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≪1-07≫




庭以外にも意識を向ければ妖精が見えるようになってから早、お茶会当日です

その日が近づくにつれてだんだんと、顔が暗くなっていくわたくしを元気づけようとお父様お母様、お兄様も、屋敷の使用人一丸となって盛り上げてくださいました


お父様お母様は着ていくドレスを新調してくださり、お兄様は時間ができるとお庭のお散歩を付き合ってくださり、使用人はわたくしの大好きな花を飾ったり好物が食卓に並んだり何かにつけてお菓子もいただきました

嬉しいけどお菓子は気を付けないと折角、新調したドレスが入らなくなったらいけませんから

新しいドレスは、柔らかなクリーム色でシンプルなデザインだが花の刺繍がされた可愛らしいもの

ここ最近のわたくしのドレスの中でも一番のお気に入りになった

それに合わせた金細工の花を模したネックレスや耳飾りブレスレットと身につけて、サラ達、メイドが気合い入れて髪も可愛くしてくれた

わたくしの銀髪をハーフアップに複雑に編み上げてパールを飾ってくれた

でも、それを見てサラがなんだか物足りないというから、わたくしのお気に入りのリボンを結んでもらいました

光沢のある黄色リボンにわたくしの瞳のような青い糸で薔薇が刺繍されたものです

刺繍は小さなものだからドレスともいいかんじで合わせられた

すべての支度が整って玄関ホールにおりていけば、家族、使用人総出でべた誉めされて少し恥ずかしかったです

お兄様は、妖精のようだと抱き締めてきました

あれ?そんなに激甘な人だったかしら?

まあいいか、推しとの抱擁で王宮にいく力がわいてきたわ


さて、武装完了

いざ参らん!

っていうか、できたら目立ちたくはないんだけど・・・ムリだよねぇ

お兄様と一緒に行くだけで注目の的ですもの

はぁ

さて、気乗りはしないけど頑張りますかぁ

馬車に乗り込む前に空を見上げれば、可愛らしい風の妖精が手を振っていた

わたくしも小さく振り返して乗り込んだ


よし、頑張ろう!




「レーヌ侯爵様のご子息でしょうか?」


わたくしとお兄様は、王宮について並んで会場の庭園までの広い廊下を歩いているとお城の侍女さんに声をかけられた


「そうですが、なにか?」


お城の侍女さんだからあまり警戒はなくお兄様は返事を返されました


「王太子殿下よりお茶会が始まる前に話がしたいとのことで私室まで案内するよう言いつかってきました」


「えっ、今から?本当に殿下からの使いで?」


侍女さんの言葉にお兄様は訝しそうに顔をしかめた

お兄様はフェリクス殿下のご学友で側近候補なのだから呼ばれても不思議ではないのですけどね

どうしたのでしょう?


「殿下には昨日、お茶会の間はシルヴィアと行動を共にするから殿下のところには顔を出さないと伝えていたのに・・・」


あぁ、わたくしのためにお兄様は殿下の側を辞退してくださったのですね

お兄様の立場を慮ると申し訳なく思います


わたくしの側を離れたくないお兄様と殿下からの指示を遂行したい侍女さんがちょっと押し問答しています

そうよね侍女さんとしては連れて行くのが仕事ですもの。

王宮の侍女さんはかなり困ったようで、どうしてもお兄様をつれてくるように言われているようだった


「お兄様、わたくしは大丈夫ですわ

庭園に先に行っています。隅の方で大人しくしていますから・・・」


「そんな野獣達の檻にかわいい兎を放り込むようなことできないよ!

そうだ、ヴィーも一緒に行こう!」


ええ!!!

それは嫌だ

絶対嫌だ

ただでさえ近づきたくないのに、自ら火の中に突っ込んでいくつもりはございません

それならまだ、会場のお兄様曰くの野獣の方がましですわ


「申し訳ございません

殿下の私室には、ご子息様のみ呼ばれておりますのでお嬢様はお連れできません。」


侍女さんがすまなそうなしながらも毅然とした声で告げてくれた

ありがとう、それでいいんですよ

そうですよね、呼ばれてもいない人がホイホイ王族の私室になんて行っちゃあいけません!

