《2-17》
本当はお母さん同士の話を入れようと思ったのですが、その前に妖精のことを知った面々の処遇について入れようと思ったらなんだか説明ばかりになってしまいました。
ギュッと抱きしめると小さくて柔らかい体、ふわりと銀色の髪から最近、シルヴィアがはまっているハーブ、ラベンダーを軸にしブレンドされた優しい香りがする。
すりすりと胸に頬を擦り寄せる姿は、随分と小さな頃よくやっていたかわいらしい癖。本当に小さな時は、腕に抱いていたからそのまま寝てしまっていた。いま、流石にそれはなく気がすんだのか、パッと顔をあげて嬉しそうに微笑みあう。
子猫のようなかわいらしいつり目のその瞳は、いまは、キラキラと星が瞬くように明るく輝いていた。
かわいいかわいい、愛娘。
その不思議な瞳は、貴女を幸せに導いてくれるかしら?
それとも・・・
優しい母の手は、愛娘が満足するまでその胸に抱き、絹糸のような髪を撫で続けた。
◇
執務室の扉を叩く音が響く。
「入れ」
開いた扉で、執事長から呼び出したものが来たことを告げられ。その後ろから固い顔をして入ってくる。
全員が入室したのを確認した後、執事長は頭を下げ退室した。
執務室は、重い沈黙につつまれた。
レーヌ侯爵、当主、夫人、嫡男が揃う中、呼び出された今日の護衛たち3人。その顔はみな一様に固く今から、叱責される覚悟をしていた。
シルヴィアは、迎えに来たサラに連れられて、マーガレットはいつの間にか居たメイド長と執務室を後にした。
その後、侯爵は執事長に命じて護衛を呼んだ。
そして、現在揃った顔ぶれなのだが・・・
重厚な執務机に肘をついて額を抑えて、数十分前とは違い眦を吊り上げ口は堅く閉じて、なにかをこらえるように静かにそこに座っていた。
その横に、無表情で立つ夫人であるリーリエは、夫の肩にそっとその白魚の様に白く細い手を置いて話を促した。
「まずは、今日あったことだが」
「父上、処罰の前にお願いがあります。」
顔を上げ鋭い眼光で話始めた、ブラッドリーだっがそれをアレックスが緊張の面持ちで遮った。
それにピクリと眉を上げたが、叱ることなく話の先を顎すすめた。
「今日の行動の責任は、僕に在ります。コーディたちへの罰は免じてください。
それに・・・」
一旦、言葉を切って父母を見てフッと笑みを浮かべた。
「シルヴィアが、行動を起こすときにすべての責任を取ると言っていたのです。この3人に罰が与えられたと聞いたらシルヴィアが気に病みます。ですから、どうか彼らは許してやってください。」
そう言って頭を下げるアレックス。それを見た護衛の3人はオロオロと狼狽えていた。主人であるアレックスが自分たちのことで頭を下げている。
護衛3人は、状況はどうであったとしてもいくら主家の子息令嬢からの命令とあったとしても諌め止めなければならなかった。護衛対象は、子供だ。いくら一般的な子供たちよりも大人びていると言っても子供には間違えない。
だから、今回はコーディはクビ覚悟で指示に従ったのだ。
コーディ自身はアレックスが幼少のころから付き従っていただけに寂しさもあるがそれも已む無しと覚悟はしていた。
それなのに、アレックスが頭を下げて護衛三人の責任を逃してくれようと動いているのだ。
驚きと戸惑いは大きく、言葉を発することもできない。
しかしその護衛三人の動揺をよそに、主である侯爵と夫人には一切の動揺は見られなかった。
「そうか、ではアレックスお前がすべてを負うというのか?行ってはならない地へ足を踏み入れた責の・・・」
「はい、すべての責を僕で負います」
厳めしい顔つきの侯爵の睨みに、引くこともなく力強く言葉を返すアレックス。
恐れている様子もなく淡々と落ち着いた様子で姿勢を正し、父から処罰を言い渡される時をまった。
それに対して、再度両手を額に当て考え込むブラッドリー。
暫く重たい沈黙が流れた。
誰も口を開かずブラッドリーの言葉を待った。
美しい夫人の背後の窓からは、鳥が近くの木から飛び立つ羽ばたき音だけが聞こえてくる。日はもう傾き室内に長い影を作る。室内の魔力で自動で暗くなるとにつくランプはすでにぼんやりとした明かりを灯していて、刻々と暗くなる室内を照らしていた。
はあぁぁぁ
静まり返った室内に長い溜息。
ブラッドリーは顔を上げ顰めた眉を指でほぐしチラッとリーリエをみる。が、リーリエは変わらぬ涼しい顔のままそこに立つだけ。ブラッドリーの視線に気づきながら答えることはない。すべての判断をブラッドリーに任せているととるか、それとも無言の重圧か・・・判断を誤ると、頭を抱えることになる。
向けた視線は長くはなくすぐ諦め、改めてアレックスに向き直る。
「・・・己の配下に対して責任を持つ、これは素晴らしい考えだ。
だが、そう簡単にすべての責を負うなどと口にするな。
今回の事、言いたいことはたくさんあるが、屋敷に帰ってからもシルヴィアが責任はとると言って使用人を動かしていたことは聞いている。それらも含めて、今回のことで誰かに何かの罰を与えればシルヴィアにもその責は回ってくる。人を助けたい優しい心で動いたそれに免じて誰も罰を与えることはできない。
