19 逃げるは恥だが何とやら
「た、助かったぁ……」
地面にひれ伏し、喘鳴を上げつつ安堵の息をつく。
黒鳥を矢を掻い潜り、森を抜けても追い掛けられ、借りているエアロマシンに乗ったらもう安心……と思いきや、街の近くに行くまで追いかけられた。
「ま、まさかあそこまで増えてるなんてね……ギルドの至る所にカースベルグの依頼が貼ってあった理由が分かったわ……」
俺も彼女と概ね同じような感想を抱く。
簡単そうな依頼の割には高給な事にも納得がいった。しかしそれでも数が減っていっていないのは、やはり奴らの集団戦闘力の高さ故だろう。
それに、俺のスキルは一体一なら大抵の敵を倒せるが、多くの敵に一斉に襲われると後手に回ってしまう事も知れた。
やはりスキルだけでなく、俺自身がシステムじゃない本物の技術を上げていかねばならないのだ。
「……それにしても、これからどうする? また行くにしても、何かしら対策を立てなきゃ」
俺達は殺した数で言えば十を上回っていただろうが、肝心の提出素材である右羽を手に入れてなかった。
逃げる事に夢中だったので一切拾えていないが、俺には一つアテがあった。
「ちょっとまって……剣招来」
呟くように唱え、黒く赤き宝珠を携える幅広剣を魔法陣から出現させる。
そして、目の前の時空を五十センチ程切り裂いた。
何してんだという目で見られるが、気にせず時空の裂け目に左手を突っ込む。
目的の物を得る為まさぐっていき、それっぽい感触を得た瞬間強引にもぎ取った。
「よし、取れた!」
俺はカースベルグの右羽を取り出して見せた。
「えっ、そんな事出来たの!?」
「ふっふっふ……俺も驚いてる」
ずるっ、と肩を落とすユズリだったが、試しにやってみたら意外と出来ただけという話なので間違いは言っていない。
「まぁ、ここに道具とか入れて保存。とかはムリだろうなぁ……。少しの間だったらいいけど、長く入れとくと粒子まで分解されて吸収されちゃうからさ」
あくまでスキルセット時に頭に入ってきた情報を元にした推測だが、外れてはないだろう。
だが……いくつかの作品で読んだ“収納”スキル。その便利性を改めて思い知った。
俺も欲しいなぁ何かの拍子に手に入んないかなぁ、などと思うが、何となくこれから先も入手出来ない気がする。
「でも、ちゃんと十体分収容されてるの?」
彼女の言葉に思考を戻し、再び小さめに次元を開き手を突っ込む。
そこから幾つかの素材を出すが……。
「……すみません。九体しか居ませんでした」
明日もあの森に行くことが決定し、二人して絶望するのだった。
「……気を取り直して、ゴハン食べに行こ。観光も兼ねて色々見て回ろうよ」
「……だね」
昨日は宿を見つけてから剣の訓練しかして居ないので、まだこの街の探索らしい探索は出来ていなかった。
項垂れながらも首肯し、二人で肩を並べ街へ赴く。
郊外から内側へ近づくにつれ、街は賑わい華やかになっていった。基本的に祭りにある屋台のような店が立ち並び、色々な場所に名物なのだろう風車が置かれている。
それを見て俺達は、少しだが落としていた気を持ち直す。
「凄いなぁ。こんなに人がいるなんて」
ヨーロッパ中世辺りでは、確か人が多く集まる場所は極小数だったと記憶している。幾つか理由はあるが、階級制度だったり交通手段だったりが主な理由だ。
「ここ、風の都は世界でも有数の観光地だからね。最近はカースベルグが頻繁に人を襲うから、これでも観光客とかは少ないみたいだよ」
へー。と口の中で漏らすと、何やら演説でもしているかのような声が耳に入ってくる。
そこへ目をやると人集りが出来ており、何やら賑々しい。
「なんだろアレ」
「行ってみる?」
ユズリの意見に賛成し、広場らしき所へ向かう。
数メートル歩いただけでその光景が鮮明に見えてきたが、肝心の演説者が後ろを向いていた。
俺は好奇心だけで進んでいき、人々の隙間を塗って中央に躍り出る。
すると、丁度そのタイミングで木箱に乗った演説者がこちらに振り向き……。
「「あーっ!」」
俺達は互いを指しそう叫んだ。
今日ジャ〇プ発売日だと知らずに普通に買い忘れた作者です。
お願いなのでチェ〇ソーマンとかのネタバレを感想欄にぶち込むみたいなイタズラは決してしないでください。
それはそうとこの作品が面白いと思った人はいいジャン……じゃなくて評価とブックマーク宜しくお願いします!




