「命だけは助けてやるんじゃなかったの?」
ごめんなさい、ポケモンやってて遅れました。
追加DLCめっちゃ良かった。早く後編やりたい
「確かに凄かったな」
ゆうきはそう言うと証から天秤を受け取り、魔女帽子の中に入れる。
「それと、ありがとう」
「どういたしまして」
証はにっこりと笑ってゆうきのお礼を受け取った。
「では、少し遅くなりましたが」
証は、こほんと咳払いをする。
「これにてひいらぎ様の依頼完了とさせていただきます。またの利用の際も気兼ねなくご依頼ください」
証は、そう言って胸に手を当てて頭を下げた。
ゆうきだけでなく、今まで取られた記憶全てを取り返した証。ひいらぎの依頼以上のことをやってのけた。
ゆうきは、感心しつつも先程流された疑問を再び口にした。
「………ところで、いつから、私の名前が平仮名だって分かったんだ?」
「城塚さんの話を聞いた時からというと言いすぎだけど、あれが切っ掛けかな」
にべもなくそう答える証にゆうきは目を丸くした。
「先輩言ってたよね。自分の戸籍を取ったが、自分の名前は平仮名だったって」
「あ、ああ。妖怪の影響は記憶だけでなく戸籍などにまで及んでいたからな」
「も一つ思い出して」
証はそう言うと、指を一つ立てる。
「拓矢先輩の叔父さんの記憶を取り戻そうとして二人が写った結婚写真を見せたっていったじゃん」
「ああ。言っていたな」
証の説明の意図が分からず、ゆうきは首を傾げる。
「んで、も一つ。拓矢先輩の叔父さんの戸籍、配偶者の名前があったよね?」
「ああ、確かに」
「先輩の言う通り、記憶以外にも影響が及ぶなら、拓矢先輩の叔父さん、城塚さんのお嫁さんが結婚写真に写っていないし、戸籍にも名前があるはずないんだよ」
「……………あ!」
証の説明にゆうきはようやく意味を理解したようだ。
「そう、普通の写真ならともかく結婚写真にお嫁さんが写っていて、更に城塚さんの戸籍に配偶者が載っている以上、先輩の戸籍は、この妖怪のせいで平仮名になったんじゃなくて、最初から平仮名だったんだよ」
そう言いながらうなだれている妖怪に一瞥をくれると再びゆうきに目を向ける。
「先輩がどれだけ辛酸を舐めたか知らないけど、この妖怪のことを先輩は、過大評価しすぎだったってことさ」
本当はもう少し早くゆうきに伝えるつもりだったが、落ち込んでいたり、依頼を取り下げようとしたりと絶妙にタイミングを逃し続けていた。
そして、その逃し続けていたタイミングの最中に天秤の存在を知った。
それを知った時から、切り札として隠し持っていた。万が一、今回のようにゆうきの記憶を読まれた時、自分が答えを知っている事をこの妖怪に知られないようにするために。
証の説明に妖怪が口を挟む。
「待て、お前、確かにこの人間に使われた字を知らないと言っていたじゃろ!!」
「そんなの嘘に決まってんじゃん。おまえ、何聞いてたの?」
馬鹿にするように言う証に妖怪だけでなく、ゆうき達も思わず一瞬、声を失った。
「ちょっと待て、だったら、嘘をついた上で取引に挑んだんだろ?なら、お前にも取引の条件が適用されるはずだ」
「されない。理由は二つ。一つは、お前がそれを条件に設定しなかった」
あくまで証が指定した条件は、妖怪が不正やイカサマを働いた場合のみ。
ここに『証が』行なった場合という条件は付けていない。
指を一つ出して説明し、更にもう一本指を立てる。
「もう一つ、そもそもあの時僕は天秤を起動させていなかった」
「……………は?」
妖怪の口からマヌケな声が出た。そう、証が天秤を起動させたのはあの発言の後なのだ。
「お前は、天秤の発動条件を知らなかったもんね。だから、勘違いしたんでしょ?」
「そうだよな………吾輩の見立てでは、そもそも証の記憶とゆうきの記憶で吊り合いは、取れていた」
だが、証は、天秤を起動させなかったため、天秤が水平になる事はなかったのだ。
「おや?ひいらぎ様気づいていたんですか?」
「上手く選択肢を潰しているな、と思っていた」
ひいらぎはそう言いつつ証に更に尋ねる。
「それとお前、この妖怪を誘導しただろ?」
「は?ゆ、誘導?」
突然出てきた訳の分からない言葉に妖怪は、戸惑いの声を上げる。
分かっていない妖怪にひいらぎが一つ質問をする。
「逆に聞くが、妖怪。お前はなんで、あんな条件を出したんだ?」
「何でって、半妖が人間の名前に使われた漢字を知らないと言っていたから」
「違う。あの場で条件の種類の指定はなかった。だから、お前はもっと別の証が答えられない質問をすべきだったんだ」
未だに理解できていない妖怪にひいらぎは告げる。
