表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/63

≪1-05≫



カトリーヌ様取り巻き御一行様は、貴族子息令嬢らしくなくバタバタと足音を立てて去って行った音が聞こえなくなってから、詰めていた息を吐いて肩の力を抜いた。

記憶を取り戻す前は、高飛車な話し方はお手の物のシルヴィアでしたが、今は令嬢教育をみっちり詰め込んだ前世の平民感覚のシルヴィアなのだから、傲慢な喋り方は緊張する。


「シルヴィア・・・」


顔を上げてそちらを見れば、お兄様は何かを言いたげに、何度か言いかけてやめるを繰りかえし眉間に皺を寄せて渋面をしていた。



気がつくと、オスカー様もブライアン様もお兄様と一緒にすぐそばにいて、お兄様と似たり寄ったりの表情をしていた。


えーっと、これは今度はお兄様たちから非難されるのかな・・・

さっきのは、侯爵家の体面のために言ってくれただけで、

やっぱり、わたくしは攻略対象すべてから嫌われているのね。


「あの・・・

このような醜態を曝しまして、あの程度わたくし一人で対処しなければいけない筈でしたのに、お兄様の手を煩わせてしまいました。申し訳ございませんでした。」


お兄様たちの沈黙に耐え切れずに先に謝った。

勢いよく頭を下げて。

ええ、角度45度の最敬礼です。

就職セミナーで受けた社会人新人教育で習いました。背中に定規を入れられて痛かった記憶がございますわ・・・もちろん前世で。


「・・・それで、あの、このことはお父様にもお母様にも言わないでください。」


頭を下げたまま追加でお願いをする。

今日のことを聞いたお父様が如何するか考えるだけで恐ろしい。

それにオルグレン伯爵夫人はお母様のお友達なのに、招待されたお茶会でこんなことがあったなんて、お母様の交友関係まで影響しそうで怖い。


「・・・・・・シルヴィアはそれでいいのか?」


お兄様から、挨拶以外できちんと話し掛けられたのも久しぶりです。

お兄様の声はとても戸惑っていて、先ほどの取り囲んでいた人たちに掛けたような冷たい声で無く良かったです。


「はい、あの、あまりにも不甲斐ないので・・・知られたくありません・・・」


そう言えば、お兄様が溜息を吐く音が聞こえてきます。

呆れられたでしょうか?

どうしよう・・・また嫌われたかな。

顔をあげられず、頭を下げたまま固まってしまった。


「・・・っ」


如何することが正解なのか、よく分かりません。

沈黙が辛くて胸が苦しくなり鼻がツンっとして涙がでそうになります。


「っ!シルヴィア、・・・・・・・・・ごめん」


お兄様の意を決したような強い声に顔を上げると、お兄様が頭を下げて謝って来ました。


「シルヴィア嬢、俺もすまない!」


「俺も、ごめん悪かった」


そう言ってオスカー様もブライアン様も頭を下げます。

えっ!何ですかこれ!?

みんなそろって綺麗に90度の謝罪ですか!

特にオスカー様、お手本のように綺麗にまっすぐな背筋で定規入れたくなります。

ってか、最敬礼より深い拝の礼ではないですか!

やめて下さい!

そんなことされる謂れは無いです!


「なっ、なんですか?やめて下さい。

お兄様、わたくしが謝ることがあっても、お兄様が謝ることなどないでしょう?」


あたふたと狼狽えるわたくしに顔を上げたお兄様の顔は、今まで見たことないような情けない顔をしていました。


「・・・この前の王宮で僕たちの話を聞いていたんだろ?」


言い難そうに、でもしっかり言われました。

そうですよね。お兄様たちからの謝罪なんて、それしかないでしょうが、それは偶々わたくしが立ち聞きしていたからで、本来なら話の内容よりも、立ち聞きしたはしたない行動を咎められるものです。

ましてや相手は王太子殿下とその側近候補たちなのですから、謝る必要はないのです。


「それは・・・はしたない行動を取っていたわたくしが悪いのですから・・・」


「違うんだ。あんな場所であんな話をするべきじゃなかったんだ。

ましてや・・・っ、何を言っても言い訳になるけど・・・本心じゃない!絶対に!

