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世界を創作する小説 -小説とは思考実験である-  作者: 長瀬 綱紀
破 -没原稿-
8/10

こんなに早くオチがきていいの?

いずみさんとは同じクラスなんですね。知りませんでした。

「んー、ちょっと冗談が過ぎたね。ごめんね」

朝の挨拶をして教室に入ると、いずみからそう声をかけられる。なんのことだ?

「ほら、あなたが夢落ちのこの世界を満足して書き終えるって話よ。」

ああ、この小説を書き始めてから、一番重いテーマになってたことだ。

「冗談だったのか?」

思わず尋ねる。いずみはちょっと目を合わせることのできない様子でとまどって言う。

「あのね、あなたが書かなくなったらあなたの世界が終わるわけではないのよ。ただ、この小説は確かにあなたの世界なの。そして、私はそれについては全部知ってはいるわ。筆をおく日が来ることも確かだけど、夢落ちって言ったのは語弊があって、あれはちょっと申し訳なかったかなと。ま、間違ってはいないのよ。でも、筆を置くって死ぬってことと解釈しちゃうわよね。それは違うわよってことね。それに乗っかっておとといは隆哉に相談させるようにたきつけちゃったし。」

いずみにしては、とまどったような、早口で俺に説明してくる。

「ああ、まあ、その問題に関してはどうとでもなるんかなとおれは思い始めていたから、いいんだけどな。ただ、俺がいなくなった後の世界のことを考えたら、残される人のことを思ってやりきれなくはなりそうになっただけだ。」

俺も俺で変な答え方をした。

「うん、それは昨日話してたことよね。一日かけてそのことを考えてくれたのは、無駄なことでも悪いことではなかったはずなの。それだけは確かよ。でも安心して。あなたもあなたの周りも、あなたが死んだりすることで傷ついたりはしないから。普段通り、生きればいいのよ。」

普段通り生きる、とはまた、大げさな表現だが、俺がいずみのこの言及で少し肩の荷が下りたのは確かだ。肩の荷も下りたし、多少はあった死への覚悟みたいなものも一緒に落ち着いた。

「ごめんね。」

「いや、かまわない。」

「あなたもたいがい強いわよね。」

「見極めが早いだけだよ。」

ああ、もうこの話は終わりだ。散々引きずっておいてどうかと思うが、終わりだ。ただ、恐らくはこの設定はどこかで使われる気配はいずみの口調からは感じられる。直観だ。直観ってなんだろう。俺の好きな解釈なら、隆哉に教えてもらったベルクソンの純粋持続と関係してくるんだが。

ともかくこんな濃い話を朝からするのは珍しいが、まだまばらな教室で俺たちの会話に注目している人間はいない。

なんか、いずみにしてはしおらしい気はするが、すぐに立ち直るだろう。

「今日の生徒会は何かあったかしら?」

「雨の日、グランドが使えない日に体育館を野球部が使用したいという話が持ち上がってたから、あれの解決を話し合うことになるかもしれないな。」

「じゃあ、生徒会室にとりあえずは集合になるわね。」

「そういうことになる。」

俺が頷くと、いずみは少し意地悪な表情になって言う。

「お気に入りのキャラが出てくるといいわね。」

ああ、やっぱり設定使いたいのか、この子は。

「はいはい、アホな子はどうするかわからないけど、お気に入りは登場してもらうよ。」

「隆哉のこと?」

「わかってて聞くな。」

「んー、まあいいわ。じゃあ、今日も一日よろしくね。」

「ああ、こちらこそよろしく頼みます。」


話が一段落して、いずみは自分の席の方に戻っていき、登校してきた友人と話を始めていた。

今朝の彼女は平常運転、よりは少ししおらしい気はする。でも、清楚系とは認めない。

今回は哲学はあんまり入ってません。いや、全然入ってない。

入れようとするなら、直観のところかと思って申し訳程度に名前を上げましたが、

直観はもっともっと面白いものだと思うので、また取り上げたいと思ってます。


#ベルクソン

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