そんなことしたら王宮の警備に問題が生じます

わたくしのことなどおいて、殿下のところに一人で行ってくださいませ

しかし、わたくしがいくら心で思っていても、最近、過保護になってしまったお兄様は納得してくださいません。

もう、わたくしが一緒でないと行かないの一点張りで侍女さんは本当に困ってます

わたくしは行きたくないから侍女さんの応援を心密かにしておきます


「それでは私室近くの東屋でお待ちいただくのはいかがでしょうか?」


おそらく相当苦慮してひねり出した折衷案だろうを侍女さんが言った

私室近くならあまり人の行き来がないこと、東屋も廊下や回廊からは影になっていて誰がいるかわからないからとのこと

お兄様はいまだに迷っておられるのですがここでさらに押し問答続けていて殿下本人が現われでもしたら大変です

とっとと行ってきてください


「わたくしそこでおとなしく待っていますわ」


そう言って微笑めばお兄様も仕方なく了承をして、侍女さんもほっと胸をなでおろした

お兄様とは別れて、わたくしはその東屋へ案内された

お兄様は殿下の私室は通いなれていて案内は不要との事で早く戻ってくるから待っていてねといわれ、何度も振り返りながらいかれました。


「あそこに見えます回廊の先に王太子殿下の私室がございます。

入口には衛兵が見張っており許可されたもの以外はその先には行けません。

お嬢様の兄君様は、常時許可をいただいておりますので行き来は自由ですがお嬢様は許可が必要です。

このあたりは、人通りもあまりございませんので此方でお寛ぎ下さい。

何かございましたら衛兵に伝えておきますので兄君様への伝達は可能です。」


わたくしが東屋のベンチに腰を落ち着かせてから侍女さんは伝えるべきことを教えてくれた。

侍女さんの指差す方の回廊には等間隔で衛兵が立っていた

なるほどその先が王太子殿下の私室、恐らく王族の方々の私室もあることから警備は厳重であるわけですね

いいですよ、まったくもって其方に行くつもりはありませんので。

侍女さんはわたくしが頷いたのを見て礼をして本来の仕事に戻っていった

わたくしのせいで余計な手間をとらせてしまって申し訳なかったです

東屋は、回廊脇の生垣と同化したようなつくりになっていてアイビーのつたが東屋の柱に絡みつくように生えていた

わたくしはそこから見える景色を眺めていたが暫らくすると何所からかすすり泣くような声がしてきた

最初は気のせいで木の葉の擦れる音だと思っていたけど、しゃくり声まで聞こえてきては気になってしまった

この近くで誰かが泣いているのかな?

