは数年ぶりだ。これは大当たりだ」
言われるがまま、シュウたちは初めての収入を得る。
***
帰り道。
「で、何に使うんだよ、この金?」
シュウが尋ねると、イヴは即答する。
「情報を買います」
***
情報屋の店は、セラントの路地裏にひっそりと佇んでいた。
扉を開けると、空中に浮かぶ情報の断片、光の糸のような投影があちこちに走っていた。店主は黒い外套に身を包み、瞳にはスキャナのような虹色の模様が走っている。
イヴはホログラムを展開し、シュウの隣に立つ少女の姿を映し出す。
「この人物を探しています」
赤髪に丸眼鏡、ハンチング帽、そして筒状の弓──まるで現代のライフルのような武器を背負った少女。
情報屋は頷いた。
「ああ、こいつか。最近噂になってるよ。凄腕のイハンターって話だ」 「見たこともない武器で、あちこちに現れては遺物を漁ってるらしい。遺物の落下が盛んな場所にいけば会えるんじゃないか?」 「最近だと、風車の丘とか、逆さの塔ってところによく降ってきてるな」
シュウが言葉を挟む。
「なんでそんな情報を……」
イヴは、静かに口を開いた。
「──シュウ、あなたには妹がいます」
その言葉に、世界が一瞬、静まり返った気がした。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます!
今回はシュウたちが初めて都市で「遺物を売る」というステップに進み、いよいよ次の展開へと物語が動き出します。
そしてついに、"妹ナナ"の存在が明かされました。
少しずつですが、散りばめてきた伏線がつながり始めています。
次回はナナ視点から始まる第9話──彼女が何を見て、何を選んでいるのかをお楽しみに!
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