05 1冊目 p.5
6月1日(火)
誠に、非常に、心から残念なことにテストの結果がほとんど返ってきてしまった。
思った通り、現国は学年2位となかなかの出来で、社会科目は平均よりちょい上。英語は平均点ぴったしだった。数学と生物は……。文字にしたくない。
岡田は相変わらず出来が良かったようで羨ましい。本人はそんなことよりどうやって立花さんとの関係を進めていくかが問題のようだが、まあ大丈夫だろう。ライバルもいないし、昨日作ったグループは活発に動いていて、岡田の未来は明るい。
それにしても立花さんも加藤さんも頭が良いんだなぁ。送られてくる点数の輝かしさに目が潰れそうだ。思わず自信を無くしていると、加藤さんが個別で連絡をくれた。現国の点数を褒めてくれた。なんて優しい子なんだ……。
6月2日(水)
残す科目も全部返ってきてしまった。岡田に勝てた科目は現国だけだな。追試がなくて良かった。
うーん、それにしても数学のテスト直しがだるいな。英語は間違えた単語を50回書いてノート提出しろだとさ。それで覚えられるとは思えないんだが……。
ぐちぐち言っていても仕方ないよな。寝る前に少しでも進めよう。
6月3日(木)
ついにテストの上位者の名前が廊下に貼り出された。自称進学校なので、こういうところの意識は高い。
岡田に連れられて仕方なしに見に行くと、そこにあったのは「一位 岡田樹」の文字。貼り出される30名の中に、俺の名前はもちろんない。明日、個人に渡される紙ぺらで学年順位は分かるだろう。
他に知っている人の名前がないか見ていると、3位に立花さんの名前があった。岡田的には並びたかっただろうが、2位の安田健一という人物がそれを邪魔していた。
続けて順位を見ていくと、10位に加藤さんの名前があった。どうりであのグループの点数が高かったわけだ。
自信を少しだけ取り戻した俺は岡田にお祝いのコメントをしようとしたが、それよりも早く聞きなれた声が岡田の名を呼んだ。立花さんだった。横には加藤さんもいる。
「岡田くん、おめでとう。凄いね、1位だなんて」
立花さんから声をかけられたことがとっても嬉しかったのか、極上の笑みを岡田は浮かべた。
「立花さんも3位おめでとう。次は俺負けるかも」
「そうなるよう頑張っちゃおうかな」
立花さんは楽しそうに笑った。
「ヒデに現国のコツでも聞いとかないとな。加藤さんは英語1位だっけ?」
「うん。英語は得意だから。1位とれてよかった」
加藤さんのその発言に、俺は思わず口が動いた。
「加藤さん、今度俺に英語を教えてよ……。樹は天才肌だから、頼りにならなくて」
だって、想像以上に英語のテスト直しがだるいのだ。今年の英語の先生、厳しすぎる。
俺の突然のお願いを快く承諾してくれた加藤さんに感動していると、予鈴のチャイムが鳴り解散となった。
今度のテストは頑張ろう。
6月4日
個人の順位が判明した。半分より上とはいえ、指定校推薦は絶望的だろうな。狙ってなかったとはいえ反省。
母上に紙ぺらを献上したものの、特に反応はなかった。岡田が1位だったと告げると物凄い勢いで食いついてきたが、母上、もう少し実の息子に興味を持ってくださいよ……。