もしも今日のお茶会の招待客で迷子にでもなっているのなら助けてあげたい

今日は、双子の王子様と王女様のお披露目を兼ねているのではじめてお城に招待された小さな子が迷子になってしまったのかもしれないし

そう思い東屋を出て声のする方へ足を進めると小さな池がある庭園にたどり着いた

その池の畔で2人の子供がしゃがみ込んでいた


「どうかされましたか?」


そっと近寄り声をかけた

なるべく柔らかい優しい声で・・・

泣いていた子は、驚いて反射的に此方を振りかえった


まあ・・・


振り返った2人は、双子の男の子と女の子で綺麗な癖のある金髪で瞳はとても綺麗な赤い色をしていた

それはもう綺麗な紅玉の赤い瞳

それが涙に濡れていたのだからキラキラして煌いていた


「・・・綺麗」


その思いは思わず口から零れていた

いや、本当に最高級のルビーのような美しさがあるんですもの


「・・・・・・お前はだれだ。この先は奥宮だぞ!」


男の子の方が立ち上がりまだしゃがみ込んで此方を見ている女の子を庇うように両手を広げて言い放った

強い口調で言いはしているが言葉の端は震えていた

そして、わたくしはこの金色の髪に赤い瞳に憶えが会った


攻略対象

第二王子 ジルベルト・マラカイト

今日、お披露目の第二王子だ

そして一緒にいるのは双子のダリア王女様のはず

母は亡国のお姫様という噂があるが定かではない

というのも、王様に連れられてお城に来たときは記憶が無かったというのだ

それでも儚げな美しい女性だったということだ・・・だったというのは、双子の王子様と王女様出産後、3日後に儚くなられたのだ

産まれて直ぐに母親と死に分かれた双子を不憫に思って王妃様が母として傍で育てた。

その双子は、この国では珍しい真っ赤な瞳をしている。

確か、わたくしより3歳年下で8歳になるはずです


目の前に攻略対象がいるというのもだが、まだお披露目はされていないが絵姿は貴族であれば知っていて当然この双子は王族なのだ


「わたくしはレーヌ侯爵家娘シルヴィアと申します。

王子様王女様とは知らず、いきなり話しかけました非礼をお詫び申し上げます」


慌ててカーテシーをした。

もう淑女教育のたまもので慌てたそぶりも見せないようにぐらつくことなく優雅にできたと思う


「レーヌ侯爵・・・アレックス様の?」


わたくしの挨拶にしゃがみこんだままだった王女様がぱっと驚き立ち上がってこちらを見た


「はい、アレックスはわたくしの兄でございます。

兄よりあちらの東屋で待つように言われましておりました。

しかし、このあたりまで入り込んだのはわたくしの独断でございます。

勝手にこちらに入り込みましたこと申し訳ございませんでした。」


兄の名前が出たことで王子様も最初の警戒を幾分か緩めてくださったようで少しほっとした。

しかし、ここは王家の私室に近い場所。

もしかしたら入ってはいけないところまで来ていたのかもしれない。

もしそれでお咎めがあってお父様やお兄様に迷惑をかけてはせっかくよくなった関係にまた罅が生じてしまう。

できたらわたくし一人のお咎めで済んでほしい。

ついでに、今日のお披露目に出なくていいとかならないかなぁ。


・・・・・・つい、本音が出てしまいましたね


「・・・そうか、それなら仕方ないが、その・・・ここ会ったこと誰にも言わぬなら許そう」


まだ幼い可愛いお顔の王子様、ジルベルト様は頬を赤く染められ先程の姫様を庇うようにした言い方よりは優しく、というより少し弱弱しく言った

この顔は・・・恥ずかしいという顔ね

恐らくはその顔に残る涙跡から察するに、隠れて泣いていたのはこのお二人かしら?


「かしこまりました。寛大なお心に感謝いたします。」


了承と感謝を述べて王子様をちらりと見ればわたくしが何も聞かずに了承したことにほっとしていた


「しかし、お許しいただいたとはいえ、わたくしはこの後のお茶会を辞させていただきます。

この場でお会いしましたわたくしの顔を見ればご不快に思いますでしょう」


泣いていた現場を知っているわたくしとお茶会の会場で会えば王子様も王女様もおもしろくないでしょう。

ええ、けしてお茶会をサボりたいからではありませんよ。

いいこと思いついちゃった、なんて思ってませんからね。


「え~、そんな!あなたが退出したらアレックス様も帰っちゃうじゃない!

