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《2-25》

話の進みが遅くてすいません。

頑張って進めていきますのでよろしくお願いします。


「シルヴィア」


名前を呼ばれて、顔をあげるとそこには珍しく、父であるレーヌ侯爵が腰の曲がったボブ爺を連れて、庭の方からやって来た。


珍しい・・・

本当に・・・


何せお父様は、爺を前にすると威厳を保てないと言って、余程の用があるとき以外は傍に絶対に寄らない。

爺のほうも用がない限り傍に寄らない。傍に行くときは、他の人がいない時にしている、・・・らしい。


けど、嘘だ。


実際は、不意打ちで敷地内のどこかでお母様と二人っきり、イチャイチャしていた時を狙ったように、5回に1回の割合で邪魔をするかのように大したこともない用事で前に現れる。

気配を感じず、いきなりヌッと現れるんだとうなだれている父をシルヴィアは見たことがあった。


邪魔するなって一言言えばいいのに、

怖いって泣き寝入りしている。

我が家の主従関係って、どうなっているのかしら?


だから、二人がそろっているのは本当に珍しい。


「なあに?お父様」


マーガレットは、メイド長の教育が行き届いているんだろう、気が付くと椅子から立って、机から一歩下がった状態で控えている。

その素早さに、関心する。


やっぱり、できた子だわ。


「邪魔をして悪いな。

ちょっと話がある。ついてきなさい。」


シルヴィアに激甘溺愛父にしては厳つい顔で短く話して、サッと背を向けついてくるように促された。

背を向けた父は、普段ならばシルヴィアと手を繋いで歩く庭園を振り向く素振りもなく足を進める。


「あっ、待って」


此方をニコニコ見ていた爺まで、足を向こうにむけたことで、シルヴィアは慌てて椅子から立ち上がり小走りでついていく。


何?お父様、機嫌が悪いの?

怒っているの?

なんで?


「あっ、あんたもきんさい」


爺は振り向きマギーにも手招きする。

その向こうで、父が顔をしかめたのが見えたが、ボブ爺は飄々とその横に並び歩いていく。ふつうならば、使用人の爺は、侯爵の後ろをついていくところを、並ぶどころか、半歩先を歩いている。

嘆息し、来なさいと一言いってマギーにも許可がおり、思わず顔を見合わせたがお互いに不思議そうな顔をするだけで答えがない。

仕方なく、言う通りについていくことにした。





お父様とボブ爺の後をついて着いた先は、樫の木のような大きな樹木の傍にある池の畔だった。


っていうか、我が家なのにこんなに大きな木があって、その傍に底まで透き通って見えるほど清らかな池があるなんて知らなかった。


綺麗な、本当に小さな大人が3人で手をつないで輪になったくらいの大きさの池。

池からは小さな小川が流れて、庭にある小川がこれにつながっているようだった。


透き通って綺麗・・・

ん?


よく見ると、ポコポコ水紋が小さく広がってるところが見える。


水が湧いてる?

って、それって泉ってこと?

えっ?うちの庭から水が湧き出てる?

こんな城に近い王都の中で?


更に目を凝らせば、其処かしこに妖精の姿があり、泉の傍では更にその光は強く輝いていた。


『シルヴィアダァ』


『ワ~イ、キョウモカワイイネ』


『アソボアソボ』


シルヴィアの視線に気が付いた妖精たちはいっせいにワラワラとシルヴィアの周りに寄ってきてクルクルと回っている。

妖精の光が踊ってるみたいと、心の中で思うと妖精たちは属性に関係なく手を繋いでおどりだす。それはまるで絵本の絵のようにかわいらしい幻想的な光景。

クルクル回る妖精が近くの植え込みに近づきぽわっとあるところにいくと、光が膨れ混ざり会う。


『オッキクナッチャッタァ』


混ざりあった後に現れた妖精は、一回り大きく虹色に輝いていた。

キャラキャラ笑い、どんどん増えていく、虹色の妖精たち。

そして、虹色妖精が増えると同じタイミングで花が咲く。

それは、透明な花。

透明な百合のような花が、ニョキニョキと茎が伸びて、発光した薄緑色の蕾が付き、ポンっと音がしてガラスのように透明な花が咲いた。


透明な花は、勿論普通の花じゃない。


何故なら


花の中が発光・・・いや、中から現れたのは、小さな・・・妖精?

