新しい登場人物はアホの子だったですか?
新しい子が登場します。アホの子だと思いますか?
魅力的な子だと思いますか?
生徒会室の扉を開けると、中には一人の女の子だけがいた。何やらパソコンに向かって作業しているので、発注作業でもやってるのかもしれない。さあ、ここで私が彼女についてなにがしかを述べることによって、彼女の性格付けがされることになる。それが物語を書くという宿命である。いずみではないが、アホな子とか俺好みだとか性格付けすることで、ストーリーの中で果たす役割も決まってしまう。だが、大丈夫。彼女には彼女の世界があって、客観空間を我々は共有しているだけだ。他人として人間と人間が出会うというのは、なかなかすごいことなのである。
藤崎綾希が彼女の名前である。1年生で我が妹のののかとつるんでる女の子だ。基本的にののかは精神的スペックが高いと思われるので、それなりにそれなりの子だ。とお茶を濁しておけば、後でまた性格付けもやりやすかろう。というか、扉を開けてから難病でこれだけのことを私は書いたんだろう。純粋持続万歳。
「こんにちは、会長」
と藤崎が挨拶をしてくる。視線はパソコンに向けたままである。これは私が決めたわけじゃない。彼女はそういう子なのだ。どういう子かはだんだん明らかになるに違いない。
「早いな、藤崎。神宮とは一緒じゃなかったのか?」
「由紀奈なら、今日は日直だから相当遅くなりますよ」
日直だと遅くなるというのは、わが校の特殊事情もある。それについてもおいおい触れていくが今は本題ではない。神宮というのはやはりののかとつるんでいる、というか、この藤崎と神宮とののかの3人が仲良しグループなのだ。そして、神宮もまた生徒会役員であり、書記を務めている。藤崎は庶務だ。
「藤崎がやってるのはなんだ?」
「剣道部と野球部の予算がどう使われてるかチェックしてますね。」
「今日の議題を聞いたからか?」
「そういうことになります。」
とまあ、気の回る子だったりする。準備万端の藤崎、アドリブの神宮と言ってもいい。ののかは、ありゃ哲学者だ。ののかがいると、この3人の会話はホントにカオスになるから楽しい。
「そういえば、ののかは来るって言ってたか?」
「えーと、図書委員の仕事もあるし、今日の話は会長から直接聞くって言ってたに300ゴールドです。」
「誰と賭けしてるんだよ? そして、割と安いな。」
「由紀奈とです。1ゴールドは時価3億円ですよ。」
「また、適当なことを。」
「言うまでもなく冗談なので、お気になさらず。とにかくののかは来ませんよ。」
「まあ、ののかは役員ってわけじゃないしな。」
ののかは確かに役員ではないのだが、藤崎と神宮が生徒会に入っているのには、ののかがその大きな理由となっている。なぜなら、最初に役員になるはずだったのはののかで、そのお仲間と言うことで、一緒に入ってきたからだ。役員のポストの数など決まってないので、3人とも入れるつもりだったのだが、ののかは有名無実よりは名より実を取ると言って、出入り自由を選択して、役員ポストは用意してないだけなのだ。
隆哉が会計として入っているのは、俺が頼み込んだからだし、いずみは選挙活動している時に知り合って意気投合した感じである。俺が当選したのは、いずみの応援があったからというのも否定できない。
「みんなそろってから会議にするか?」
藤崎となら、真面目な話はとことんできるので揃うのを待つ必要ないと判断して尋ねてみた。
「調べものしながらでよければ始めちゃいましょう。」
とまあ、こうなる。
「議題は、野球部の雨の日の練習場所の問題だよな。」
「そうです、そうです。あの強い野球部の部長からの願い出がありました。」
「で、藤崎は剣道部を調べてるみたいだが、それはなぜだ?」
「剣道部は逆に雨の日は蒸すという理由で参加人数が減るって聞いたことがありまして、調べたらなんか部室にけっこうな除湿器置いてますね。」
「除湿器を置くのはかまわんが、参加人数が減るってのは気になるところだな。そこに目を付けたってことは、剣道場を提供しようって感じの話か?」
「剣道部の練習場所を雨の日は変えてもらうなんてのは無理なんですかね。」
「いささか、突飛な発想ではあるが、問題へのアプローチ法の一つではあるな。」
「バスケ部やバレー部なんかは、あんまり動かしてほしくないだろうな、と思ったので、最初に挙がりそうな体育館でないところを検索しているのですよ。」
「なるほどな。」
発想法の違いというか、藤崎にはこういう正攻法でない攻略をしてくることが多い。それを意見として整えてから発表するときの説得力は、なかなかのものがある。今回は準備期間もないし、藤崎本人も本命案が見つかってないのもあって、準備万端ではないようであるが。
それでも、一番、目を向けやすい体育館以外から検索していくというのは、問題をうまくかわしていく大きなヒントになる。
「練習にこだわらないのでしたら、視聴覚室を解放してあげるっての手ですよね。」
「ミーティング用にってことか」
「あとはほら、イメージトレーニングも大事じゃないですか。そのためには視聴覚室の資機材は役に立ちますよ、きっと。それも調べてみようと思ってるんですが。」
この藤崎にかかると、問題はどんどん他の問題に置き換わっていくから面白い。視聴覚室の解放も管理の先生との調整とか考えるとなかなか難しいところもあったりする。そして、要望は野球部の部長から出ているのであって、監督の先生からではないのだ。それでも、問題を直接解くやり方ではないところが藤崎の存在価値の高いゆえんだ。その上、必要とあればそのルートはしっかりと調べ尽くしてくれる。
まあ、その気になれば廊下や階段を占有させるだけでも、トレーニングはできるようになるのかもしれないが、雨の日に限らず、「廊下は走ってはいけません」なんだよな。
藤崎はパソコンに向かったまま、学内の資機材をチェックしているようだった。こういう地道な作業をするのと、発想が飛んでるのが同居しているのがこの藤崎綾希という子だ。さあ、新しい人間像を描いてみたぞ。まだまだ潜在的な可能性を残しているからな、この藤崎って子は。
とりあえず、書いてみて、少しずつ編集していこうかなとも思ってます。今回なんかは哲学の話はほぼありませんね。むしろ扱ってないですが、問題は一つ解決すると次の問題が発生する、の真逆の発想で書いてますね。