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34 雨の日はミミズがデンジャラス。

 謎の人物達と戦闘を繰り広げた俺達だったが、敵に逃げられたうえ騎士たちに追いかけ回されていた。

 疲れのせいか振り切れず、何かないかと模索していると……。


「こっちだ!」


 少年めいた声が、俺たちを呼んだ。

 声の方に振り向くと、黒っぽいフードを被った少年が手招きしている。

 罠かとも思ったが、現状彼を頼る以外の打開策が浮かばないので、一か八かの賭けに出る。


「ユズリ、行こう」

「うん。分かった」


 俺の判断に速攻で頷いてくれる彼女に内心感謝しつつ、少年の元へ駆け寄った。

 そして、彼の誘導に従い裏手へ回り進む。


「……っ!」


 しかし、そこは行き止まりだった。

 三方向を壁に囲まれ、後方には先程の少年。

 やはり嵌められたのか、と思い憤怒の表情で振り向く。

 思い切り体当たりをかまし逃げようとするが、少年は静かに、というジェスチャーをして来た。

 そして、彼は一言。


「〈透隠密(インビシブル ハイド)〉」


 恐らく呪文を唱えたのであろう少年は、空気に溶けるようにその姿を消した。

 驚くと共にやはり嵌められたのかと奥歯を噛み締めると、数人の騎士が目の前の通路を横切る。

 バレたか、と腹をくくろうとしたが、何故か誰も引き返してこない。

 気づかれてないのか……? と困惑していると、いつの間にか耳に入るのは雨音だけになっていた。


「……ふぅ、行ったか」


 またも少年の声が聞こえると、消えた場所からその姿を現す。

 まさか、ずっとこの場に居たのか? そうだとすると、透明能力のポピュラーな弱点である“雨や砂埃に晒されると姿が浮き彫りになる”特性が無い事になる。

 明らかに強烈な能力である彼に警戒心を顕にすると、少年はそのローブを払い顔を見せた。


「僕だよ。……覚えてない?」


 そこにあったのは、黒く長い前髪に、幸薄そうな平たい顔……この特徴が無くて逆に覚えやすい彼は。


「勇者様!?」


 ユズリが控えめに叫んだ。

 勿論驚いたのは彼女だけでないが、感情を昂らせると近くにいるかもしれない敵に見つかる危険性があるので、最大限の平静を保つ。


「えっと……フウマ、だっけ。助けてくれてありがとう。でも、どうしてここに……」


 俺の礼に対し頷いた後、フウマは様々な情報をくれた。

 まず、彼が何故単独で行動しているのか。という事だが、どうやら特典スキルの透隠密(インビシブル ハイド)は、その特性上仲間と連携が取り辛い為王様達が派遣してくれた冒険者達とは早々に別れてしまったらしい。


 こうして一人きりで魔王城へ向かう事になったが、とある街で聞き捨てならない情報を聞いたとの事。

 それがここ、止まない街レアルを裏工作によって魔王軍の支配下に置くという計画だったようだ。


「なるほど。でも、それなら早い内に王様とかにチクった方がいいんじゃ?」


 俺の意見に、フウマは気難しい顔をする。


「僕もそうしたい所だけど……どれくらいの規模この街に侵食されているのかすら分からないし、物証も無いからね。もう少し情報を集めてから報告しようと思ってたんだ」


 この回答に素直に納得していると、横からユズリがおずおずと出てきた。


「でも、一人でこんな大きい事件に関わるのは危険なんじゃ……」

「あっ、えっと、大丈夫です……。ぼ、僕には敵から見つからないスキルがあるです……ます、から」


 ユズリに声をかけられキョドるフウマ。どうやら女性耐性スキルはこの俺より低いらしい。

 何となく気持ちは分かるので特に揶揄わず、今後について話し合う。


「取り敢えず、俺とユズリはメモに書いてあるバーへ行ってみるよ。フウマはどうする?」

「僕は引き続きこの街の騎士団に潜り込んで情報を集めるよ。中々尻尾を掴めそうに無いけど……まぁ、地道にやるさ」


 分かった。と首肯した俺達は、一時的に別れ後に落ち合う事に。

 こうして、俺とユズリはバーにて待ち伏せを始めたのだが……。








 長い回想から我に返り、またひとつ溜息。

 しかし、いつまでも気落ちしている訳にも行かない。先ずはこの男を拘束し、ユズリと合流しなければ。

 早速行動に移した俺は、ハーシンの村近くの森で採っておいた蔦で男を縛り、急いでバーへ戻る。

 常に騎士たちに追われるというのは精神的にキツいが、先程拘束した男が何かしら吐いてくれる事を願う。

 そうすれば、この事態も少しは進展するのだが……。

 そんな事を考えながらバーへ入り、元の席へ戻ると。


 そこには既に、彼女の姿は無かった。


最近新しいソシャゲをやりたいものの、時間が溶けそうで手が出せない作者です。

何かだいぶシリアスな雰囲気になってきましたが、まぁ、そこら辺はタクマ達が何とかしてくれるでしょう。

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