「例えば、自分が生まれた時に一番最初に見たものは何かとかなら、当然証は知らない。それが条件になれば間違いなく証は答えられなかった」
ひいらぎの説明に妖怪は息をのむ。
「そういうことを防ぐために僕が今回やらなくちゃいけなかったことは二つ。一つ『ゆうき』に使われた漢字を当てる事という条件にすること。そしてもう一つそれをお前自身に提案させること」
証は、自身の胸に手を置き続ける。
「その為に僕は、まず天秤の特性を偽ってお前から条件をつけることを提案させた」
条件は釣り合っているのに起動させてないせいで条件が釣り合っていないように見せたのだ。
「自分から条件を付けたせいで、お前は主導権が自分にあると思うようになった」
実際表面上は、妖怪に主導権があった。だからこそ、証のペナルティの条件が通ったのだ。
しかし、それだけではまだ不足だ。
「僕の誘導に引っ掛かり、主導権があるお前に僕は、『ゆうきの名前に込められた意味を当てろ』という条件は付けるなと先に念を押した。実はこの条件、『名前に込められた意味を当てろという条件』を付けさせないことより、もっと別の目的があった」
「別の…………目的?」
「お前が出す条件を『ゆうきの名前に関すること』に誘導すること」
証は妖怪を真っすぐ指さす。
「お前が考えをまとめるより先に僕が条件を出したせいで案の定、お前の選択肢が魔女先輩の名前に関するものに狭められてしまった」
悩んでいる妖怪に証は、牽制しているように見せかけ実は誘導していたのだ。
「でも、後一押しが欲しい。お前からあの条件を引き出すための決めの一押しが、そう思った僕は最後の一手を打った」
「ま、まさか!」
この後、証がとった行動は一つだ。
────お前のせいで先輩は自分の名前に使われた字すら分からないんだぞ!!─────
そう妖怪の挑発にまんまと乗り叫んだ、アレだ。
「気付いた?そう挑発に乗ったのはワザと。こうすれば、絶対にお前は、それを条件にすると思っていた。何せ、人が絶望する顔が三度の飯より大好きな畜生なんだ。乗らないわけがないもんね」
必死な形相ではあったがその実、証は妖怪を掌の上でずっとコントロールしていたのだ。証の巧みな手腕に感心しつつも一つ、ゆうきには疑問が浮かび上がった。
「つまり、証は、妖怪からこの条件出された時、すでに勝ちを確信していたわけだろ?なのになんで、あんな切羽詰まった様子だったんだ?もしかして、演技だったのか?」
「正直に言うと、演技しなくちゃいけないと思ってたんだけど」
証は何とも言えない表情で続ける。
「勝ち筋が見えた瞬間から、本当に心臓が飛び出るほど緊張してたんだよ」
「勝ってるのにそんなことになるのか?なんで?」
「んなの、僕が知りたいぐらいだよ!!」
証の返答にゆうきも首を傾げて考え込む。
「ま。証の不思議現象は置いておいて、おい、畜生。何か言うことはあるか?」
ひいらぎは、妖怪に向けて冷たく言い放った。
「ああ。あるぜ。たった一言、だけな」
妖怪は、顔をあげると同時に飛び掛かった。
「殺す」
証はゆうきの前に出て右手を鱗で覆い妖怪の一撃を防いだ。
「命だけは助けてやるんじゃなかったの?」
「ワシの大切なものを奪っておいてよくそんなことを言えるな」
「元々、おまえのじゃないだろ!」
証は、妖怪を殴りつけながらそう言った、
妖怪は、証の拳を後ろに下がってかわすと同時にゆうき達と距離を取った。
一呼吸開いた瞬間にゆうきは、証に手を出す。
「証。スマホはあるか?陰陽師を呼びたい」
「先輩助けるのにフルスピード出したから落とした。そういう先輩は?」
「その妖怪にぶっ壊された」
ゆうきはそう答えると証に向かって出した手をしまい、代わりに帽子から札を取り出す。
「私が時間を稼ぐから近所の交番で助け呼んで来い」
「そんな状態で一体何分時間稼げるつもりでいるの?」
そう言われると弱い。ゆうきは唇をかみしめた。
「もう少し現実的な話をしない?」
証は、そういうと自身にある竜の力を強める。
「例えば、この妖怪をここで倒しちゃうとか?」
証の提案にゆうきは、目を丸くする。
「ちょっと待て!!証がさっき言ったんだぞ、半妖は妖怪より弱いって」
「そうだね。でもさ、先輩がいれば事情は違うんだよ」
この続きの言葉を言えば、恐らく記憶を取り戻してもらった恩義を差しい引いても有り余る怒りをぶつけられるだろう。
それでも、証は覚悟を決めて続きを口にした。
「先輩の身体強化の術。あれを僕にかけてよ」
次の瞬間、ゆうきの顔から表情が消えた。
後は、アルセウスクリアして………




