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≪1-08≫

予定を変更して視点違いを入れて見ます

3話続きます


~アレックス視点~


花の数よりも植え込みや樹木が整然と植えられた池の畔の庭園で顔を青ざめて強張らせた笑みを浮かべている我が妹は、他の令嬢たちならば喜ぶであろうこのシチュエーションで固まって動けずにいた。


この国の見目麗しい王太子殿下にエスコートの手を差し出されているという一枚の挿絵のような美しい場面で・・・


僕は心の中でつい殿下を応援してしまった


この表面上はとても友好的で優しい王子様でありながら、実はとても不器用な未来の主で大切な友人を・・・


僕はアレックス・レーヌ。宰相も勤めるレーヌ侯爵家の嫡男で将来は僕も父上のような国王を支え、政を行い貴族たちを纏め国の発展に邁進していくそんな父のようになるべく幼少の頃、それこそ物心つく前より勉学に励んでいた

ただ、勉学に励むだけでなくまわりから僕自身が如何見られているかを意識して人当たりの良い、高位貴族の子息として好感の持てるそして付け込まれるところのない完璧な常識のある行動を常に心がけた

僕の家、レーヌ侯爵家は良くも悪くも目立つ存在だった

宰相の父を持つことで幼い僕にも政治的に繋がりを持ちたい人たちは近寄ってきた、さらに母は若い頃から社交界で百合の貴婦人といわれる存在であり、男性は勿論同性である女性からも憧れの存在だった。

それは、父と結婚し僕ら2人の子供がいてもその美しさは衰えることなく未だにその2つ名は健在だ

そして、此処最近我がレーヌ侯爵家の話が出ると必ず話題にされるのが妹のシルヴィアのことだった


僕は5歳になる前まだ4歳のときに初めて母上と一緒に他家のお茶会に参加した。

規模は小さなものだったが同世代の子供たちが集っていたことで大人の退屈な話から離れて迷路のように植えられた樹木の間を遊んでいた。

その時にふと気がつくとシルヴィアは年上の令息令嬢に取り囲まれ瞳の色のことを揶揄われて大きな瞳に涙を滲ませていた。

今思えば3歳の幼子が、取り囲んでいた子供とはいえ10歳くらいだったと思う、に取り囲まれるのは相当な恐怖だったと思う。

僕は直ぐに母上に助けを求めて母上の手でシルヴィアを助け出した。

その日の晩、シルヴィアは熱を出したがすぐに引いて熱が下がるとあのお茶会のことをケロッと忘れていた。いや、何があったか覚えているけどあのときの恐怖を忘れてしまったようだった。

シルヴィアの瞳は常人とは違い、色彩が変化する特徴を持っていた

瞳の色が変化する、それは王家から降嫁した王女様だった曾祖母の特徴をそのまま受継いだものだという。

この話を他家ですればみんな不思議そうな顔をするのだが、僕からすれば産まれたときから見ているシルヴィアはそれなので特に不思議に思うことはなかった。

しかし、貴族社会は辛辣で少しでも攻撃材料があればそれを突かずにはいられないらしい。

子供はその傾向が顕著に現れる。

人と違うものに憧れや羨望があるのにそれを認めず、貶めることで優位に立ちたいのだろう。


あの状況を見ていた僕としてはシルヴィアが、あのときのことをそれほど尾を引かないのは宰相であるレーヌ侯爵の娘として心強いと思った。

その心根の強さがあれば王妃にだってなれるなとそのときは思っていた・・・よく考えれば3歳の幼女がそんなことあるはずもないのに

しかし、その日から両親のシルヴィアへの溺愛が始まった

それまでは一般的に優しいがやたらめったら褒めたり物を買い与えたりすることがなかったのに、両親はシルヴィアにとことん甘くなり、何かにつけて誉めそやし、欲しいといったものは買い与えた。

その両親の行動に追随するように屋敷の使用人たちもシルヴィアを甘やかした。

少しのことで褒め称え、普通に授業に出ただけでご褒美と称しておやつや食後にデザートを出したりしていた

そんな甘やかされた状態で成長をすればシルヴィアは我侭で傲慢な娘に成長するだろう

僕はそう思いながら、どこか冷めた目でそれらを見て日々を過ごしていた。

あまり関わらないでおこう、僕だけでもシルヴィアを甘やかさない存在であるべきだと、どこかシルヴィアを甘やかす両親を軽悔していたのだと今思えは酷く驕った考えを持っていたものだ。

