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(8) ロイクス、露呈する

今夜は全員が僕の借家に集まっている。

話題は今日のクエストで出会した大量のパープルセンチピードの大群についてだ。


「信じらんない!何あれ、もー」と怒るラディ。

「駐屯地から猿岩までずっとあの状態だとしたら脅威だね」

「魔王の棲家付近には大量のキラービーがいるというじゃないですか。やつらが現れなかっただけ、まだ救われたのかもしれない」

レスターの意見にも一理ある。


キラービーという魔物は昔から存在していた。

それは火魔法で焼き払えば何とかなるくらいの存在だった。

しかし、魔王の棲家付近にいるというキラービーは桁違いに凶悪になっている。

火魔法で焼き払おうとすれば「火だるま」になりながらも術者に向かって襲いかかる。捨て身の特攻隊だ。

弱点とされていた火属性の耐性が格段に高くなっているのでなかなか死なない。

しかも人間の魔法詠唱や、存在的な魔力にまで反応するようになっていると見られている。

自分たちに攻撃を仕掛けた魔法使いを真っ先に襲い、その近くで魔法を使おうとする者、魔力を持っている者、の順に襲いかかるようだ。

早い話が、その場にいる全員がターゲットになるのだ。

魔王の棲家付近には、そんな奴らが数百万匹は生息していると推測されている。


しかも以上の話は、魔王の近くまで行って、生きて帰って来た、数少ない生還者の証言から作り上げた推測に過ぎない。


キラービーに比べたら今回のパープルセンチピードなんてかわいいものだ。


「にしても、過去の文献から魔王の棲家周辺で虫系魔物が大量発生という話は知らないなぁ…」

「百年近く封印されてる間に次の作戦を立ててるとか」

「うわー、ヤダー!」


「夕食完成」

ゴウヤの合図に全員が配膳を手伝う。

僕は料理を運びながらゴウヤに聞いてみた。

「今の話、ゴウヤはどう思う?」

「もしかしたらキラービーの数が飽和して、ムカデの方に魔瘴が回ってるのかも」

「ありえるな」レスターは頷く。

「蜂の群れは1匹の女王蜂が中心だから」



食事を終え、僕は庭に出てみた。

正直に言ってカイルのことが気になって仕方ないのだ。


当たり前ではあるが、そこには誰もいないのだが。



翌日、ギルドから招集がかかった。

実は昨晩食事しながら、今日のギルドは不参拝にしようと話し合っていた。どうせ頼まれることは目に見えているのだから。

2日続けてムカデ狩りはしたくない。


ところがこちらの作戦は完全に見抜かれていたようだ。


ギルド職員が、早朝に玄関まで迎えに来ていたのだ。

全員が捕獲されてしまった。


渋々ギルドに行くと、ギルドマスターがしたり顔でニヤついていた。ムカつく。


ムカつくで連想するのが、あいつらだ。

「ネルソンたちが来ていないようですけど?」

「あいつらは全員毒にやられて病院だ」

「それはご愁傷様さまでした。謹んでお悔やみを…」

いかん、顔がニヤけてしまうのが分かる。


「これから臨時のパーティの組み分けをする。お前たちには、あとで安全な狩り方の見本を示してもらいたい」


と、アンケート用紙みたいなものが配られた。

得意魔法の調査のようだ。



アンケート結果により臨時の討伐班が振り分けられ、1班から3班は昨日の駐屯地から東に移動、4班5班は猿岩から左右に分かれて討伐を行う。

最後に全員の前で昨日の狩り方を実演して出発だ。


僕は5班に入れられ、猿岩側に向かう。

移動には、物理移動型空間移動ゲートを使う。

ややこしいが、普段は固定して二点間を行き来するゲートを馬車に設置して、あらかじめ現地に置いて使うわけだ。


僕の入ったパーティはこんな感じの構成になっている。


ウェイン(C/魔/36♂)

オリバー(D/魔/24♂)

ブリジット(D/支魔/22♀)

ダッジ(E/前魔/18♂)

ロイクス(D/魔前支/19♂)


今回の討伐対象は魔法攻撃が有効なので、魔法職が優先的に集められたようだ。



「みなさん、はじめまして。本日はよろしくお願いします」

最年長のウェインさんにさっそくツッコまれた。

「ロイクス君は、魔法、前衛、支援、全部できるの?」

「はぁ、うちは僕抜きでも全部揃ってますので、誰か抜けた時に代理でやってるだけです」

「噂で聞いてたけど、本当なんだねぇ」

「噂って、器用貧乏ってやつですか?」

「わはは、いやいや…」



ゲートを通り抜けると、遠くに猿岩が見える。

「僕たちはあそこから右ですね。パープルセンチピードは高さがないから草むらの中で見つけにくいです。木によじ登っているのもいるので注意してください」


僕は毒対策に風を起こし、単体攻撃火魔法で仕留めていく単調作業だ。

近付き過ぎると危険、草むらの中だと見つけにくいで、地味な作業が続く。オリバーさんが飽きてきたのか、

「こういう時は探知魔法が欲しくなるねぇ」

僕に聞こえる様にグチってきた。

「魔物の数が多すぎて視界が探知反応だらけになり、動きながら狩ると探知魔法酔い起こすらしいですよ。サラが嘆いていました」

「それも良し悪しか…」


「こいつらの死体、本当に放置しても大丈夫なのか?」

「ギルドマスターによると、難民キャンプの人たちが魔石を取らせてくれって言ってきたみたいです」

「難民さんも大変みたいだなぁ。いくらくらいになるのかな?」

「2,3匹で銀貨1枚ほどかと」「あと、こいつらの皮?甲殻?、も軽いわりに弾性あって丈夫だから初心者装備にいいらしいですよ」

「へぇ…。食べたりは、しないよね?」

「それは聞いたことないですね」


緊張感のない無駄話をしながら、単調な狩りを続ける。


昼頃になると、昼飯のデリバリー馬車がやってきたので休憩に入る。

馬車にはギルドマスターが乗っていた。

ここが最後の配達だから、一緒に食事をするつもりらしい。


「進捗はどんな感じですか?」

「うーん、、山の方からどんどん降りてきてるみたいだから…」

「やっぱりですか」

「終わりが見えない」



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