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04 1冊目 p.4

5月28日(金)

 ようやくテストが終わった。日記を書くのも久しぶりだな。岡田もテスト期間だからか、何か動いたりはしなかったので、書くこともなかった。


 現国と古文は手応えを感じるものの、数学や生物は自信がない。文系中の文系の俺。結果も中間よりちょい上だろうな。岡田は頭が良いので5位以内には入っているだろう。




5月31日(月)

 今日はかなり進展があった。立花さんの連絡先を自然な流れで岡田がゲットしたのだ。一連の流れを忘れないうちに書かなければ。


 ことの始まりは放課後。今日は岡田の家でゲームをすることになっていたんだが、学校を出る前に俺が借りた本を返しに図書室に寄ることになった。テストも終わって人が疎らな場所なんだが、なんと驚くことに加藤さんがいた。


 話を聞いたら立花さんを待っているとのことだった。彼女は日直で、皆のノートをとりまとめて先生に提出しなければならないようで、加藤さんは時間を潰すために図書室に来たんだと。


 そんなに時間がかかるのかと聞いたら、どうも課題が終わってない人がいるらしくて待ってあげてるらしい。流石、立花さん。優しいね。


 その優しさに感銘していると、岡田が自然な口調で訳の分からない言葉を口にした。


「加藤さんはパンケーキって興味ある?」


 脈略のない話に俺は困惑したものの、加藤さんは特段気にせずに返した。


「パンケーキ? 甘いもの好きだけど、最近は食べてないかな」


「コンビニ曲がった先の大通りにパンケーキの専門店が出来たの知ってる? 美味しいって評判なんだけど、俺とヒデだけじゃ行きにくくって」


 そんな話、初めて聞いたぞ。なんてことを口にする勇気はなかったので、俺は肯定も否定もせずに静かにする。


「あー、知ってる! ヨーロッパな雰囲気で可愛いお店だよね。確かに男子だけだと敷居が高いかも」


「今度よかったら一緒に行かない? テストも終わったし、ご褒美としてさ」


 岡田はナチュラルに加藤さんを誘った。加藤さんを誘う、つまりは立花さんを誘ったのだ。そうとは露知らずの加藤さんは意外にもノリノリで賛同してきた。


「わぁ、楽しそう。実は今日二人で放課後にどこかへ出かけようって話をしてたんだけど、まだ決めてなかったんだ。二人はこの後用事でもある?」


「俺もヒデもないよ」


 お前の家でFPSする話はどこにいった。なんてツッコミはもちろん我慢した。


「じゃあちょうどよかった。遥が戻ってきたら行こうよ。遥も興味あるって言ってたから、断ることはないと思うよ」


 ノリノリの加藤さんはそう言い、実際、彼女の言うとおり、立花さんに興味を持っていただけて、なんと4人でパンケーキを食べに行くことになった。


 当日いきなり決まるだなんて、岡田は強運の持ち主か?


 立花さん合流後、すぐにお店へと向かった。道中はテストの話で盛り上がり、充実していた。うん、青春だ。岡田の真っ黒な思惑さえなければ。


 お店にたどり着くと、岡田が立花さんと加藤さんを圧倒的なエスコート力で案内をしていった。扉を開けるのはもちろん、席もソファ席を勧めた。メニューも「お先にどうぞ」と言って渡した。定番とはいえ、押さえるところを押さえていて、俺は感心してしまった。いや、俺も頑張るべきなんだが。


 注文はパンケーキにドリンクがついたセットを頼むことにした。他の皆もセットにし、味と飲み物はそれぞれ好みのものを頼んだ。


 パンケーキが届くと皆で写真を撮ることになった。そう、これが岡田の作戦だったのだ。その後、写真を共有しようという流れになり、岡田と立花さんが友人になって、俺らのグループが自然な流れで作られた。


 岡田は立花さんと加藤さんに付き合ってくれたお礼を言うと、本腰を入れて立花さんと話し始めた。会話を止めたくないからか、立花さんが紅茶を口にするタイミングに合わせて岡田もアイスティーを飲んでいた。テスト終わりだから話すネタがいっぱいあったとはいえ、よく続くよな。


 俺は体育館の時と同じく、岡田に立花さんを盗られた加藤さんと話をした。小粋な会話のネタを出せればいいのだが、俺にそんな器用さはないので、岡田の真似をしてテストの話題でいくことにした。加藤さんは英語が得意らしい。詩とかも嗜んでいるとか。韻の踏み方が声に出して読むと気持ちが良いという難易度の高い話だったが、一生懸命話す加藤さんは可愛かった。テストの疲れが癒されるのを感じた。


 結局、俺たちは飲み物が終わるまで店に滞在した。会計は俺と岡田で仲良く折半。そのあともう一軒、にはならず、帰宅することに。立花さんは違う路線だったので、駅でお別れ。加藤さんは同じ方向だったので途中まで一緒に電車に乗った。


 帰宅後、ご機嫌な岡田からお願いをされたので、俺は立花さんと加藤さんにそれぞれ個別のメッセージを送った。岡田だけやればいいのにと思うが、今はまだ目立ちたくないらしい。俺を隠れ蓑にするのやめて欲しいんだが、乗り掛かった舟だし、岡田が無事に立花さんと付き合えるのか関心はあるので、出来ることはやっていこうと思う。


 それにしても今のパンケーキって生クリーム多すぎないか? 軽かったから苦労せずに食べきれたけど、ちょっと多いと思うんだよなぁ。

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