しかも、新しい?生まれたばかりの妖精?

小さな妖精は、硝子の花の中でプルプル震えながら羽根を伸ばしてまだ飛べそうになかった。小さな子供みたいな妖精。手足は短くぽっこりお腹のかわいらしい幼児のような妖精。


「かっ、かわいい・・・」


「ほぉ~、ぽんころぽんころ生まれよったわぁ。いやぁ、お嬢ちゃんはやっぱりすごいのぉ」


普段目にする妖精たちよりも小さなその姿に悶えながら思わず呟きでた声に、ボブ爺が感心した声をあげる。



んっ?


妖精が生まれた?


なに?今、ここで!?



妖精の生態なんてわかっていない。

庭で妖精を見るようになってから、我が家にある書物を見てみても世間一般に出回っている内容しかわからなかった。


妖精とは、決まった方式で呼び出し対価をもって願いを叶えられる。

対価のほとんどが、呼び出した人の魔力だとしか知られていない。


そのどの書物にも妖精がどこにいて、どのように呼び出しに答えるのか書いていない。


妖精さんたちにいつか聞いてみたけど、あっち~とか言ってたくさんの妖精が方々を指差すものだから結局きくのを諦めた。


正しく、今、目の前で妖精が誕生した瞬間だった。


「・・・なっ、何が起きているんだ?」


震えるような声にそちらを見れば、お父様が目を見開き驚愕の顔で空を見ていた。


「すごい光・・・」


えっと驚けば、マギーも同じように上を向き周りを見渡していた。


その目線も彷徨ってはっきりと何かに焦点を当ててみている感じでなく、ぼんやりと見える何かを探しているように思った。


「お父様たちには見えていないの?」


「そりゃそうじゃろうよ。妖精なんぞ、そう見えるもんはおらんけえの。まあ、旦那さんはぼんやりと見えるみたいじゃのぉ。王女様の血筋かのぉ」


ってことは、この幻想的な様子を見えているのは、わたくしとボブ爺だけ?

クルクル回る妖精たち。生まれる小さな妖精。そのすべてから光の粒が空中にまき散らされ、その光の粒もキラキラと・・・


その大きな木を、透き通る水が湧く泉を、硝子の花を虹色に光らせている通常では目にすることのない美しい空間。


「やれやれ、お嬢さんを連れてくるだけでこんなことになるとは・・・。

のう、旦那さん。こういうことじゃ、愛し子とは妖精の誕生さえも起こす奇跡の人じゃ。

さて、お嬢さんや。ここはの王女様が作った場所。侯爵家の敷地であってちがう、妖精たちの住処になってしもうたところじゃ。」


「住処?」


「そうさな、いつの間にかそうなっとたんじゃ。」


フォッフォっと笑う爺にお父さんが目をむいて驚く。


「爺、いつからうちの敷地に!おばあ様がいつの間にそのようなものを・・・話が違うじゃないか?」


「ん~、いつからゆうたら、旦那さんが生まれる前からかのぉ、話ゆうて、わしは妖精のことならここがええでぇゆうただけじゃけぉのぉ。違うゆわれても知らんわぁ」


父は青筋を立てて、爺に詰め寄っている。

いつもの通り飄々としている爺にかないっこないというのに・・・


「すご~い!この光は妖精なのですか?

お嬢様は妖精のお姫様?え~、やっぱり!」


いやいや、やっぱりって・・・


爺の言葉を聞いてマギーの反応に突っ込みを入れるシルヴィア。


私、人外になった覚えないから・・・



「・・・っ!わ~っ・・・、って、・・・っ!!!」


妖精の光がいまだに収まらない中、父である侯爵は余裕のない声でボブ爺に詰め寄って、マギーはキラキラと無垢な瞳で、「妖精・・・いや、天使様、もう女神様だわ・・・」と訳の分からないつぶやきを繰り返す。ある意味カオスな状態。