そんなのいやよ~」


「そうだ、レーヌ侯爵家の令嬢を帰したと母上にわかったら僕たちが怒られる」


・・・・・・ソウデスカ、ダメデスカ、チッ


心の中でつい舌打ちしてしまいましたわ

いけませんね。淑女としてあるまじきです。

まあ、ばれてませんけど


「ですが、わたくしの顔を見ればご不快に思われませんか?」


わたくしとしては()()()()()()()()()()()()()をという意味で言ったのですがどうやらお二人は違った意味にとらえたようですね


「そんなことないわよ。とってもきれいだわ。ねぇ、あなたの瞳は一体何色なの」


「うん、さっきから思っていたんだ。青かと思ったのに緑色になるし、さっきは一瞬黄色になったよね。・・・今は暗い青だね」


しまった。

人前に出るときは感情の機微を出さないように気を付けていたのに、思わぬところで攻略対象に会ってしまったため顔に、というより瞳色に出てしまっていたのですね。

そう言われて、反射的に顔を隠して俯いてしまいました。

王子王女様を目の前にして大変失礼な態度だと俯いて気が付いたのですが一度下を向いてしまったら顔を上げることができなくなってしまいました。

ひぃ~どうしよう。さっき許してもらったばかりなのに、会って二度も許してなんて無理ですよねぇ。


「・・・・・・申し訳ございません・・・」


思わず震えた声が出た。

やっぱりわたくしは王宮と相性が悪いんです。

早く帰りたいです!


「レーヌ侯爵令嬢、・・・気にしないで、いや、違うか・・・」


「あなたも瞳色を気にしてるの?」


ジルベルト王子が言いあぐねていると、ダリア王女が近寄り不思議そうに尋ねてきた。


えっ?あなたも?って?


「わたくしたちね、今日のお茶会出たくなくて此処にいたのよ。

だってね、わたくしたちのこの瞳を見ていろんな人がヒソヒソ言うのわかってるもの。

・・・・・・禍々しいって、悪魔みたいだって言う人もいるの・・・」


ダリア王女はそう言いながら次第に言葉に涙がにじんだ声になった

ああ、そういえば物語の中で王女様は赤い瞳を悪し様に言われて傷つきジルベルト王子といつも一緒に人の目を恐れていたのよね


・・・わたくしにもその気持ちは痛いほどわかる。

というよりわたくしにしかわからないのではないのかしら?


「できたらここに隠れてお茶会に行きたくないねって話していたんだ・・・」


ジルベルト王子も辛そうに言いダリア王女の手を握っていた。


「わかります!」


思わずわたくしもお二人の手を握って口を開いていた。


「わたくしもできたら本日はご辞退したかったのです。

ただでさえ、人目を引きますのに以前、お城に来た際に無作法をしてしまって・・・わたくしはもう社交から遠ざかっておきたいのに・・・でも、出ないとお父様やお兄様たちにご迷惑が掛かりますし・・・」


