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・入社・  ・研修・  <龍崎 俊弥>


・入社・

4月1日 新品の黒いスーツに身を包み僕は今日入社する大手釣りメーカー株式会社TYURAのエントランスを通りぬけた。


「皆さん入社おめでとう!!これからは社会人になるので節度をもって行動を、、、と言いたいとこだけどそんな事わかってるよね~社長っぽい事言ってみたかったんだけどやっぱ無理でしたー!」

・・・シーン・・・ 30名ほど新入社員のいる入社式の会場は静まり返る。

それもそのはずだ、緊張感が漂うこの会場でギャグか何かもわからない発言をしているこの人が社長だからだ。

「盛大に滑ったところで、皆さんそれぞれ入社前にお渡ししている資料を参考に配属された部署に向かってくださーい。これからよろしくお願いしますね~」

少し残念そうな社長を横目に緊張しながらも配属の部署へ向かう。


「本日から販売部に配属になりました!龍崎俊弥と申します!ご迷惑をお掛けすると思いますがご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い致します!」

ぶるぶると緊張で体を震わせながら深く頭を下げると先輩社員方々に温かい歓迎の拍手で迎えられた。

「俊弥くん配属おめでとう。今日から宜しくね。」

今日からお世話になる鈴木部長。第一印象は温厚で笑顔が素敵でとっても優しそうな方だ。

「はい!ありがとうございます!よろしくお願いします!」

「入社式で比嘉社長変人だと思ったでしょ~?」

ニッコリと笑みを浮かべ何かを試すように聞いてくる

「いえ、変人までは思っていないです。変わった方だなとは思いましたが、、、。」

本心は流石に言えない。

「あっはは!それほぼ変人じゃーん、僕も最初はこの会社の社長大丈夫?と思ったよ~

 でもね深く関わっていくうちにきっと良さが分かってくるから~。」

、、、優しそうな鈴木部長がそう言うなら信じるしかない。

「じゃ俊弥くん達は・皆・でここのデスクをつかってね~」

部長さんに言われ案内されたデスクは新品同様の五つのデスクが向かい合っていた。

皆とは入社前に渡された資料には同じ販売部に配属の同期が僕の他に三人いる。これから仕事を共にする上で仲良くするに越したことはない。同期の方とも始めましてなので少し緊張をしていると

「あのー、、、」

隣から綺麗な女性の声。

「は!?はい!!」

ビックリしたせいか、声が大きくなる。

「同期の安室夏生です。これからよろしくお願いします。」

声同様に容姿もとても綺麗な黒い髪が腰まで掛かりそうな美しい女性だ。

「・・・龍崎俊弥です。こちらこそよろしくお願いしま、、、」

緊張交じりに挨拶を済ませようとすると向かいのデスクから声が割って入ってきた。

「はいはーい!俺は工藤涼介でーす!!みんなよろしくねーん!」

、、、初対面にしてはやかまし声量だが悪いやつではなさそうだ。

続くようにして涼介のとなりから言葉が飛んでくる。

「あ、葉月菊です、。よ、よろしくお願いします。」

僕以上にに緊張してそうな彼女は同期の挨拶でも声がこわばっていた。

「じゃ、じゃこれから同期4人で頑張っていこうね。」

僕がそう言うと一つ気になることがある。一つデスクが空いている、、、

でも同期はここにいる4人だ。デスクが五つあるので一つ余る。空いたデスクを眺めていると後ろから声が掛かる。

「あ、言い忘れていた、半年後にもう一人同期がくるからそこのデスクは空けててね。」

鈴木部長がそう皆に伝えると。涼介が質問をする。

「へー、そんな事もあるんですね!なんで半年後何ですか?」

事情があるのかもしれない。普通なら一緒に入社しきをして。既に顔を合わせているはずだからだ。体調不良で来てないのかと考えるのが妥当だ。

「あ~それわね~」

鈴木部長が明らかに悩んだ顔をしながら口を開く。

「本人の体調の都合でね~でも個別の入社前説明会で一回会ったけど、とっても元気のある子だったから皆とすぐに上手くやってけそうだよ~」

ここ「TYURA」は社訓を「「仕事より周りを助け合う」」と掲げている。社長が少し、、、いやすごく変わっている会社だ。だから本人の体調不良ならなおさら気を利かせお休みさせるのは何となく理解できた。

「そーなんですね!半年後が楽しみです!!」

涼介がそう言うと皆も納得の表情だった。


貰った資料をまとめてデスクを整理していると

「今日から約一か月研修があります。とりあえず今日は部署内の仕事内容とか色々大まかに説明するね。」

鈴木部長がそう言うと僕たち新入社員4人を連れて部署内の案内が始まった。

そして社用パソコンの操作方法や個人の書類の保存方法、会社の経費の使い方などの説明が約2時間程あった。

「ま~大体こんな感じかな、何か分からない事あるかい?」

大まかな説明も終盤にさしかかったらしく鈴木部長から質問があったが何かを思い出したように

「あ!そうだ研修の期間は二人一組で仕事をこなしてね。」 

その言葉を聞いたとき何となくだが夏生さんと一緒が良いなと思った。

もちろん、涼介くんと菊さんが嫌とかではない。

ただ本当に何となく、、、別にタイプとかではなく、、、。

「んー出来れば異性と組んでほしんだけど、、どうかな?」

鈴木部長、、、ありがとうございます。これで確率は三分の一から二分の一になった。

「そーだ!丁度デスク隣同士男女別々だし俊弥くん、夏生さんペアと涼介くん菊さんペアでどうかな?」

新入社員全員で「はい!」と答えた。

鈴木部長、、、神様?