もっとも、その考えは8歳を境に変わっていった


お城から王太子殿下のご学友として登城するように通達が来たのだ

父上からは何れはそうなるだろうと言われていたので、僕自身は何の感動もなかったが両親、特にシルヴィアの喜びはすごかった


「お兄様すごいです。王太子殿下とお友達になるのですね」


普段は碧い瞳をキラキラと黄色に近い明るい緑に輝かせながら満面の笑みを浮かべてすごいと何度も言うシルヴィア

その笑顔は可愛らしく、今まで碌にシルヴィアと向き合っていなかったことを思い出した。

それまでもちょこまかと僕の周りに纏わりつくこともあったがあまり相手をすることがなかった。

久しぶりに見たシルヴィアは僕が思っていたほどの我侭や傲慢さはなかった

我侭を言うのは両親だけと心得ているようだし、使用人に対しても酷い行いは見て取れない

ただ、両親から口癖のように言われているのだろう、その不思議な色彩の瞳は王女様と同じで高貴な証拠なのだと胸を張っていた

その瞳は自身をかざるアクセサリーかのような言いようなときもあって、そこについては傲慢さが出ていた。

そのうち王太子殿下には自分こそが相応しいと言い出した。

まあ、それはおそらく家格の上でわがレーヌ侯爵家は婚約者候補上位であることは間違いないだろうと思う

ちょっとした傲慢さは可愛らしさもあって、それから僕は両親ほどではないけどシルヴィアを可愛いと思って優しく接するようにした。

実際にシルヴィアはとても可愛いと思う

両親そろって眉目秀麗なのだからシルヴィアも可愛らしく大人になれば可憐な美しい女性に成長するだろう。

そういうと僕もそうだろうと思う。実際に僕の周りには年齢の近い令嬢から僕と10歳は離れているであろう令嬢まで寄ってくる。

王太子殿下のご学友となった僕は、王太子殿下と一緒にお茶会やちょっとしたパーティーに出ることが増えた

僕はシルヴィアが言ったように王太子殿下と友達になっていた




王太子殿下のご学友は最初20人ほどいた。それはすべてご学友()()として集められたのだ

その殆どは、殿下と年が近く爵位が伯爵以上で貴族令息たちだった。この最初に選ばれたからといってもそのあくまでも候補だ。確かに何れは側近になり、王太子殿下が国王になった暁には重責のある役職につけるだろう

全てのものがつくかといえばそうではない

その証拠に、1週間経ったときに2人登城しなくなった

授業について来れないのだ

学問だけでない、剣術、素行も審議され一定の基準に満たされなければ、即登城取りやめとされる

親の期待を小さな背中に受けて王太子殿下の傍でご学友として選ばれたのに脱落していくもののほうが多かった

結局、殿下が10歳まで残ったのは僕と騎士団長子息のオスカー・オルグレンと魔法師団長の子息ブライアン・ダルトン、3人だけだった。

気がつくと僕たちは驚くほど気が合った

性格は全くといって違うのにだ

オスカーは、素直な性格をしている

思ったことを直ぐ口に出すところは貴族としては致命傷だと思うが悪いやつではない。

良くも悪くも素直なヤツだ

ブライアンは、僕と同じ年で落ち着きのある言動と行動をしている

ただし、それは表向きで実際は子供みたいな悪戯が好きなヤツだ


そして、数年を一緒に過ごしていくうちに王太子殿下、フェリクス様の性格も表立ってではない本性のほうも分かってきた

というより、あかしてきた

僕ら3人が残ったある日、殿下の私室に初めて招待された

そこは奥宮にありご学友()()だったときは、入ることが許されない場所だった


「やあ、君たちが正式に僕の友人として()()認められたよ」


私室に通され広く簡素ではあるが調度品は最高級のものを揃えている室内のソファーに促されて座ると殿下は

僕らの前に立ち見下ろす形で口元に微笑みのそれを作って言った


微笑みに見えるだけで笑っていないな


その顔を見た僕が思ったのはそこだった

そして、()()認められた友人、つまり殿下自身はまだ認めていないということだ

僕としては時間が何れ父と国王陛下のような関係・・・私室で酒を酌み交わして格式ばった話し方でない親しみのある粗雑なもの言いができる関係を築きたいとは思っているが、その領域に達するには一朝一夕で出来るものでないことは容易に分かっている

だから、時間をかけて信頼をしてもらえる関係を築けるようにしようと思っていた


「さて、僕としては君たちを数年見てきたけど分かってるようで分からないんだよね、特に君」


そう言って殿下は僕を指さした

その顔は優雅に微笑まれているけどこの部屋に入ったときと同じくそれは微笑みの形を取っているだけでけして機嫌がよくてでないことは変わっていない


「まあ、僕としては折角国が誂えてくれたオトモダチを無碍にするつもりはないけど僕が友達として接するかどうかは君たちしだいだよね」


そう言ってやっと、ソファーに腰掛けた

その顔は相変わらず微笑みの型を取っており心の中では何を考えているのか分かりづらかった


「僕に認められるように此処では、この部屋にいるときこの4人でいるときは少し砕けた物言いも許そう」


そう言って、ぐっと両腕をのばして伸びをした。


「僕と友達になりたければそうしたまえ」


にやにやと先ほどまでの微笑とは違い、悪戯を仕掛けてくる子供のような笑い方だった

なんというか、この殿下はもしかして・・・


「・・・・・・・・・・つまり、俺らと殿下も友達になりたいって事でいいんですか?」


早速、素直な性格のオスカーは殿下が言った言葉を額面どおりに汲んで恐る恐るではあるが少し砕けた言葉にして聞いた

それにしても、率直過ぎやしないか?