誰か、助けて・・・と思っていたところにまさかの闖入者が突然現れた。

それも大きな木の上から。


そしてそのまま、泉にダイブして大きな水音を立てた。


「わぁ、すっげーっ!何ここ?天国?妖精だらけじゃん!!!キャッホー!!!!!」


その闖入者は、青年というには幼く少年というには大きな体躯をしていた。

澄んだ水から出した上半身は、服を着ておらず健康的によく日に焼けた肌をしていた。胸板も厚く腹筋も割れている。所謂、いい体の男。年は15,6ぐらいだろうか?見ている前で水の中に再度体を沈めていく。


男の人のはっ、裸・・・。

うわぁ~~~。


「この妖精、水の妖精、しかも結構高位?きれいだなぁ。すげぇ、すげぇ・・・すげぇぞ、ここ!!!」


潜った後、顔を上げた男のその手には、虹色に光る鱗で下半身が人魚の見るから水の妖精。その妖精を両手で満面の笑顔で持ち上げる。勿論、持ち上げられた妖精は、激しく抵抗をして大きな水飛を上げる。持ち上げられた妖精だけでなく、泉にいるほかの水の妖精たちからも総攻撃を受ける男は、それでもますます喜んでいるように見える。


『コイツキライ、キライ、キライ』


『ボブ、コイツダメ』


いつもなら、鈴の音のように耳にやさしい妖精の声が、この時ばかりは針のように鋭い刺々しい声となって響く。

闖入者にもその妖精の声にも、驚き声もなく唖然とするばかりのシルヴィア。マギーは男の姿を見た瞬間にその身をシルヴィアの前に庇うように出ていた。


「やめんかい!!!ばかもんが!!!!!」


男の狼藉に大きな声を上げたのはボブ爺。


「じいちゃんっ!!!」


怒鳴られているというのに、喜色満面の声と顔で爺を呼ぶ男はどうやらボブ爺の孫?


「妖精から手を離さんか!怒るで!早うそこから出ぇや」


男の喜び具合と相反して、爺の怒気は増す。珍しい、爺の吊り上がった目の怒った顔。

ふだん怒らない人というのは、怒ったときは何をするのかわからない。

現に爺は、シルヴィアの前で初めて魔法を使ったらしい。

らしいというのも、魔法というのに自信がないから。怒鳴った声と同時に手を振り、その動作に合わせて池の中の男の体が乱雑に浮き上がる。というよりも放り投げられたように浮いた。



水の中から強制的にだしたのだ。

しかし怒りのためなのか、精密さの粗さからなのか、使った現場を見たことがないシルヴィアには、わからないがこれだけは言える。



なんで!この人、裸なの???


爺の魔法で池から強制的に打ち上げられた男は、上半身裸だけでも深窓のお嬢様のシルヴィアには刺激が強いというのに、下半身の身に着けていたものがずり落ちていた。辛うじてすべてではないが、それでも際どい所まで下がっていた。



「みないで、いや~ん」


その光景に固まってしまっている、シルヴィアの視線に気付いた男は、胸を押さえてお決まりのふざけたことをいう。


なに、この中学生ダンスィ~なやつ・・・




爺によく似た細い目でウインクをする悪ふざけな男。



シルヴィアのこの男の第一印象はこの時から変わっていない。



「きゃーっ、お嬢様。そこの不埒者。その汚いもの早くしまいなさいよっ!」


目の前が真っ暗になってそのまま倒れたシルヴィアを抱えるマギー。




汚いモノって・・・




この男・・・








・・・・・・HENTAI






それは、何年たっても変わらない。

妖精馬鹿な、ほかのことについてはポンコツ変態、ボブ爺の玄孫ギルとの出会いだった。








読んでくださりありがとうございます。

感想もいただいてありがとうございます。早く、書きたい話、シーンがあるのにその伏線や過程を描くのにもたもたしていてすいません。頑張って書き進めていきますので、気長に、見捨てずに待っていてください。

ブクマや評価をいただくと喜んで頑張る気力になります。優しい感想やコメントをもらうと、指の痛みが和らいで頑張れます。

誤字脱字もいつも助けられています、ありがとうございます。


仕事の関係で腱鞘炎になってキーボードを打つ手が遅すぎて、スマホ入力になっています。誤字脱字いつもよりも多い気がしていますがよろしくお願いします。


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