入社初日からラッキーで幸せな気持ちに包まれ、、、、何度も言うが別にタイプとかではけしてない!

「では明日から本格的に研修に入るので宜しくね~僕は今から別室で会議なので皆今日はお疲れ様~」

そう言うと部長様はオフィスを後にした。

「夏生さん明日から研修ペア宜しくね!」

嬉しい気持ちを抑えながら明日から約一か月研修をペアとして共にする夏生さんに一言かけた。

「うん、こちらこそ宜しくね。」

これから約一か月楽しくなりそうだ。


・研修・

「ピピピピ! ピピピピ!」

入社して二日目の朝。7時にセットしたアラームが部屋に響き渡る。昨晩夏生さんと共に研修をすることを考えていると、なぜだか高校時代の事を思い出しあまり眠れなかった。


眠たい目を擦りながらもマグカップにコーヒーを注ぐ。やはり朝は苦手だ。急ぎ足で支度を済ませ会社に向かう。徒歩10分程で最寄り駅に着き、慣れない満員電車に肩を揺らすこと約15分、さらに駅から徒歩約10分の場所に株式会社TYURAがある。遠くはないが近くもない。会社の入り口まで行くと

「俊弥~おはようでやんすうぅ~」

この声は、あの初日からやかましかった涼介だ。

「涼介おはよう~、朝から元気だなぁ~、俺にもわけてほしよ。」

苦笑いまじりにそう言うと

「そーかー?じゃあおすそ分けな! うぉ~~!!」

両手を突き出し目には見えないパワー的なものを送ってくれた、、、やっぱり悪いやつではなさそうだ。むしろ人思いの良いやつ。

そんな姿を横目に

「お、おはようございます。な、何しているんですか?」

まだ二日目だからか菊さんはまだ緊張しているような感じだ。

「いやこれはですね、、、涼介!もう十分もらえたから、ありがとう!だから腕おろしてくれ~!!」

、、、普通に恥ずかしい、涼介はともかく僕まで変人扱いされるのはご勘弁だ。

事情を説明すると納得したような表情で

「あ、菊もパワーを送れるように特訓しますね!涼介先生ご指導の程宜しくお願いします!」

「うむうむ、簡単な道のりではないぞ菊ちゃん!しっかりついてこいよ~!」

菊さんって天然なのかノリが良いのか、、、面白い子だ。


<龍崎 俊弥>

研修二日目、今日から本格的な夏生さんとの業務が始まる。

「夏生さん、おはよう。今日から改めて宜しくね。」

「俊弥くん、おはようございます。こちらこそよろしくお願いしますね。」

やはり昨日のあの感覚は間違いではなく、夏生さんは今日も素敵だ。

「二人ともおはよう~、何か分からない事あったら何でも聞いてね~ あ、今日の業務なんだけど、主には販売業務を一通りこなっして、、、俊弥くん聞いてる?」

鈴木部長に名前を呼んでもらうまで僕は夏生さんに見入ってしまっていた。クールな見た目からは想像つかない綺麗な声、腰まで掛かるであろう長髪はしっかりと手入れされツヤのある綺麗な髪、、、あ!

「は!?はい!!もちろん聞いてますよ!!」

「そっかそっか、勘違いだったごめんね。 で今日はね~、、、」

やっべぇ~~~ぇ~~~!!!!! ちょっと見すぎたかな?? 夏生さんに変に思われてないかな?気づかれてたら絶対キモイって思われる!!! どしよう~~泣

「今日はこんな感じで進めていくからね~、二人とも宜しくね~」

マズイ、、、全然聞いてなかった、、、。 落ち着くんだ、一度落ち着こう、、、。

「俊弥くん?、、、」

あ~~~!夏生さん言わないで!!これ以上何も言わないでくれ~~!!嫌いにならないでくれ~~~!!!

「ど、どうかした?」

「顔色、悪いですよ?具合悪い?大丈夫?」

「だ、大丈夫だよ!それより鈴木部長何て言ってたっけ?」

、、、気づかれてはないかな?多分。

「そう?無理は良くないから、具合悪くなったらすぐ報告してね。 今日の主な業務は、、」

夏生さんがまるで聖母夏生に見えてきたのは僕だけだろうか。なんだか心配かけたこと自体い申し訳なくなってきた。


仕事だから、もう社会人だからしっかり切り替えているつもりだったけど、なんだかひさしぶりなこの感覚。もう忘れていたと思っていた感覚が僕の胸を締め付ける。昨晩思い出していた高校時代の切ない恋の記憶が僕を制限する。過去に捕らわれていては前に進めないと分かっているつもりでも淡い初恋の事を少し思い出してしまう。それでも僕は前に進みたい。



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