1話
――アンプローヴァ歴1129年、ティエサンテ大陸の僻地にある魔王城にて、勇者ダニーラは歴代最弱と言われる魔王シーザーを追い詰めていた。
歴代最弱と言うのも、力を持っているにも関わらず魔王は僻地に引きこもり、侵略に一切力を使わなかったからだ。
それでも持っている力は強大と言われ、人間からするといつ爆発するか分からない核爆弾のようなものであった。
「シーザー!お前はここで倒す!」
「愚かなものだ。私が居なくなると困るのは貴様らだぞ。」
「そんな戯言を!だが――」
ダニーラはティエサンテ大陸の覇者――小国の集まりではあるが――神聖アンプローヴァ帝国からの刺客であった。そのため装備や資金は潤沢であった。
それに対しシーザーはボロボロのマントと自慢の魔剣ダンスレイヴのみであった。
「――大丈夫か?そんな装備で」
「大丈夫だ。貴様を相手にするなら問題ない」
そんな皮肉が飛び交う最中魔王シーザーは、側近である悪魔カレロフが近付いてきたことに気付いた。
「魔王様、準備が完了致しました。」
「そうか。では征くとしようか、私達の楽園へ」
――そう言うと魔王達はマントを翻した。そのまま玉座へ向かい、座るとともに魔法陣を展開した。
「何をする気だ!」
「貴様に教えるようなことは無い。だが、また会うことになるだろう。さらばだ勇者ダニーラ」
シーザーは微笑しつつそう言い放った途端、ダニーラの目の前から忽然と姿を消した。
*
「はぁ…またバエラディーン大陸に戻ってくることになるとは。カレロフ、これからも頼む。」
「わかりました魔王様。ですが、これからどうするので?」
「とりあえず住むところの確保かな。」
「いえ…それはわかっておりますので今後の方針の方を――」
「ああ!すまない、そっちか。そうだな――」
手を出さないようにしていたのに乗り込んで来たのだからこちらが手を出しても文句はないだろう。
「――世界征服、かな?」
そう言った途端カレロフは涙を流しながら一言、呟いた。
「…これからも…お仕えします」
「だが戦闘はできるだけしたくないなぁ…」
「はぁ…そんなこと言ってるから攻め込まれるんですよ!しっかりしてください魔王様。」
「ああ、これからは自分の責任は取ろう。」
「お願いしますよ?あなたに勝てる者は存在しないんですから。」
そう話しつつも二人は住むところ見つけるため、先代の魔王城を探し始めるのだった。
ここ、魔王が戻ってきたバエラディーン大陸はティエサンテ大陸から海を隔て遥か北にあったが、魔王の住む暗黒大陸と言われるまで時間はかからなかった。
人間は眠れる虎を起こしてしまったのだ。
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