「そうよね!わたくしもよ」


そう言ってダリア王女が手を握り返してくださりました。

同じ悩みの同士というのは心強いです

ダリア王女が今日は、出るのをやめましょうっていうのに頷きかけてしまそうです。


「それは・・・・・・できません。

それに王子様も王女様も、ご自身のお披露目ですから出ないわけにはいかないかと・・・」


わたくしがそういえば、ダリア王女は意気消沈しジルベルト王子はあきらめた顔をしていた。

うんうん、その顔わたくしも逃げ切れないと悟った時のチベットスナギツネの表情・・・なりますよね。

わたくしはともかく主役のお二人がそんな暗い顔をしていては印象が悪くなってします。


どうするかなぁ。

そういえば、妖精ってお願い聞いて下さるのよね。


「王子様、王女様、秘密は守れますか?」


ちょっと考えてからお二人に微笑んでささやいた。

子供って声を潜めて秘密っていう言葉に何故だかわくわくするのよね。

そしてそれは高貴なこの双子も当てはまるようで先程までの暗い表情が何かを期待するような顔にぱっと明るくなった

そしてカクカクと首を縦に頷いたのを見てから、この王宮の其処此処にいる妖精に姿を見せてくれるようにお願いをした。


わたくしにはもちろんお城に入ったときから妖精の姿は見えていた。

ただ、こちらから意識を向けない限りそう寄ってこない。

妖精は、自由気ままな性格なのだろう。

それでもわたくしのお願いに答えてくれた。

まずは鳥の羽の風の妖精がジルベルト王子の顔の前をスーッと軽やかに飛び王子の肩にも別の妖精がとまった。

ダリア王女様は驚いた顔をしたあと、花畑から飛んでくる蝶の羽をもつ緑の妖精に目を奪われていた


「わぁ、すてき!」


「すごい・・・僕、妖精はじめて見た」


ジルベルト王子の癖のある髪を引っ張って遊ぶ妖精をキラキラとした嬉しそうな笑顔で見詰める

光の妖精も火の妖精も愉しそうに寄ってきた。

ジルベルト王子とダリア王女の周りはキラキラとした妖精たちで囲まれ輝いていた

さっきまでの暗い顔は嘘のように喜び愉しそうに妖精を見詰める王子と王女。


「ウフフ、わたくしも、この妖精さんたちが何所にいてもついてくれるので今日は頑張って乗り切ろうと思ったのです。王子様も王女様も一緒に頑張ってお茶会に行きましょう」


そう言って沢山の妖精がお茶会の会場にもいますよと促せばまだ、少し戸惑いはあるもの渋々頷いてくれた。


「その代わり貴方もいて・・・わたくし、貴方の事を気に入ったわ。

ねえ、わたくしのことはダリアと呼んでいいわよ。貴方のことお姉様と呼んでもいい?」


「うん、僕も呼びたい!僕のことはジルと呼んでよ」


えぇぇ!それって・・・

ジルベルトルートでジルベルトとマーガレットが好感度80パーセント以上になるとダリア王女が『貴方のことが気に入ったわ。お姉様と呼んでいいでしょ』っていうのがある

それなのか!

そうなのか!

でも、ジルベルト様に呼ばれるって聞いたこと無い。

ちなみにジルベルトルートはシルヴィアは死亡エンドだ。

フェリクス殿下の婚約者のシルヴィアは認めないくせにマーガレットのことをお姉様と呼んだダリア王女共々気にいらず、2人が街にジルベルトのプレゼントを買いにお忍びで出掛けた際に暗殺しようとして失敗して逃走しようとしたシルヴィアは騎士を引き連れて追いかけてきたジルベルトに一刀両断で切り殺されるのだ

うん、これって王女暗殺容疑でしょ?

ゲームのシルヴィアってバカ?

それにしてもゲームのダリア王女は、ブラコンでフェリクス殿下でもジルベルト殿下でも最初は邪魔するのにダリア王女の親密度があがると王子2人の好感度もグングン上がりやすくなるのよね

言わばお助けキャラね


「わたくしなどをそのように呼んでくださるのですか?ありがとうございます、うれしいですわ」


うん。もうね、ゲームに出てこない幼い姿の8歳のジルベルト王子とダリア王女の可愛らしさはなんともいえないのよね。


「ありがとう、シルヴィアお姉様」


「今日は、ずっと一緒にいてくれないと嫌よ。お姉様」


ダリア王女なんて上目遣いでお願いされて、可愛くって悶絶モノよ

ああ、可愛い

抱きしめちゃ駄目かな?

やっぱ、不敬よね

わたくし、ショタでもロリでもないけどその人たちの気持ちちょっとだけわかるわぁ

ちょっとだけよ

ちょっとだけ・・・


「ジル様ダリア様、池の方にも人魚のような姿をした妖精がいますよ、って、あっ!」


なんとか心に芽生えた邪な心を抑えて池の方にもいる妖精を指さして其方に行こうとしたら

髪に結んでいたリボンが木の枝に引っかかったように髪からスルリと外れた

実際には木の枝にいた緑の妖精の悪戯だ

もう、と思いながら木の枝に手を伸ばせば風の妖精がリボンを飛ばして、池の上で手を離しひらりと静かに水面に落ちていった


「ああぁ・・・」


お気に入りのリボンなのに・・・

そう思いながら近づくと水の妖精がリボンを取ってわたくしたちとは反対の畔の方へずーっと流してしまった


今日の妖精の悪戯は連携プレーがよくできていますね。

もう、困ったわ。


そう思ってリボンを見ていたらすっと手が伸びてきて池から持ち上げられた。


えぇっ!なんでここにいるの!!!