「・・・・・・いやなら、・・・別にいいが・・・・・・」


オスカーの率直過ぎる言葉を聞き少しふてくされたように眼を逸らす殿下

これに僕は芽生えたもしやが確証に近くなる


「嫌ではないですが、我々が友達面したと後で気が変わられて罰せられては困りますから。不敬だと言われでもすれば年端のいかない僕らは家に迷惑をかけることになります。きちんと言質をいただきたいです」


ブライアンが至極真面目に畳掛けてきた

それについては僕も同じ考えだった。しかし、もしも殿下が僕の芽生えたもしもの様であるならばこの後は想像できた

僕は殿下の次の行動に眼を光らせた


「それはない!・・・・・・ないが、だが友達になれるかどうかは分からないじゃないか、いや、違う、そうじゃなく・・・」


ブライアンの冷静な言い分は恐らく殿下の中では予想しなかったのだろう

今まで殿下の周りには殿下に気遣い否を言うものはごく僅かしかいない、それも同年代になれば全くいなかっただろうでこのように直ぐに色よい返事がないことは想定外だろう

そして、僕のもしもは確信となった

しかし、これは厄介だなあ

恐らくは教育の賜物で上に立つものとして表立っては良いがボロがでれば致命傷だなぁ


「殿下、僕らは殿下とこれから信頼関係を築いていき友達になりたいと思っています。

それは、命令されたからではないです」


僕の言葉に不貞腐れていた殿下が此方を向いた。


「殿下がこれから僕らと友達になる一歩として砕けた言葉や態度よりも名前で呼ぶ許可をいただけないでしょうか?」


その言葉に殿下はパッと嬉しそうにでも直ぐに気がついて取り繕うように澄ました顔をして許可しようといった。

僕とブライアンは、薄々この厄介な未来の主の本性に気がついたが、元来、素直で実直おバカな脳筋オスカーはよくわかっていなかった


「本当か!じゃあ、フェリクスって呼んでいいのか!」


いや、だから君は素直すぎるだろ。そして、せめて様はつけろ


「オスカー、君のその素直なところは好感が持てるがもう少し考えてしゃべろうか」


ブライアンもそう思ったらしい


「そうだな、せめて様はつけろ」


僕らがオスカーを窘めているのを殿下は茫然としていた

その顔は僕らが見つめていると徐々に赤くなり何かを言いたくて口をはくはくと動かすだけで言葉が出てこなかった。

その顔を見て、ん?っとオスカーも流石に殿下の()()()()()に気づき始めたらしい

僕らはその言葉を我慢強くまった

僕の思うとおりの殿下の性格ならば、たぶん・・・


「いい!そのままで。この部屋の中なら誰もいないときなら様もいらない!

トモダチとはそういうものなのだろ!」


殿下の、フェリクスは顔だけでなく耳まで赤くして勢いのまま僕らに言った

本で読んだだけだけど・・・って小さく呟いて

本当に・・・不器用な人だ


僕らは、たぶん殿下と僕は似た環境の教育を受けたと思う

人から如何見られるか。

その事を第一に念頭において行動することを義務付けられた環境だったはず

それは、侯爵子息の僕よりも王太子のフェリクスのほうが厳しかっただろうな

だから、こんなに素直でない少し捻くれた性格、本性になったのだろう

僕は、それがかわいい友人で手のかかる弟ができたようで嬉しさをその時に感じた

僕はこの未来の主の無二の親友になれるようにそばにいようと真っ赤な顔をしているフェリクスを見て思った


「ではフェリクス、仲良くしようね」


僕は、家以外では久しぶりに取り繕わない笑みをフェリクスに向けた

普段は年齢よりも大人びた、将来王になるこの人が素直になるということが上手くできない不器用な人だとこの場にいる3人だけの秘密になった




読んでくださりありがとうございます

フェリクスのことを此処まで書くことがなかったのでよく分からないでいたと思いますが、不器用男子です。でも、人前だと完璧王子様でいようと頑張っている男の子です

アレックス君も嫌いにならないであげて下さいね



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