第6話「遺された都市とチートの予感」
シュウたちはついに《廃墟都市》セラントへ。
初めて目にする“外の世界”と、その矛盾に満ちた現実。
そして、イヴが導く“最初の稼ぎ”とは──?
《廃墟都市》セラントの街路を抜け、再び人通りの多い通りへと出る。マーケットと呼ばれる一帯には、金属片の看板や色とりどりの布が張られた屋台が軒を連ねていた。
遺物を売る露店もあれば、歯車を埋め込んだアクセサリーや、再利用された武器などが並んでいる。
食料品の屋台では、丸焼きになったネズミや大型のトカゲ、油で炒った昆虫まで揃っており、刺激的な匂いが鼻を突く。
「うえ、《廃墟都市》セラントの人間はこんなもんばっか食ってんのかよ」
シュウが顔をしかめると、レイジは笑いながら答えた。
「だから俺たちが獲ったものが高く売れるんだよ。そして弓や槍や農具の材料を買って、ノエル村を維持してるんだ」
「へー……そうだったのか」
その会話を交わしながら通りを抜ける途中、ふとシュウは路地裏に目を留めた。
物乞いの子供たちが、ボロを纏って肩を寄せ合っている。だがその奥、陽の差し込む石畳の広場では、数人の子どもが笑いながら鬼ごっこをしていた。
泥だらけで、腹を空かせているはずなのに──彼らの笑顔は、なぜかまぶしかった。
(……あとで、なんとかしてやれたらいいんだけどな)
そんな思いが、シュウの胸の奥に静かに残る。
宿に戻ると、イヴがすぐに音声で接続される。
「おかえりなさい。マーケットの情報は収集済みです。次の行動を提示します」
イヴの声はスピーカー越しに淡々としていたが、どこか得意げだった。
「……チートじゃねぇか」
「チートです」
「おい、肯定すんなよ!」
思わず突っ込んだシュウに、イヴはわずかに微笑を浮かべる。
「安心してください。あなたたちの“初めての稼ぎ”として、成功確率92%の案件を選定済みです」
「何すればいいんだよ?どこに行くんだ?」
「遺物回収所“第三ヤード”です。放棄された倉庫に、未解析の遺物が放置されています。競争率は高いですが、私がいれば──問題ありません」
「……よし、やってやろうじゃねぇか」
シュウとレイジは顔を見合わせた。
イヴが提示する“仕事”は、あまりにも現実離れしていた。
だが、空から降った奇跡を抱えた都市で──彼らの“最初の冒険”が、いま始まろうとしていた。
ここから舞台は大きく動きます!
セラントの雑多な空気や、貧しさの中にある小さな希望など、世界の奥行きを感じてもらえたら嬉しいです。
次回はいよいよ“第三ヤード”潜入──ご期待ください!