59 読み合い、攻防
「コイツの名前は聖光大剣エクスケイン。お前の黒い剣と、どっちが強いかな」
金の装飾で施された、美しき白い大剣。
大地に突き刺さったそれを抜きながら、青年は俺に向けて笑みを浮かべた。
「くっ……!」
右手の黒剣を強く握り締め、苦い顔をする。先程の一撃を防がれた時点で、俺の勝機は皆無に等しくなってしまったからだ。
まだ奴に見せていないものといえば、次元一文字以外の攻撃スキルか、次元を大きく切り裂いた時に出てくる触手のみ。
これらを上手く使ったところで、奴に勝てるのか……?
いや、迷うな。
ガンゾルドや、今までと同じだ。諦めず頭を働かせろ。
彼女がここに戻ってきた時、死んでしまっていたらきっと怒られるだろうから。
「ふぅ……よし」
短く深呼吸し、目線を真っ直ぐに投げつける。
「やる気むんむんだな。いいぜ……来いよ!」
「言われなくても……ッ!」
俺は思い切り踏み込み、目の前へ向かい飛び出した。
剣をやや後ろに構え、空気中の魔力を剣に取り込ませる。
それが眩く輝く頃には、もう奴の目の前まで肉迫していた。
「うぉお……っ!」
向こうも剣を構え、迎撃しようとしているのが見て取れるが、足は止めない。
代わりに、あと五歩で射程圏内に入るといった所で、息を吸いつつ左方向へ視線を移した。
すると、敵もちらりと目が移ろったので、その隙にスキルを発動させる。
「おぉおお……〈重輪〉っ!」
重輪。俺が使えるようになった剣技のひとつ。
次元一文字と同じく横斬りの技だが、違う点は所謂回転斬りであることだ。
因みに次元一文字も重輪も、ユズリ含め他の会得者は使えないらしい。理由は不明だが、転移者だから通常とは違う技を覚えたのだろうか。
「随分せこい真似するなぁ」
九十度程斬りかかったところで、敵がそんな言葉と共に剣を盾にする。
これで防いだつもりのようだが、俺自身こんなセコい手にかかると思っていない。
狙いは別だ。
「お、りぁあああっ!」
俺は青年ではなく、その手前の次元を割いた。
しかし向こうも読んでいたのか、剣を地面に突き刺して体勢を保つ。
だが、それでは吸収されずに済むだけだ。
「……ん? な、なんだこりゃ!?」
青年は驚いた。突如として裂け目から現れた、蔦のような触手に。
ゆっくりと畝りながら近づいていき、離れようとする対象を逃さぬようじっくり身体を這わせていく。
そして、俺はこの瞬間を見逃す程お人好しでは無い。
「終わりだ。ーー〈次元一文字〉」
剣の使用者である為吸収力に影響されず、百パーセントの力でスキルを使用する。
魔力に後押しされた猛攻が、敵の背中に差し掛かったその時。
「くっ……《移扉》ォ!」
光に包まれながら、青年はどこかへ消え去った。
当然俺の剣は空を裂いたが、剣筋が不安定になってしまったため次元は開かずに済む。
「やられた……!」
念の為周囲を見渡すも、奴の影は見えない。
どこか遠くの地域へ移動してしまったのかと考えるも、近くに潜伏されていた時が怖いので再度見回す。
目線を上げ隆起した台地へも追うと、奴が消えた時と同じ光が輝いている箇所を見つけた。
もしかしなくてもあそこに現れるのだと思われるが、俺に遠距離攻撃は……
……ある。ひとつだけ。
この世界に来て初めての戦闘の時。サイクロプスの攻撃を受け半ば戦意喪失した後、身体が勝手に動くような感覚に見舞われた。
その時の斬撃は、大地を張って遠くの位置で次元を開いたのだ。
あの攻撃が出来ればいいが、あれから一度も成功した事は無い。
だが、俺と違って奴は遠距離の魔法も多く取り揃えているはず。つまり……ここを逃せば、本当に終わりだ。
ならば、ここで限界を超えるしかない……!
「ど、ぅらぁあああァァァアアっ!」
光の位置を確り見据え、斬撃が届く瞬間をはっきりイメージしつつ思い切り剣を振るう。
「届けぇえええっ!」
その想いが届いたのか、切っ先から放たれた斬撃は、地面を這い、切り立った地面を登っていき、そして……。
奴が現れた瞬間、そこに次元の裂け目が現れた。
「よし! これで……」
「あぁ、終わりだ。《ライトニング・ボルト》」
瞬間、背後から焼き付くような痛みが全身に広がった。
めっちゃ高い玩具買っちった……作者です。
それはそうと縦読み用にアルファポリスでもこの作品の連載を始めました。まだ話数は少ないですが順次載せていく予定です。
次回はだいぶストーリーを進めていきたいところ。
今後も応援よろしくお願い致します。




