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06 1冊目 p.6

6月7日(月)

 だんだん暑くなってきた。エアコンの使用は7月からなので、まだ使えない。昨今の気象状況を鑑みて、柔軟に対応してほしいね、まったく。


 体育、テニスを選択したけど、水泳にしとけばよかったか。とはいえ、筋トレしてるわけでもないし、マッチョに囲まれながら俺の貧相な身体を見せるのは気が引ける。


 そういえば、今週の金曜日に希望者参加のプール掃除が予定されているけど、岡田は参加する気があるんだろうか。立花さんを誘えば、青春の1ページらしい王道イベントが増えると思うんだが。今度聞いてみよう。




6月8日(火)

 プール掃除の件、確認したら随分と前に参加確定していたらしい。岡田は俺も誘ってきたが、面倒なので辞退した。二人で楽しんでくれ。


 というか、天気予報が突然悪くなってきたけど、開催は大丈夫だろうか。明日の午後から天気が崩れるみたいだけど、金曜日までに晴れるといいな、岡田。




6月9日(水)

 健気に岡田のことを心配していた俺がバカだった。今日は本当にひどい、ひどすぎる。俺の傘が無くなったのは、完全に俺の罪のせいだけどさ……。


 加藤さんという女神がいなければ、俺はずぶ濡れで帰る羽目になっていた……。


 一連の流れ、忘れないようちゃんと書いておこう。


 事の始まりは昼休みだった。天気予報通り、雨が降り始めていた。することがない俺は、弁当を食べ終えてスマホで動画を見ていたんだが、そんな俺に突然、岡田が変なことを言い出した。


「ヒデ、お願いがあるんだ」


「不穏な気配がするぞ……」


 引き気味に言う俺に、岡田はわざとらしい笑みを浮かべた。絶対にアブナイ案件だ。……実際、そうだったんだが。


「まあまあ、次のテストで使える数学の過去問を提供するから手を打ってよ」


 英語のテスト直しだけでなく、数学のテスト直しにもうんざりしていた俺は引いていた身体を戻した。


「……俺は何をすればいいわけ」


「簡単だよ。放課後、この傘を一瞬だけ隠してほしいんだ」


 岡田はスマホを俺に見せた。画面に映っているのは、ビニール傘のようでいて、白いレースのプリントが入っているオシャレな傘だった。


 デザインから考えるに、女性モノの傘。察した俺は恐る恐る岡田に確認する。


「これって、もしかしなくても……」


「そう、立花さんのだよ。二人で一緒に帰りたいから、ヒデ、よろしくね」


「いや、これは、流石に犯罪では……」


「一瞬だけ隠して、すぐに戻すんだから、そう重く考えないでよ」


「いやいや、それは無理があるって」


「うーん、数学だけじゃ足りないか。じゃあさ、生物も追加するけど、どう? 一個上の先輩からもらった同じ教師のテストで、きっとヒデの役に立つと思うんだ。生物の先生、問題考えるのが好きじゃないみたいで、テストの内容はほとんど一緒だってさ。俺は必要ないから捨ててもいいんだけど、ほら、勿体ないと思って」


「……お願いします」


 屈した俺はしようもない男だ。

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