(7) ロイクス、調査する
今回の依頼は、移動にギルドと駐屯地を結ぶ特別な空間移動ゲートを使わせてもらう。
空間移動ゲートは、ギルドと他の主要地点など、二つの地点を瞬時に移動できる魔道具の様な存在だ。
主に、公の業務や有事の際に使うために設置されている。
普段なら冒険者が受ける依頼くらいでは使えないのだが、今回はギルドマスターからの公的な依頼という名目がある。
これらの魔道具的なゲートの力を借りず魔法だけで空間移動できてしまう者もいる。
うちのメンバーだとサラが使うことができる。今後パーティ入りするかもしれないカイルも同様に使える。
魔法の中でも習得難易度はかなり高い部類だ。
一つのパーティに1人スキル持ちがいることすら珍しいのに2人もいたら、またやっ噛まれるかもしれないなと思う。
サラによると、空間移動魔法はそこそこの負担がかかるらしいので普段はあまり使わない。
ちなみに魔道具的ゲートの起動だけなら難易度は下がり、ある程度の無属性魔法が使えればできる者も多い。
そんなわけで、今回僕たちのパーティは労せずとも一瞬で北側の駐屯地に移動ができた。
ギルドマスターからのミッション、その1。
「直近2週間の魔物出現状況の調査」
これは駐屯地の日報を書き写すだけで完了。
民間人(冒険者)が軍の仕事を監査するようなもので、快く思われないのは当たり前だが、ギルドの存在も公的機関の一部なのでギルド側の調査権は認められている。
日報によると、昨日のリザードドラゴンも東の山からレーゼ方向に飛んでいくのが目撃されていた記載がある。
問題はレーゼ側に報告がされていたか、であるが、冒険者では捜査権がないので、報告者のコードを書き写すのみ。
あとはギルドから国軍へ確認してもらうしかない。
ギルドマスターからのミッション、その2。
「エリア付近での目撃調査」
実際に周辺を歩いて、当日の魔物の出現状況などを報告。
駐屯地でも周辺調査は毎日の日課に組み込まれているが、軍よりは広範囲に調査する。
まずは領境壁の西側エリアから調査を開始した。
西側エリアには北から逃げてきた難民のキャンプがある。
人数だけで言えば、一般的な町の7〜8倍くらいかもしれない。
このエリアの魔物出現率は高いはずなのだが、その魔物が難民キャンプの食料や資金源にもなっているため、魔物を探してもあまりいない。
難民たちによって狩られているのだ。
中央エリアでもほとんど魔物との遭遇はなかった。
時間的にここで昼食をとることにした。
いつも料理はゴウヤに任せている。料理の腕は良いし、とにかく本人がやりたがっている。
次は東エリアだ。
東側と言っても、レッド・ディアマンテの連中が向かったと思われる猿岩付近はかなり遠いし、そこまで行くつもりもない。かち合う事はないだろうと思われていた。
しかし、猿岩近辺の討伐依頼があった魔物であるパープルセンチピードがここにも大量に湧いていた。
「ここでネルソンに会うとは…」サラが嫌そうに言う。
ネルソンとはレッド・ディアマンテのリーダーの名前だ。
もちろん、この場所にはいない。(はずだ)
僕たちパーティは、一箇所に固まり、レスターの風魔法で中から外側へ渦巻き状に周囲に軽く風を発生させてもらう。パープルセンチピードの毒噴霧を風に乗せて外へ流すようにするためだ。
僕たちは威力に差はあるにしろ全員が魔法を使えるので、毒にさえ注意すれば楽勝な相手ではある。
サラが探知魔法で魔物密度の高い場所を「ラディ、そこ」と単発魔法で教え、そこへラディが範囲形大魔法をぶち込む。僕とゴウヤとエリンは肉眼で捉えたやつを片っ端から単発魔法で倒していく。
火魔法、雷魔法がよく効くが、冬が近い枯れ草だらけの草原だと、ときどき火が着いてしまうのも厄介。
レスターが「これはキリがないですね」と言う。
「ネルソンたちが向かった猿岩からここまで断続的に発生してるとすると、とんでもない数ですよ」
「これは駐屯地に報告した方がいいな」
「僕が行ってくる、サラ、ゲートを開いてくれないか」
「オーケー」
「みんな適当に撤退しててくれ。これはどっちにしろギルドに依頼が来そうだ」
そう言うと僕はゲートを通過、駐屯地本部に駆け込み、大量発生の報告をした。
国軍の調査員と現場に戻ると、魔法による信号弾が打ち上げられた。
「あそこみたいです」
調査員と向かうと、倒して回収したパープルセンチピードが山積みされていた。これだけで400匹はいそうである。
調査員は「うへぇー」と悲壮感漂う溜息を漏らした。
「まだいるんですか?」
「終わりは見えないわね」サラが答える。
「確認しますか?」と尋ねると、「いや、いいです」
本部に戻って報告するという。馬に跨って帰って行った。
ここから北側には山が連なる。
「山から降りて来たんでしょうかね」レスターがつぶやく。
「猿岩の所にもいるとすればおそらくそうだろうね」
ちなみに猿岩と呼ばれているものは、もともと落ちていた巨石に誰かが土魔法で彫刻を施したものと言われていて、今ではランドマークになっている。
「このムカデの山、どうする?」
「土壁で囲っておくか」土魔法で土の壁を作り周りを囲った。この辺までは軍の管轄エリア内なので軍に後処理は任せることにした。
僕たちは一度駐屯地に戻って、ムカデの死体は土壁で囲い、そのままにしてあることを話し、レーゼの冒険者ギルドに戻って報告すると伝えた。
ギルドマスターに報告すると、頭を抱えてしまった。
間違いなく、このギルドに討伐依頼が来るはずだ。
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