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68 二人の騎士

 目覚まし時計なんか無い。

 それでも、陽光に照らされれば起床することは容易い。

 俺は冬の空気を暖めるような朝日を感じながら、身体を起こして肩を回した。


「大変だタクマぁあああああーっ!!」


 どっかで聞いた声が、爽やかな朝をぶち壊す。

 いや、どの道ユズリがいないことに気づき絶望した筈なので、むしろ有難いかもしれない。


「どしたの、ショーゴ」


 寝起きなので簡潔に聞くと、彼はほぼ治った身体をばたつかせながら答えた。


「魔王軍と最前線で戦っている騎士が、ここに向かっているらしい。タクマに用があるとかで……!」

「騎士……? それが何か問題あるの?」


 反射的に言うと、ショーゴは眉を顰めて再び口を開く。


「騎士ってことは、ユズリと知り合いの可能性があるじゃないか。もしかしたら、処罰みたいな事をされちゃうのかも……」

「考えすぎでしょ……それに」


 ここで、一度口を噤んでから覚悟を噛み締めて言い放つ。


「俺のするべき贖罪は、ユズリを助け出す事だけだ」


 両の手を握り締めると、唐突にドアが三回ノックされた。


「や、やばい、噂をすればなんとやらだ……!」

「噂をすれば影がさす……ね」


 さりげなく訂正しつつ、俺は返事をして入室を許可する。

 まさかこの前みたいに敵が現れたりしないだろうな、と一瞬考えたが、幸いな事に全くもって逆である事に後々気づくのだった。


「失礼。私はディッセル騎士団第一遊撃隊隊長、アルティ・ジョーンです」

「同じくディッセル騎士団第一遊撃隊副隊長、ユージン・モットーっス!」


 入室してきたのは情報通り騎士達だ。二人とも王城でユズリが着ていたのと似たデザインの鎧を纏っている。

 アルティと名乗った人は、落ち着いた雰囲気を醸す三十代前半位の男性だ。目の色は焦茶で、髪は黒にほんのり赤を足したような色をしている。鎧の所々に戦いの痕が垣間見え、そして恐らく隊長だからだろう、少々目立つワインレッドのマントをたなびかせていた。


 副隊長らしいユージンさんは、二十代半ばくらいか。隊長程の傷は無いし軽薄そうにも見えたが、本人や腰に携えている剣はただならぬ気配を感じる。


「……君が、魔王と接触したという少年かな?」

「なんか冴えない子っスねー」

「あのー、俺じゃなくてこっちのタクマが……」


 問いかけるのは、アルティさんの方だ。

 ショーゴに話しかけてたユージンさんは一旦無視し、素直に頷きかけたところでひとつの疑問が生まれる。


「……って、魔王との事を聞きに来たんですか?」


 愚直に聞き返すと、彼は僅かに、けれど確りと首肯した。


「あぁ。奴が魔王城より出てくるのは非常に珍しくてな。それ故情報が極端に少ないんだ」

「何でもいいんで気づいた事とか教えてほしいっス!」


 そう聞かれ、俺は改めてあの時の記憶を蘇らせる。


「えっと、まず見た目は……」


 情報が少ないとの事なので、容姿や使用してきた魔法等をできる限り詳細に話した。



「……なるほど。この事は上へ報告させてもらうよ。聴取のご協力感謝する」

「感謝っス!」


 彼らは敬礼をしてから、椅子から立ち上がる。

 それに対し、俺は反射的に。


「あ、ま、待って下さい!」


 ドアノブを握りかけたアルティさんは、動きを止めて体を向き直した。


「あの、アルティさん…………俺を弟子にして下さいッ!!」

「はぁ!?」


 最初に驚いたのはショーゴだった。


「ちょ、何いってんスか君! 初対面なのにいきなりそんな……」

「いやまてユージン。一旦話を聞こう」


 俺は改めて、ユズリが連れ去られた経緯を説明しようと口を開く。


「実はユズリが……仲間が連れ去られて……」


 そこまで言葉にすると、ユージンさんはふらつき、壁に衝突した。これにより、近くのタンスから何冊かの本が零れ落ちる。

 どうしたのかと聞く前に彼から喋り始めた。


「な、なんで……」


 ユージンさんは驚きから焦りに表情をシフトさせつつ叫んだ。


「なんでユズリちゃんの名が出てくるんスか!!」

前回の後書き読み返したら文脈とか色々カオスで頭抱えた作者です。

遂にあのキャラが登場しましたが、彼が何者なのかは後々分かります。修行編とはいえバチバチ戦わせようと思っているのでそこもお楽しみに。

それでは次回もよろしくお願いします!

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