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魔女っていうな!  作者: 舳里 鶏
第一章 ハンバーグ
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「僕だってそれなりに繊細だけどね」

 翌日。証は、昼食をゆうきと一緒に取ろうと思い、教室に向かった。

 「ああ。ゆうきなら、今日は休みだぞ」

 「え?」

 しかし、たどり着いた教室に目当てのゆうきはおらず、代わりに拓矢が不在を伝えた。

 「魔女先輩、どうしたの?」

 「体調不良だって」

 拓矢は、そう答えつつ証に目を向ける。

 「………やっぱ、昨日のことだよな」

 流石にあれだけ露骨な態度をしていれば誰だって気付く。 

 「でも、それは、大丈夫だって言ってたじゃん」

 「そりゃ、そういうだろ。あの場で大丈夫じゃないなんて言えるのお前ぐらいだ」

 「僕だってそれなりに繊細だけどね」

 不満そうな証を他所に拓矢は証にゆうきの家の地図情報を送る。

 「こんなもの送って僕にどうしろと?」

 「俺の代わりにゆうきの見舞いに行ってきてくれよ。んで、ついでに昨日のことで落ち込んでるのか聞いて来てくれ。俺が相手じゃ、絶対本当のこと言わねーからな」

 「いいよ。ま、僕が行っても本当のこと言うかどうか怪しいけどね」

 証は、そう言いながら場所を確認する。自分のうちからそれほど離れていなさそうだ。

 「わりいな」

 「いいよ。休んだって聞いた時点で僕も先輩のうちに行こうと思ってたから……」

 そう言いつつ証はゆうきとの会話を思い出す。

 (確か、先輩の祖父母ってそろって陰陽師とかいってたよね………昼間いないんじゃない、もしかして)

 それより気になるのは地図情報と一緒に送られた「デカイ」の文字。

 「………なにこれ」

 「言ってみれば分かる」



◇◇◇◇◇




 「……………でか」

 学校を早退した証は、拓矢からもらった情報を頼りにゆうきの家に辿り着いた。

 そんな証の前には、その辺の家なら三つは建ちそうな敷地に居を構える日本家屋。

 おまけにその家自体も相当デカイ。確かにこれ以上の表現はない。

 迫力に飲まれながら証は、取り合えず、カメラ付きのインターホンを鳴らした。

 『………はい………って、証か。どうしたんだ?』

 ゆうきの声がスピーカーから聞こえる。

 「どうしたって、お見舞いだよ………ほら、開けて」

 そこでゆうきからの応答が途絶え、しばらくして門を開けに現れた。

 いつもの濡れたような長髪ではなく、ぼさぼさの髪だ。顔つきもどこかぼーっとしており、どこを見ているかよくわからない。ただし、一応いつものように魔女帽子を被り傍にはひいらぎが浮いていた。

 ゆうきは、目をぱちくりさせた後、証を居間に通す。

 「で、お見舞いってどういうことだ?それにまだ授業中じゃないのか?」

 証は、手に持った袋を見せる。袋の中には消化のよさそうなゼリーなどが入っている。

 「おじいさん達がいないときに体調不良っていうから………」

 「え?そんなことのために学校早退したのか?」

 目を丸くするゆうきに証は不思議そうに首を傾げる。

 「………お前のこと心配してきてくれた奴にはもう少し言うべきことがあるだろ」

 「さっすが、ひいらぎ様!!もっと言ってやって」

 ゆうきは、首を傾げる。

 「心配?私のことを?」

 「体調不良って、学校に連絡いれたんだから、当然だろ」

 ひいらぎの説明でゆうきはようやく納得が言ったようだ。

 「ああ。それか」

 ゆうきはそう言って納得したように手をポンと叩く。

 「別に具合は悪くないぞ」

 「は?じゃあ、何で今日休んだの?」

 座布団に座りながら証はハトが豆鉄砲を喰らったような顔になる。

「単純に色々と考えることが多くてパンクしそうだったから、一日寝ていただけだ」

 「………寝る??」

ゆうきの返答に今度は証が首を傾げる番だ。

 「こいつは、色々いっぱいいっぱいになるととりあえず寝るんだ」

 ひいらぎがそう説明する横で、ゆうきは証からもらった見舞い品を見ながら頷く。

 「ドツボにハマったときはそうしているんだ」

 「もしかして、ぼーっとした様子だったのって…………」

 「ああ。単純に寝起きだっただけだ」

 考えに詰まった時は、考えなければいいとはよく聞くがゆうきは更に上を行っていた。

 「つまり、仮病だったってこと?」

 「人聞きは悪いが、そういうことだ」

 淡々と答えるゆうきに証は大きく息を吐きだす。

 「まあ、理由は分かったけど、せめて連絡は欲しかったよ」

 「いや、私、証の連絡先なんて知らないぞ」

 「……………」

 証は自分のスマホを確認する。確かにゆうきの連絡先はない。

 「…………忘れていた僕も悪いけど、魔女先輩も言ってよ」

 「まあ、そんなに困らないだろ?いざとなったら、拓矢もいるし」

 「人を頼らないといけない時点でそれはもう困っているんだよ」 

 証は、ゆうきにスマホを渡す。

 「なんだ?」

 「魔女先輩の連絡先入れてよ」

 証にそう言われゆうきは、もたくさしながらスマホを取り出し連絡アプリを開く。

 「ひいらぎ様、これどうやるんですか?」

 「いや、付喪神にそんなの分か─────」

 「まず、友達追加をタップして」

 「いや、なんで分かんの!?」

 現代の人間よりもスマホを理解しているひいらぎに証は思わず声を上げる。

 そんな証を無視してゆうきはひいらぎに聞きながら証と連絡先を交換した。

 「というか、なんで、魔女先輩は、拓矢先輩の連絡先知ってたの?」

 「クラスでグループ作ってたから半強制的に交換することになった」

 本人の性格に反して、スマホには多数の連絡先が登録されていた。

 「あ、っそ」

 これ以上追及しても仕方ない。元気そうではあるし、これ以上の長居は無用だろう。

 「とりあえず、先輩は今日休んだ理由をちゃんと拓矢先輩に………」

 説明してと言おうとして口を噤んだ。本来の筋から言えばゆうきから説明すべきだ。

 しかし、ゆうきから、拓矢に説明しても気を遣っていると取ってしまう。となると、証が説明するしかない。

 「証?」

 そんな考えが頭を過ってしまい途中で言葉を切った証をゆうきは不思議そうに見ている。

 「いや、何でもないよ。それより、先輩の考えはまとまった?」

 病人に『具合はどう?』と聞くのと同じような気軽さで証はゆうきに尋ねた。

 「ああ」

 するとゆうきはすぐに頷いた。

 その迷いのなさに証は少し面食らった後、上げようとしていた腰を下ろし再び尋ねる。

 「じゃあ、聞かせてもらおうかな」

 ゆうきは魔女帽子を頭にかぶり直して証を見つめる。

 









 「証、依頼を取り下げさせてくれ」












ごめんなさい!

先週投稿出来ませんでした!!

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