シルヴィアの瞳を気持ち悪いとか不快に思ったことなんて無い。

だけど、なんとなくあのときの話の流れで・・・つい・・・

シルヴィアを傷つけて本当にごめん!」


そう言い、お兄様は再び頭を下げてしまった。

困りました。

わたくしが気にしないと言ったところでそれは嘘だと分かっているでしょう。

顔を合わせてから、その度に視線を逸らしてしまいましたので。

それに確かにあんな誰でも行き来する場所で、話を聞かれたことを咎められるのもおかしなことです。

ですが・・・ねぇ。

前世25歳のわたくしには、12歳前後の難しいお年頃の男の子が妹のこと可愛いって言うのも憚られ照れ隠しで、面白可笑しく茶化して話題にするのについノリで言いすぎたって言うのもわかるんだよね。

正直、前世で考えれば思春期の入口ですもんね。


「お兄様・・・あの、本当にもう気にしていません。

気にしていないというより・・・・・・・・・・・・」


わたくしがその後を言い淀んでいると、じっと三人の目がわたくしの次の言葉を待ちます。

そんなに見詰めないでください。

恥ずかしいです。


「えっと、その・・・・・・今まで通りしてもらえないのが嫌です」


見詰めるお兄様をわたくしは真っ赤になっていると自覚するくらい恥ずかしいけどもう一押し・・・


「もう、ヴィーとは呼んで下さいませんの?」


悲しそうに言えばお兄様からガバッと抱きつかれ腕の中に閉じ込められてしまった。


「いいのか?本当に、許してくれるのか?」


腕の力を少し緩めて伺うように覗き込んできます。

もう、許すも何も愛しの推しに悲しそうな顔をさせられません。


「ヴィーとまた呼んでくださるのなら・・・せめて嫌わないでください」


こてんと首を倒して伺うように見上げたら、お兄様じゃなくって後ろの2人が顔を掌で押さえて隠してしまいました。


・・・お兄様とは仲直りが出来そうですが、2人とは仲良く出来ないのでしょうか?

出来たら仲良くしておきたいです

オスカー様もブライアン様も死亡フラグはありませんが、断罪によってオスカー様のときは、マーガレットを娼館に売り渡そうとして破落戸に誘拐させようと企てるがオスカーに邪魔をされ反対にシルヴィアが誘拐されて娼館に連れて行かれる。

ブライアン様のときは魔物の森にマーガレットを置き去りにして魔物に襲わせようとしたところブライアンにマーガレットを救出された後、精神に異常をきたす魔法をかけられ狂って森を彷徨う・・・って死なないながらも最悪なエンドしかない

なんなの!製作者はシルヴィアが嫌いなのか!

それにブライアンのエンドは、死んだって言う記述が無いだけで魔物の森で狂って彷徨えば死んだことに違いない!

最悪!


できたら、2人とも仲良くしておきたい!

嫌われっ子は避けたい

仲良くなっていたら、万が一にも強制力で断罪されても少しは目こぼししてもらえるかもしれないもん!


「もちろんだよ!

ヴィーのことを嫌うなんてないよ。

目に入れても痛くないほど可愛い妹だよ、大好きだよヴィー」


お兄様は再び抱きしめてくれます


嬉しい!

お兄様に、推しに大好きって!!!!!

幸せです

わたくしもお兄様に抱きつきます

ぐふふっ、愛しの推しとの抱擁


「・・・・・・麗しの兄妹愛もいいが、ここ廊下だぞ。今は誰も通ってないけど・・・」


オスカー様の言うことも尤もですね

わたくしは離れようと腕を解くのですが、お兄様は離してくれません

寧ろぎゅっと強く抱きしめてきます


「煩いな、兄妹なんだから誰に見られても平気だ。」


そりゃ、兄妹ですから普通に男女が抱き合ってるわけじゃないですけど・・・


「そうだが、このままだと僕たちの話が出来ないじゃないか。

・・・あのシルヴィア嬢、僕たちもあんなことをいって本当に申し訳なかった

君ときちんと顔を合わせたわけじゃないのに・・・君の事を貶めるようなことを言って謝って済むことでないのはわかっているが許してくれるならなんでもする」


「不快な思いをさせて本当に悪かった。

全然気持ち悪くなんかない綺麗な瞳なのにあんなこと言ってごめん。

俺も、許してもらうまで何でも言うことを聞く!」


そう言うと、ブライアン様とオスカー様はお兄様の腕から離れたわたくしの前に膝をついて平伏して頭を垂れて、断罪を待つように硬い顔をしていた。えっと、これって土下座ですよね。今世、初ものですよ。


