04 強襲されし王城
大地を震わす程の揺動が、俺たちに襲いかかった。
「うおっ!?」
「ぬっ!」
「な、なんだぁ!?」
三人ともそれぞれの反応を見せながら、倒れないよう踏ん張る。
地震大国日本に住んでる身としては、地面の揺れに対してそこまで動揺はしなかったが、周りの二人は焦りを見せていた。
「ななななんだ?」
尻もちをつきながら驚く貴族を他所に、片膝をつけている騎士に手を貸す。
「すまない」
「いーよ。これくらい」
鎧だからあの状態からでも立ち上がるのは一苦労だと思い手を出したが、予想を僅かに上回る重みが身体にかかる。
やっぱ金属鎧って大変なんだな……と思いつつ、騎士が分厚いガラス窓を僅かに開けた。
同時に、激しい鐘の音が城内……いや、恐らく国内に響いている。
「まずい、敵襲だ! レビン殿、勇者殿。緊急脱出口まで護衛致します」
騎士のその言葉を受け、俺は直ぐ様頷いた。
どうやら先程の揺れは地震ではなく、敵による攻撃だったようだ。
俺は騎士を追いながら頭を働かせて考える。
地面を揺るがす程の技をもつ敵が、勇者召喚とほぼ当時に襲撃してくる……話として出来すぎでは無いだろうか。
「次はこっちです」
何度も階段を上ったり下ったりしながら、騎士の指示に従っていく。
いつになったら着くんだ……と心中で溜息をつくと、不意に背筋が凍るような感覚に見舞われる。
「あの……」
この妙な感覚を伝えるべく、そこまで口に出した刹那……。
「グォオオオオオオオアアァァッ!!」
「っ!?」
二メートルはあるサイクロプスに似た一つ目のモンスターが、城壁をぶち壊しながら出現した。
「「うおああああああああああっ!?」」
俺とレビンという名の貴族が抱き合いながら絶叫していると、その前にいる騎士が抜刀し構える。
「ここは私が食い止めます。お二人は逃げて下さい!」
「えっ、でも」
「いいから行くぞ。我々が残っても邪魔になるだけだ!」
レビンにそう言われ、確かに戦闘未経験二人が居ても役立たずだと悟り、心配する感情を圧して反対方向へ駆ける。
「な、なぁ、今ってどこ向かってるんだ?」
「しらん! 俺とて王城なんぞ滅多に足を運べんからな。とにかく、今は走れ!」
すると、騎士が戦っているだろう後方から、激しい破壊音が轟いてきた。
「…………今の」
一言だけ呟き、頭の中を高速回転させる。
さっきの騎士が、俺たちを逃がすために命を落としたら……?
無論、貴族や市民を守るのは騎士の務めだ。場合や人によっては本望だと割り切り、命をかけるのも厭わないだろう。
だが、俺は……。
俺は貴族ではない。この国の……この世界の住人でも無い。だから助けに行ったとしても……。
いいや、違う。
単に助けたいのだ。格好つけたいのだ。それを行う為に、偽善ではないのだとあれこれ理由を付け加えたかっただけなのだ。
そうだ。既に心は決まっている。
「俺はさっきの人を助けに行く。お前はこのまま安全そうなとこへ」
「なっ、レベル0の貴様が加勢した所でなんになる!?」
レビンのその言葉を受け、俺は……。
考えもしない言葉が、不意に口から出た。
「それでも行くんだよ。勇者だから」
何故この言葉が出たのか、分からない。
自覚なんてまだ無かった筈だ。
確かに、転移してきたからには何かしらの能力が与えられたと思われるが、それも確実な考えとは言えない。
けど、それでも、言葉に出来ない何かに背中を押され俺は駆け出した。
そして、走りながら粗雑にステータス画面をこじ開ける。
ある筈だ。何か。
誰にも負けない、チート能力的な何かが……!
目を走らせ適当に画面を流していると、奇跡的にスキル欄を開く事に成功する。
「これは……!」
やはり有った、とあるスキルを見つけたところで、先程より強い崩壊音が響く。
思考を一旦閉じ、現場へ急行するべく足を早める。
そして、遂にあの騎士の影を捉えた所で……。
「まてぇえええええっ!」
俺は大声を出した。
騎士に向かい斧のような武器を振りかぶっていた一つ目モンスターは、こちらにギョロりと視線を移す。
「いくぜ……召喚ッ!」
そう、俺のスキル欄に表示されていたのは、“召喚スキル”。
何が召喚されるのかは分からないが、今はなんでもいい、俺たちを助けてくれ!
そう思った。が、しかし……。
「……あっれぇ……?」
何も起こらない現状に、その場の全員が硬直した。
どうも。最近スライム系のASMR動画にハマっている作者です。
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