私闘
そして昼休みの屋上。
「今日はごめんね。でもありがとう!本当に助かったよ!兄貴は一回満点取ったくらいでって怖い顔しかしてくれなかったけど、僕が最低限戦える事は分かってくれたみたいだし、願いは叶ったも同然だ!」
二人分作った弁当を広げながら、シャロウは明るく感謝の言葉を述べた。
「相手が目立った優等生じゃなくて良かったな。噂になっていたら僕は卒業までずっと君の指輪になる所だった」
分けられた弁当をつまみながら、オリヒコは言った。
その時。
「ふーん?指輪ぁ?」
と、屋上に、一人の男子学生が入ってくる。
クレイグ・シュタインだった。
彼は、先ほどの実技テストで優等生と当たり、結果が振るわずにすっかり機嫌を損ねていた。
そんなクレイグが、ニヤニヤと笑いながらシャロウに詰め寄る。
「お前、性格診断野郎におんぶに抱っこで満点取ったのかぁ?ずいぶん良い"性格"してるなぁ?……その根性叩き直した方が良さそうだ」
「シャロウは素直な脳筋型だったが、それが叩き直すべき根性だというなら君は違うのか?」
と、オリヒコがクレイグの方へ進み出て問いかける。
「性格診断野郎は引っ込んでろ!」
「つれないな、クレイグ。君とはまだ話してみた事がなかったじゃないか。君の願いも聞かせてくれないか?」
「ああ?そんなもの、こいつの根性を今すぐ叩き直す事に決まってるだろうが!そしてお前が間に挟まる必要はねぇ。もう一度言う、引っ込んでろ!」
「確かにその願いは僕がいなくても叶うかもしれないが、ついでと思ってこの手を取ってはくれないか?良い感じの武器に変わるかもしれないぞ?」
と、オリヒコがクレイグへ手を差し出した。
「えええ!?なんでそっちにつくんだよオリヒコくん!?」
「たまに、一度袖を通した服は二度と着ない、って主義の奴がいるだろ?あれと同じさ、君とは一度手を組んだからな」
「薄情者め!」
叫びつつ、シャロウは杖を構え、クレイグからの攻撃に備えた。
「ふん、まあ良いだろう、根性の違いってやつを具現化させてやる」
と、クレイグはオリヒコの手を取った。
そうして、オリヒコが変身したのは、長い鎖に繋がれたモーニングスターだった。
少し大きめの棘付き玉はスパイクというよりウニに似た棘がびっしりと付いたクラシックなもので、当たれば流血は免れないだろう。
「保健室で天井仰ぐ覚悟は出来たかオラァ!蜂の巣になりやがれ!」
クレイグが棘付き玉を振り回して放り上げ、シャロウへ向けて振り下ろす。
「"石よ、伸びろ"!」
棘付き玉の一部の棘が長く伸び、地面に刺さり、後ろに飛び退いたシャロウにぶつかる前に空中に留められた。
「僕の魔法は鉱物を操る魔法だ、金属の武器もそうだけど石に囲まれたこの場所じゃ相性が悪いんじゃないかな?」
威嚇するようにシャロウは言った。
その場の全ての鉱物が操れたら、シャロウはクレイグにいじめられてなどいない。
操れるのは視界にあるものや触れたものなど、ほんの一部だけだった。
そして、シャロウは、棘付き玉に意識を集中させた。
「生意気な……!」
「"石よ、縮め"!」
地面に刺さっていた棘が縮んで抜け、鎖が勢いよく縮み、棘付き玉がクレイグの方へ一直線に向かっていく。
「馬鹿なっ!?」
ゴッ!
棘が縮みきってただの木の玉同然となった棘付き玉が頭部に勢いよく直撃し、クレイグは昏倒した。
「……保健室に連れて行かなきゃ」
「勝てたじゃないか」
変身を解いたオリヒコがあっけらかんと言う。
「君はしばらく僕に話しかけないでくれ」
「うーん手厳しい」