何でも言うことを聞くだなんて・・・


攻略対象だけあって、2人ともカッコいいのよね

オスカー様は、騎士団長子息で3人兄弟の末っ子なのに才能は一番、わたくしと同じ10歳なのに既に鍛えあげた肉躰、まだ成長期ですのにゲーム開始のときの均整の取れた肉躰の片鱗が既に見えています

顔も男らしい端正な顔立ちなのよね。短く刈った赤い髪も素敵だし・・・

お願いしたら触らせてくれるかな・・・胸筋と上腕二頭筋

ブライアン様は、魔道師団長子息で魔法バカなんだけど意外と理路整然としていて落ち着きのあって大きくなると色気駄々漏れな人

お兄様と同じ年で仲がとても良いのよね

しかも魔法だけでなく剣術にも手を出して魔法剣士としても活躍するのよね

だから、顔は女性のように綺麗なのに細マッチョのお色気系で、濡れ烏のような漆黒の髪を無造作に束ねていて、お色気を出すときは髪を解いて黒髪がその白い鎖骨に流れるときの色気ときたら・・・

撫でたいな・・・その艶やかな髪と鎖骨


・・・・・・・・・・・・駄目だよね


何でもってそんな邪なことじゃないよね

うん、2人ともなんだか身震いしてる

大丈夫よそんなこと言わないから


「あの・・・わたくしとお友達になってくださいますか?

強制ではありません、お嫌でなければですが・・・」


言いながら恥ずかしくなってくる。

だって、今気がついたのですがわたくし、友達がいません。

悲しい・・・


こんなお願いだめかなぁ?

やっぱり嫌われてるかなぁ


恐る恐る2人の顔を見ればこちらを耳まで赤くして見上げてます

あれ?


「えっ、そんなことでいいのか?」


「本当に友達になるだけでいいのか?

奴隷のように扱き使うじゃなくて?」


2人は驚いたあと呆けたようにオトモダチって呟いては顔を赤らめています

なんですか?


「奴隷だなんてそんなことしません。普通にお友達です

一緒に遊んで下さったりしてほしいだけです。」


お友達を奴隷のように扱き使うなんてわたくしをなんだと思っているのですか!

そんなこと、前世の記憶があるわたくしはしません

まあ、前のシルヴィアだと面白がってやりそうだけど・・・


「もう立ってください

それで、いかがでしょうか?お断りになってもいいのですよ

王宮でのことの謝罪は受け入れますから、

・・・・・・・・・やっぱり駄目ですか?」


中々返事がもらえないことで心配になって瞳が潤んできた

立ち上がった2人を見上げれば、顔は赤いままだけどとても優しい眼をしてこちらを見ていた。


「そんなことでいいなら、こちらこそ友達になってくれ」


「本当なら許してもらえないことなのに・・・こんな俺だけど友達に入れてくれ」


そう言ってもらえて嬉しくてにっこり微笑めば2人もほっとしたように笑顔を見せてくれた

お兄様もわたくしの頭をぽんぽんとして微笑んで下さいます

はわぁ、やっぱり攻略対象が集まって笑顔を向けてもらえるってすごいわぁ

もう、眼福

すごいなぁ、マーガレット(ヒロイン)っていいなぁ

好感度上げればいつもこの笑顔が見れるんだよねぇ

まぁ、わたくしはオトモダチポジを手に入れたし、モブ希望の身としてはこの距離で十分です

うふふと笑いあって3人に囲まれるようにお母様のところに戻れば、あらまぁとなんだかときめいた様なキラキラとウキウキとした目で見つめてきます。なんでしょうね?

まあ、当初の予定

推しと仲良く!

それ以上の収穫がありましたわ

これで、もう学園入学のゲーム開始まで大人しくしていて、入学後は出来ればマーガレットちゃんと適度な距離をとって攻略対象とのスチールのあれやこれやを外野でこの目で見て楽しみましょう

うふふ、たのしみだわぁ




そう思っていましたわ、このときまでは


まさか、あんなことになるなんて








読んで下さりありがとうございます


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