22 ※この小説は一応異世界バトル物です。
風の都リーアスの、とある一角。
辺りの家々は非常に少なく、とある一件のガレージしか見当たらない。
夜も静まる頃、俺達は身を隠しつつとある人物が出てくるのを待った。
「ねぇ、もうこんな時間だし、寝ちゃったんじゃ無いの?」
「いや、俺の予想通りなら……」
そこまで言ったところで、目的の人物がガレージより現れる。
手ぶらで外に出た少年は、何やら辺りを見回してから歩き始めた。
その動作を目にした俺は、追うぞ、というジェスチャーをユズリに送る。
頷く彼女と共に、昼とはまた違った追跡を始めるのだった。
彼が暫く歩いた後、とある場所に着く。
そこは一見すると……ゴミ置き場だ。
ただ、ゴミ置き場と言うにはあまりにも量が多い。恐らく近隣の住民が勝手に捨てていくという習慣が出来てしまい、いつしか手が付けられないほど拡大してしまったのだろう。
「……いるんだろ? 出てこいよ」
一瞬どうするか迷うも、俺はユズリに待機するよう指示を送ってから姿を表した。
「よう…………バック」
そう、目の前にいるのは、風の都で会った初めての住人バックだ。
「人を付け回すなんて趣味が悪いじゃねぇか」
「わるいわるい。お前の落し物を渡そうとしてたんだけど、中々タイミングが掴めなくてさ。ここまで付いてきちゃった」
お互いに煙に撒くような言い回しで腹を探り合う中、バックは落し物というワードに絶妙な顔を見せた。
「ほら、コレだよ」
俺はポッケに突っ込んでいた手から、とある物を取り出し親指で弾く。
バックは飛んでくるそれを難なく片手で掴んだ。
「……これは、ナット? こんなん落としてねーぞ。何かの間違いじゃないか? あんちゃん」
すると、今度はバックがナットを弾きこちらに返してくる。
俺はそれを何とか掴み、見せつけるように軽く持ち上げた。
「いいや、これはお前んとこでしか使われてない特別なナットだ。君以外有り得ない」
ここぞとばかりに仕掛けるが……バックは小さく微笑んだ。
「なぁに言ってんだ、あんちゃん。ウチにそんなナットはねぇよ」
ここで引っかかってくれたら早かったのだが、仕方が無い。俺は第二陣を繰り出す。
「それだけじゃない。お前があの時使っていたあの道具……あんな凄い機械、ここら辺じゃバックにしか造れないはずだ」
それを聞いたバックだったが、特に意に返さず後頭部を掻き始めた。
「……ふん。あんちゃんの意図にそぐわなくて悪ぃが、あんな簡素な道具、職人なら誰だって造れらァ」
……彼なりに用心して受け答えしていたようだが……
ダウトだ。
その事を本人も理解したのか、俺の目線に気が付いた瞬間一筋の汗を流した。
「……もう分かってると思うけど、俺は君にこのナットを返しに来たとしか言っていない。昼の事件と何の関わりも無いなら、あの道具と聞かれても意味が分からなかった筈だ」
バックは何か言い訳を繰り出さんとしているのか、暫く口を開閉するもやがて諦めたように項垂れる。
六割ほどだった疑念は、たった今十割の確信へと変わった。
「どうして……どうしてレビンを狙ったんだよ」
レビンの事は正直好ましく思っていないし、バックともまだ顔を知っているだけの仲だ。
それでも俺は……この世界でたった数人の知り合いを助けたいと思った。こんな感情は、ただの偽善やお節介の類だと自覚していても。
「……そんな簡単に言うわけ、ねぇだろがッ!」
ぎりっ、と歯をかみ締めたバックは、近くにあるゴミの山から何かを取り出した。
「……ボウガンっ!?」
バックは俺に付けられているのが分かっていた。分かっていて、この場所まで来たのだ。
……成程、万が一の為、道具を隠していたこの場所に誘い出したわけか。
だが、スキルを使うまでもない。
「げぶっ……!?」
後頭部を思い切りポメルで打たれたバックは、短く叫びながら地に伏した。
「あれ……私やり過ぎちゃった!?」
「……やれやれ」
と、言いつつも、俺はユズリに向かって親指を立てたのだった。
最近クーリッシュにハマっている作者です。
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