61 抗えぬ本能
俺たちは頷き合ってから、トオヤに向かって同時に剣を振りかぶる。
「はは。雑兵が何人集まったところで関係ねぇッつの!」
すると、奴は右手をこちらに向け、魔法陣を展開した。
瞬時に技と規模を目測した俺は、それをアイコンタクトでユズリに教える。
「《ライトニング・ボルト》ォ!」
この魔法の使用頻度が高いのは、単に使い勝手が良いからだろう。事実、到達速度は随一でこちらも躱しにくい。
しかし事前に読んでいた俺達は、雷が放たれると共に左側へ一斉に跳んだ。
直後、ユズリのすぐ脇を雷鳴が過ぎ去る。
「ちぃ……!」
恐らくトオヤの狙いは、俺とユズリの衝突。
詳しく整理すると……左側に俺、右側にユズリがいる状態で走っている際、ユズリの右半身に当たるように魔法を放つ。すると、ユズリは反射的に避けやすい左へと避けて、並行する俺と衝突してしまう。
……というのが奴の筋書きだったのだろうが、彼の挙動からそれを察知した俺は、前もってユズリにそれを伝えていた。
これにより同時に跳んだ俺達は、衝突せずに済んだというワケだ。
しかし奴がこれで終わるはずがない。
次の手が来る前に、今度はこちらから仕掛ける。
そう思った時、俺の脳内を見透かすようにユズリがアイコンタクトを送ってきた。
どうやら先に攻撃を仕掛けるから、バックアップを頼みたいらしい。
一瞬迷ったが、一歩引いた視点で見た方が危機を察知しやすいと結論づけ、首肯を向けた。
「せ、ぁあああああっ!」
ユズリは頷き返した後、刹那の間に距離を詰め剣を振るう。
「くっ!」
トオヤはぎこちなくも何とか反応し、大剣で攻撃を受ける。
俺はすかさず背後に周り、黒剣を構えた。
取った! という心の声をかき消すかの如く、奴の呪文により、いつの間にか向けられていた手のひらから強烈な魔法が放たれた。
「《ファイア・ショット》!」
「うぉっ……!」
慌てて真横を切り裂き、そこから生まれた吸収力により炎の軌道を逸らせる。
「せぇええぃッ!」
ユズリの咆哮と共に、向こう側でまたも剣戟音。
だがまたも防がれたらしく、トオヤは余裕そうな表情を崩さない。
なら、これでどうだ。
「だぁああああああアアッ!」
「はぁああああああアアっ!」
俺とユズリの同時斬撃。この近距離では流石に魔法も連発出来ない筈。
どちらかは防げてもどちらかは受ける。そういう算段だったが……。
「なめんな」
突如、奴の持つエクスケインが眩く輝き、正円を描くように高速で一回転した。
俺とユズリは同時に弾かれ、あまりの威力にそのまま地面に転がる。
恐らくこれは《大剣》スキルに類する技だろう。
魔法だけでなく、剣術の心得もあるとは。これはショーゴが戦うのを止めるのも分かる。
だが、このトオヤには勝ちたい。勝たねばならないと本能にも似た何かが心中で叫んでいた。
それは……トオヤが、過去の俺に似ているからかもしれない。
地面に倒れ付しそんな思考を漂わせていると、突如背中に何かが舞い降り、動けないよう確りと押さえ付けられた。
「ぐぶっ……!」
「おーっと。動くな」
恐らくこの言葉は俺にでは無く、ユズリに対して放ったのだろう。
俺の背中に腰を下ろし、剣を地面に突き刺したトオヤは低い声で震えるように笑った。
「くっく……いやぁこういうのって敵がやってきそうな事だけどさ。やっぱやりたくなっちゃうよな。人質とってアレコレやるのって」
こ、こいつ……!
俺を人質に取って、何をするつもりだろう。ある意味子供じみた価値観の彼が、一体何を要求するのか。
いや、ここは何かユズリに言われる前に。
「ユズリ! 俺はいいから逃げて!」
首だけ動かし、何とか彼女に視線を移して叫ぶ。
しかし、ユズリは背を向けようとしない。
「仲間が残ってるのに、置いていけるわけないでしょ!」
半ば予想していた事だが、やはり騎士道精神なのか逃げようとしてくれない。
なんて言えば、離れてくれるのか。
「ねぇ君。タクマが生きるか死ぬか、それは俺の気分にかかってる。この意味が分かる?」
こいつ。絶対碌でもない事を言うつもりだ!
「えぇ。だから一刻も早く貴方を倒して、タクマを解放する!」
「ははははァア! それは無理だね。俺強すぎるし。それはもう実感してるでしょ」
奴の言葉に、彼女は何も言い返せず歯噛みする。
「でーも。一度だけチャンスをあげまーす」
きっと汚い笑みを浮かべているだろうトオヤは、本当に碌でもない事を言い出した。
「ここで全裸になれ。そして……トオヤ様どうか許して下さい! って言えば、解放してやるよォ! ヒャハハハハハハハァア!」
この……思春期童貞野郎がァ!!
お久しぶりです。作者です。
何とか今日はアップする事が出来た。というか、今日も予定より話が進まなかった……。
少しずつ進んではいるので許して下さい!
それはそうと面白かったら評価とブクマよろしくお願いします!(まぁスタートダッシュミスったからもうアレだろうけど……諦めないぞ!)




