↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
54/85

54 二日後

 止まない街レアルでは、相も変わらず雨が振り続けている。

 そんな雨音のメロディを聞きつつ、俺は借りている宿の一室で、鏡の前に立っていた。

 鏡と言っても俺の世界のものほど精巧では無く、映る姿はややグレーだがそれでも無いよりはマシだ。

 俺は目の前の包帯塗れの自身を眺めつつ、生唾を呑み込んで包帯を取る。


 目線を身体から鏡に移すと、そこに居たのは傷だらけの上裸の男だった。

 左肩からへそ近くまで痛々しい傷が残り、脇腹付近にも点状の傷跡が刻まれている。

 そんな自分の身体を見て、意外な事に酷い喪失感に苛まれた。

 特にこの体を気に入っていた訳では無いのに、何故こうも切ない気持ちになるのだろうか。

 やはり、もう二度とこのキズのない身体に戻れないからだろうか。


「タクマぁー。……あ」


 考え事をしていると、ノックも無しにユズリが入室してくる。

 直ぐに謝って出て行くかと思ったが、彼女は予想外の行動に出た。


「そうだよね。傷、残っちゃったよね……」


 ユズリは俺の左前に立つと、縦に刻まれた傷に指を這わせた。

 申し訳なさそうに口を結ぶ彼女に対し、俺は小さく首を振る。


「ユズリのせいじゃないんだからさ、そんな気にしないでよ。それより、そっちだってかなり傷負ってたでしょ。大丈夫だったの?」


 男の俺なんかより、女性であるユズリの方がずっと痕を気にするハズだ。

 そう思っての発言に、彼女は左手で自らの身体を抱いた。


「いや、私は元々傷だらけだからさ、いいんだ」


 声色は確かに明るげだったが、表情が晴れていない辺りやはり気にしているのだろう。

 過去の傷は騎士時代のものだと思われるが、その仕事を選んだのは彼女自身だ。

 そういえば、何故ユズリは傷を負うと分かっていて騎士の道を選んだのだろう。センシティブな話題なので避けてきたが、そろそろ聞いても良いのでは無いだろうか。


「あの、さ。ユズリはどうして騎士になったの? 辛い事だっていっぱいあるだろうに」


 俺の質問に、彼女は目を丸くしつつ答えた。


「実はね、昔モンスターに襲われたことがあって……その時、凄く強い騎士の人に助けてもらったの。アルティっていう有名な人なんだけど、タクマは知らないかな」


 実際全く存じ上げない人だったので、申し訳なさそうに首肯する。


「えっと、それから助けてもらった日の事が忘れられなくて、いつの間にか騎士になりたいって思うようになったの」


 彼女の言葉を聞いて、素直に感嘆した。

 この時代では女性が騎士を目指すのはかなり稀なハズだ。

 そんな中、自らの目標を追い見事エリート騎士として成り上がった。

 きっと並々ならぬ努力の結果なのだろうと、改めて彼女に尊敬の眼差しを贈る。


「やっぱり凄いな。ユズリは」


 それに比べ、俺はまだまだだ。

 こんなチート能力を貰っておいて、彼女に新たな傷を負わせてしまった。

 もっと、もっと精進せねば。


「でも、タクマもさ、嫌だよね。身体中傷だらけの女なんてさ」


 何の話をしているんだろうと彼女に顔を向けると、何やら苦い顔を浮かべていた。

 そんなユズリに向け、俺は本心を語る。


「なぁに言ってんだよ。その傷はどれもユズリが戦ってきた証でしょ。俺はかっこいいと思うけどね」


 そうだ。常に何かから逃げてきた俺と違って、挑み続けてきた彼女は格好良いのだ。

 俺のそんな言葉を受け、彼女は顔を背けた。あれ、イマイチ伝わらなかったかな。と思うも、すぐに「ありがと……」と返ってくる。


「さ、俺の傷も大体完治したし、ショーゴの顔でも見に行ってやるか」


 不安や心配といった感情に一旦蓋をし、無理やり活気を掘り起こす。


「うん。レジスタンスの皆に挨拶したら、出発しよっか」


 気持ち新たに、俺たちは顔を見せあって頷いた。



 待ってろよショーゴ。

 顔を引き締め、胸中で強く想った。

今日は何とか更新できました。作者です。

しかし明日から暫く忙しくなるので、更新は難しいかもしれません。申し訳ないです……。

それでもまだまだ先の構想は確りあるので、無理のないペースでアップしていきたいと思っています。

それでは、次回もよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。