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64 その正体は


 トオヤを気絶させようとしたその時、彼の周りに六角形が模様として浮き出るドーム状のバリアが現れた。

 あまりに唐突な出来事に、攻撃を止めることも出来ず激突してしまう。

 花火のような物が破裂したように舞い上がり、衝撃により仰け反る。


「なに!?」


 もう一人の僕が驚くと共に現れたのは……。



「おやおや、随分と久しぶりだなぁ……ヴルヘリット」


 漆黒のドレスを纏った、一人の少女だった。

 彼女の姿を見た瞬間、魂だけのはずの俺は息が詰まった。

 それほどまでのオーラというか……実際に対峙している訳では無いし、殺気を当てられている訳でも無いのに恐怖がまとわりついて離れない。


「ヴァーナ……暫く見ない間に、随分とちんちくりんになったな」

「ふん……お前こそ、以前と違い覇気の感じぬ童顔になったではないか」


 そのディスりはもう一人の僕……もといヴルヘリットという人ではなく、全部俺に突き刺さっているのだが。


「ま、積もる話もあるだろうが……」


 少女はそこで区切ると、短い嘆息を吐きつつ目を閉じた。

 そこからカッ! と音がなりそうな程目を見開き、どこかへ手を掲げる。

 あの方向は……。


 ユズリの立っている場所!


 もう一人の僕!

「ぐっ……!」


 俺に呼応したヴルヘリットさんは、脅威の速度で振り向いて彼女の元へ駆け寄ろうとする。

 しかし、少女の異次元の瞬発力により全く届かない時点で、ユズリの周りにトオヤの時と同じバリアのような物が出現した。


「なっ……なにこれ?」


 困惑する彼女を嘲笑うかのような声が、少女から発せられる。


「この娘は預からせてもらう。返して欲しければ……」


 俺はその言葉を遮るように。


 身体の所有権を強引に奪い、黒剣を振るった。

 しかしその刃は届かず、少女から十センチ程離れた所でまたしてもバリアにより阻まれる。

 そんな膠着した状態のまま、絞り出すように指顧した、


「ユズリを……解放しろ!」

「おいおい。それが頼みを蒙る者の態度か? 品が無いぞ」

「そんなの関係……ッ!」


 そこまで口にしたところで、少女が左手を俺に翳す。

 すると、内蔵を抉るような激しい衝撃に襲われ、大きく吹き飛ばされる。


「タクマぁあああーっ!!」


 バリア内のユズリが叫んでくれるが、かなりの威力だった為簡単に立ち上がれない。


「がふっ……!」


 口内を切ってしまったようで、そこから喉に垂れた血が溜まり噎せる。

 血反吐を飛ばしていると、先程の少女が近づいてきていた。


「弱いな。童。しかし最も嘆くべきは……」


 少女は一度目を瞑ってから、叱責をトオヤに浴びせる。


「こんな者に破れたのか! トオヤ」


 彼女が鋭くトオヤを睨むと、彼は怯えた声を出す。

 この二人は一体どういった関係なのだろうか。


「まぁ、私としては構わないのだがなぁ……お前を甚振る口実が出来るのだから」

「ひぃっ! あ、あれだけはご勘弁を!」


 随分と萎縮するトオヤ。ここに来る前に、何かしらの恐怖でも植え付けられたのか。


「ふん……童。先程は遮られたので今一度申してやろう。この娘を返して欲しくば、次に月が満ちる夜に魔王城へ来い」

「魔王……城……?」


 唐突なワードに思わず零れてしまうが、幸いそれにより相手の神経を逆撫ですることは無かった。


「あぁ。そうだ。魔王城にて、再びトオヤと戦闘するのだ。奴に勝利出来れば娘は解放してやろう。敗北すればそうだな……娘は私の可愛い配下達に陵辱させるか」

「……っ!!」


 青筋を立て起き上がろうとした時、少女が僅かに動く。


「動くな」


 その一言により、まるで重力が倍になったかのような圧力が伸し掛る。


「ふん。誠に脆いな。それならば少し鍛えたトオヤでも十全に屠れそうだな」


 少女はそう言うと、バリアを張っているユズリとトオヤを魔法の力か何かで挙動を見せずに宙へ浮かせた。


「ではな。童。次は精々私を楽しませろよ」


 奴が言ってしまう前に、俺は一言。


「ま、待て……あんたは、一体……?」


 これにより、少女は僅かに顔をこちらに向ける。


「そういえば、名乗っていなかったか。いいだろう」


 質素でありつつも雅な黒ドレスを翻し、少女は鋭い目でこちらを見据えた。


「私の名はヴァーナ・ゲル・シュテルベル。現魔王を務めている」


 半ば予想出来ていたが、その発言に、俺は絶句した。


今日アップしないと色々まずいと思い、慌てて書き上げた作者です。

やはり中々投稿ペースは上げられませんが、それでも一定の期間で上げられるよう精進しますのでこれからもよろしくお願いします!

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