わたくしのリボンを池から拾って下さったのは、さらさらな金の髪に聡明そうな水色の瞳。すっと通った鼻筋に形の良い唇、ゲームで見たスチールより幼さがあるけど回想シーンなどで見た幼い頃のフェリクス殿下がそこにいた

お茶会用の白い衣装を着ていて正しくザ!王子様☆です。

やっぱりメインヒーローだけあってかっこいいわぁ。


「兄上!」


「お兄様!」


わたくしが突然現れたフェリクス殿下に茫然としていると王子様と王女様も殿下に気がついて驚きの声をあげた。


「やあ、二人ともここにいたんだね。侍従たちが探していたよ。

・・・これは、君のかい?」


そういえばジル様とダリア様は隠れてたんですよね

見つかっちゃいましたねぇ。

そして、フェリクス殿下が笑顔で濡れたリボンを手に聞いてきます。


「・・・・・・はい、そうでございます。ありがとうございました。」


そう、返事をしてお礼を述べたのだけど・・・受取りにくいなぁ

受取るには近くに行かなきゃ駄目だよね。

うわぁ、わたくしのこと嫌ってる人に近づくのって勇気いるよぉ。

そう思って動けずにまごまごしていると気がつけば目の前に笑顔のフェリクス殿下が来ていた。


いつのまに!


「シルヴィア、どうして勝手に動いたりしたんだ。心配したぞ」


そしてフェリクス殿下の後ろにはお兄様がついてきていました。

お兄様は怒っているというより、焦りの方が滲んだように言います。


スイマセンデシタ


心の中で謝りますが、フェリクス殿下の前でわたくしは不用意に何も言えません

だって、近づきたくない人なんだもの!

嫌われているもん

絶賛、死亡フラグだもん!文句なし、シルヴィアとフェリクスの間には死亡エンドしかない!

そう思うと顔がますます下を向いてしまいそうです

って、いや既に視界は殿下の靴先しか見れません

さっきは思わず顔を凝視してしまったけど不敬だとまた嫌われたかなぁ


「まあまあ、アレックス。君はシルヴィア嬢だよね、僕とははじめましてでいいのかな?」


何も喋らず俯いたままのわたくしを覗き込むように声をかけてくださるフェリクス殿下


「・・・ごっ、ご挨拶が遅れまして申し訳ございません。レーヌ侯爵長女シルヴィアです。以後お見知りおき下さい」


がんばりましたわ

わたくし、がんばってカーテシーをし震える声を抑えて落ち着いて挨拶が出来たと思う


「・・・・・・・・・・・・僕はフェリクスだ。これ濡れてしまったね。もう今日はつけられないだろ。あとできれいにして返してあげるよ」


何なんでしょうか?ずいぶんと間がありましたが

わたくしには本当は名乗りたくないほど嫌われていたのでしょうか?

あぁ、どうにかして好かれなくていいから嫌われない、寧ろ無関心な間柄になっておきたいのですが・・・・


「いえ、そんな殿下の手を煩わせるなんて申し訳「これは預かるね」・・・」


おいちょっと、被せてこないで!

殿下の顔を少し見れば笑顔なんだけど・・・

笑顔なんですけどね・・・

なんだかね・・・違う笑顔に見えるの

うん、不機嫌ですよね、殿下

うわーん、わたくし何かしましたか?

なんだか知らないけどフェリクス殿下とっても不機嫌そうよ

笑顔なのに、目が笑ってないよ

もう泣きそう、やっぱり帰りたいよぉ


「王太子殿下ジルベルト殿下ダリア殿下、王妃様が会場に向われました。皆様も急いで移動して下さい」


心が既に折れそうになっていたわたくしたちのところに、侍女さんが告げにやってきた

そうか、逃げられないのね・・・


「わかった。

・・・では、一緒に行こうか」


そういってフェリクス殿下がわたくしに手を差し出した


ん?

どういうことかな?

この手はなに?


フェリクス殿下の手を見て、顔を不思議そうに見上げて目が合えばニコっと微笑まれた

今度は、目だけ笑っていない笑顔じゃない、優しげな目を向けてくれて微笑んで下さいました


でも

これって、エスコートですよね

どうしてわたくしはフェリクス殿下にエスコートされるのかな?


わたくしの頭の中はただいまパニックです!!!






お読みくださりありがとうございます

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