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08 1冊目 p.8

6月10日(木)

 雨は昨日で終わり、今日は晴天だった。明日のプール掃除、立花さんと加藤さんに誘われて俺も結局参加することになったので、晴れて欲しい。フェイスタオルも忘れないよう持っていこう。


 失踪した俺の傘だが、期待してはいなかったもののやっぱりなかった。安いビニール傘だったけど、それでも俺の相棒だったのに。


 教室に着いた俺はすぐに被害に遭った話とそこを助けてくれた女神様の話を岡田にしようとしたんだが、その前に先手を決められてしまった。


「立花さんが朝から早速連絡くれた。傘見つかったって」


「そりゃそうだろ!」


 間髪いれずに返したよ。だって、俺が隠して戻したからな! 俺のは戻ってこなかったけど!


 自棄になって返した投げやりな返答を気にもせず、岡田は上機嫌だ。


「朝から立花さんとスマホでやりとり出来るなんて今日は良い一日だよ。ヒデのおかげだよ、ありがとう」


 爽やかな笑顔を浮かべる岡田に周りの女子が視線を集中させる。発言の全貌さえ知らなければ、ただの恋するイケメンだもんな。


 きっと立花さんにとっても岡田は好青年なんだろうな。


 立花さん視点の岡田は、きっと、気さくで、優しくて、話の合う少女漫画に出てくるようなイケメンの同級生。不穏な話は俺にしかしていないから、健全で爽やかな男子高校生といったところだろう。


 岡田が嫉妬とかする展開になったら、その片鱗を立花さんにも見せるんだろうか。うーん、そんな展開がきたら、俺は絶対に被害に合うから遠慮願いたいが、少し興味はあるね。


 なお、俺のクレームと加藤さんが女神だって話は、脳内全てを立花さんで占めている岡田にあまり響かなかった。酷い奴だ。




6月11日(金)

 タオルを持って行ってよかった。大活躍。


 今日は初夏を飛び越え夏を感じさせるほどいい天気で、プール掃除日和だった。


 放課後、ジャージに着替えた俺らは立花さん、加藤さんと合流し、プールへと向かった。立花さんも加藤さんも髪の毛をまとめていて可愛かった。


 夏が来るなぁ、なんて思いながら目的地に到着。すでに水抜きが終わっていたプールはドロドロした汚れが底に充満していた。


 強制参加の水泳部や生徒会に加えて、俺らのような暇な人間が数十人集まっていた。頑固な汚れをデッキブラシで落とすのは楽しい。俺って結構綺麗好きかもな。


 掃除中、滑って転びそうになる立花さんを颯爽と支えた岡田はかっこよかったが、今日はもっとかっこいいシーンがあった。


 飽きた野郎共がふざけてホースの水をかけあっていたのだが、そのうちの一人に邪な気持ちを持った男がおり、女子を狙って水をかけ始めたのだ。実に許しがたい。


 その魔の手が立花さんにも迫ったが、そこを岡田が体を張って守ったのだ。水も滴る良い男とは正しくこのこと。


「ふざけるなら身内だけにしてもらえる?」


 冷たく言い放ったずぶ濡れの岡田に野郎共は気まずそうな顔で謝罪の言葉を口にし、逃げるように去っていった。周りの女子からキャーキャー黄色い声が上がっていたが、当の本人は立花さんからのお礼の言葉しか耳に入っていないようで、二人の世界に浸っていた。


 俺はその間何をしていたかというと、実は俺は俺で男を魅せていた。


 野郎共が去る時、慌てていたためホースを投げ捨てたんだが、それが運悪く加藤さんの方を向いており、軽度ではあるものの彼女は水に濡れてしまったのだ。


 俺はすかさずプールサイドに戻って、置いていたタオルを回収し、加藤さんにお貸しした。困り顔が安心した顔に変わって、俺も一安心。こんな平々凡々な俺でも役に立ててよかった。


 その後も気持ちの良い天気の中、楽しく掃除を行った。人数がそれなりにいたので、思っていたより早く終了。加藤さんはタオルを洗って返すねと言ってくれた。断ったけど、是非と言うので、タオルは今彼女の手元にある。なんだか照れくさいね。


 それにしても今日の岡田は純粋にかっこよかった。ずっとそのまま純粋にかっこいい岡田でいてくれ。


 ……掃除中、立花さんと楽しそうに会話する男がいて気になったけど、あれは誰だろう。

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