41 綯い交ぜの感情
「ぐ、すまない……二人とも……俺……!」
嫌な予感がした俺とバスターヴさんがアジトへと戻ると、傷だらけで倒れるセントさんと破壊され尽くした室内が目に入った。
「な、何があったんだよ!?」
バスターヴさんが吠えると、セントさんはぐしゃっと顔を歪める。
「あいつらが、攻めてきて、それで……ッ!!」
二筋の涙を流すセントさんを労いつつ、とある気がかりが背筋を這った。
「……あの、フーロちゃんは?」
無事なのかどうかと言う問いに対し、セントさんは最悪の答えを口にする。
「…………連れて行かれた」
この場に、重い静寂が流れた。
「……な、何やってんだセントォっ!!」
感情が爆発し、思い切り胸ぐらを掴みあげたバスターヴさんがセントさんへ怒号を浴びせる。
それにより、彼は苦しみと悲しみを綯い交ぜにした顔をした。
「お、俺だって……くそっ……!」
その悔しげな表情を見て、バスターヴさんの肩に手を置く。
「バスターヴさん……この顔と傷だらけの身体を見れば分かるでしょう。セントさんも頑張って抵抗を……」
「分かってらぁ! だけど、それでも……フーロの奴あんなちいせぇのに親も殺されて……っその上そんな奴らに連れてかれちまうなんて……!」
彼の言い分も分かるし、ほぼ部外者である俺がこれ以上発言しても迷惑だろう。
いや、今は迷惑だとかそんな事を気にしている場合では無い。
児童だった頃の俺では、絶対にしなかったこと……。
他人に嫌われるのが怖くて常に壁を張っていたが、今この瞬間ばかりは意を決して口を開き、想いを届けるべく声を荒らげる。
「だからこそ! 今も苦しんでいるかもしれないフーロちゃんを助けるために動くべきだろ! それこそ、セントさんに怒りをぶつける時間があるならそっちに費やすべきじゃないのかよバスターヴさん!」
俺の声を聞いたバスターヴさんはこちらを軽く睨んだ後、少しずつ眦を下げゆるゆるとセントさんを降ろす。
セントさんは二度咳を払った後、小さく呼吸し床に伏した。
「ぐっ……すまねぇ。俺とした事が、怒りの矛先を違えちまった」
バスターヴさんがセントさんと俺へ謝罪し、俺も頭を下げる。
「俺も、感情に任せて言葉遣いが荒くなった点はすみません」
心からの謝罪がひねくれたような言葉として現れてしまうも、バスターヴさんは怒らず頷いてくれる。
慣れていない為決して上手い説得では無かったが、確りと意見を届ける事が出来て僅かな安心感を得た。
しかし、今は安堵ばかりもしていられない。
フーロちゃんを救出するべく、確実な作戦を練ろうと思考を始めると、ドアが無造作に強く開けられた。
「無事か皆ッ!」
そこには鬼気迫る形相のユフネさんと、汗と雨粒に塗れたユズリの顔が現れた。
どうやらユズリ達も俺たちと同じ様な目に会い、心配になって駆けつけてくれたようだ。
しかし、現実は……。
「そうか、フーロが……くそっ」
ユフネさんは短く嘆き、その拳を壁に叩きつける。
「なぁ、こんな所でうだうだ話してねーで、一刻も早く助けに行こうぜ!」
辛うじて原型を止めいる机を叩いて立ち上がるバスターヴさんの意見に、壁に背を預けているセントさんが首を振った。
「いや……ヤツらはこう言ってたんだ。“このガキを返して欲しくば、明日領主邸にて開催されるパーティーに参加しろ”と」
彼の言葉に、その場の全員が苦笑を浮かべる。
こんな事態にパーティーなる単語が出てくれば無理もない。
「今日行くにしても、明日行くにしても罠である事に変わりないんだから、今すぐにでも行く方が良いんじゃないの?」
「確かに。でもなんの策も練らずに真っ向から向かえば敵の思うつぼだしな……くそ、どうしたら……」
全員が押し黙った所で、豪胆かつ華奢な声が静寂を切り裂いた。
「寝込みを襲おう」
その発言に、全員が発した張本人であるユフネを見やる。
「夜、敵が寝静まった頃に領主邸に侵入し、フーロを助ける。私が思いつく中で最も安全かつ確実な方法だ」
静かな口振りに反し、彼女の瞳の奥に眠る轟々とした感情の嵐を感じた俺は固唾を呑んだ。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。昨夜は課題としてASMRの録音を義務付けられる夢を見た作者です。多分疲れてるんだと思います。
ここ最近投稿する時刻が遅くなってきているので、また九時投稿に戻していきたいところ。
今作を応援して下さると言う方は是非評価とブックマークをよろしくお願い致します!