・・・って、どうせお前はそれをわかっていて言ったのだろう。はぁ、もうそれはとりあえず置いておく。
私が今、聞きたいのは・・・、本当なのか?シルヴィアが妖精を呼び、それにこたえていたというのは・・・」
少々苦虫をつぶしたような顔でアレックスの罰の免除について行った後、王城での会議の時よりも真剣な顔でアレックスと、護衛の3人を順に顔を巡らせていく。
「父上、本当です。僕も妖精は初めて見たので少々呆けてしまいましたが、確かにシルヴィアが妖精にあの母娘の助けを願い、その瞬間から周辺の空気が変わりました。あの時は随分とあの場に近づいていたようでしたが、重く汚れた空気が一掃された、確かにそう感じました。
そして、シルヴィアがあの母親を助けると口にした時から妖精たちの光の粉が、苦しそうにしていた母親を包んで、それから少し楽になったようでした。それは馬車の中でもあったようで屋敷に帰り着くまでシルヴィアに妖精が付いてきていました。・・・そういえば」
見た儘を辿るように話すアレックスだが、ふっと思いだしたことがあった。
妖精を見た時、あの光は以前にも見ていたから・・・
「そういえば・・・、以前からシルヴィアの周りで光が瞬いていたような気がするのですが・・・あの、ボブ爺のような・・・」
「呼んだかのぉ」
「「「「「うわぁ!!!!!」」」」」
庭でよく光に囲まれているシルヴィアを思い出し、よくよく思えばボブ爺の庭仕事中によく見かける光景と酷似していた。
そう口にしようとして最後まで口にできなかったのは、いきなり入ってきた第三者の声のせい。それも今、名前を出したばかりの本人。レーヌ家の妖怪ボブ爺。
扉をたたく音もなければ、開く音も気配もなかった、さらにさらにボブ爺がいるところは扉から奥の書棚の横なのだ。窓からも離れている。
いつ、どうやってそこに入ったのか、謎であると同時に恐ろしい。
「なんじゃ、わしゃぁ、おばけか?
折角わしが妖精のことについて教えちゃろう思うっとったのに、やめようかのぉ」
その爺に室内の爺以外がみんな思った「いや、お化けよりも妖怪だ」と。
書棚から、ブラッドリーのほうへ足を進める爺。
その姿は、この侯爵家の主人よりも堂々とした足取りで、それを室内の全員が眺めるだけで何も発することができなかった。
「おい!爺!妖精って、あれは、お前、シルヴィアも!」
「やれやれだんなさんよ、あんたぁまだまだ青いのう。シャンとしんさいよ。
もう忘れたんかいのう、王女様も妖精とお友達だったじゃろうがぁ?こぉぉぉんな小さかったとき見してもろうたじゃろうが?あんときゃぁ、びっくりし過ぎてちびったもんのう。まぁべそかいてのぉあんころはかわいかったのぉ。
お嬢ちゃんは、あの王女様と同じ瞳をもっとるんで?見えるに決まっとろう?
それに見え方教えたんはわしじゃ。やぁ、ありゃぁ筋がええでぇ。いっぱい加護をもろうたけぇのぉ。」
「ちょっ、ちょっと、ちょっと待て爺」
さらりと恥ずかし過去を暴露するわ、爆弾落とすわ。
焦るブラッドリーの顔にはすでに威厳ある侯爵の顔でなく、情けなく狼狽える子供のようだった。青くなったり赤くなった忙しなく顔色をかえて焦っているのは、過去話か妖精のことか・・・
「まぁ、そんな・・・(旦那様にそんな過去が)、では、シルヴィアも同じように妖精に愛されているというの?」
何やら副音声の心の声が漏れ聞こえる夫人は、生暖かい目を向けて焦りまくっている旦那様をしり目に素知らぬ顔でボブ爺に聞くことにした。
同じように、アレックスも「あの人も子供時代があったんだぁ」とこちらも温い目線を送っていた。ちなみに護衛三人は、壁と同化するか置物の気持ちで無になりそれをやり過ごした「俺らは何も聞いていない」主人の秘密を知ったところで、得などない。下手をすれば痛い目に合う、それが現レーヌ侯爵という人だ。ただ一人ボブ爺は別格のようだが・・・
「奥さんやぁ、そりゃあ愛されてるっちゅうもんじゃないでよ。お嬢さんが庭に来たら妖精はわしのゆうことなんか聞きゃあぁせんでのぉ。仕事がかたせんでいつもやれんのんでぇ。」
「・・・・・・そう」
「・・・いや、爺、それはもういい。
聞きたいのはいつからなんだ・えっ?シルヴィアはいつから妖精のことを・・・」
ボブ爺のきつい訛りに、途中から理解をすることをあきらめたらしい夫人の綺麗な微笑が少々恐ろしくなってきた侯爵はとにかく話を先に進めたかった。侯爵としては幼いころからの爺の方言。なんとなくのニュアンス的なもので理解をしている。
「いつからぁ、ゆうたら去年じゃのぉ。庭でへたっとたけぇ、元気にしちゃろう思うて妖精教えたら、まぁえっと寄ってきてのぉ、そのまま勝手に妖精らが加護をぉゆうてしもうたんよ。」
「なんで・・・勝手にそんなことを・・・」
「しゃぁないあじゃろうが、もともとお嬢ちゃんが見えるようになる前からいぃっぱい、妖精が引っ付いとったんじゃけぇ。もうのぉ、時間の問題じゃったでぇ?誰も知らんまになるよりはええじゃろう?」
「だが、それを何故私に報告をしない!」
「誰も聞かんかったけぇのぉ。
お嬢ちゃんを見とれば、光がちらちら見えたじゃろうにぃ、だぁれもいわけぇ、ええんかのぉっと思ったんじゃよ」
聞くうちに顔を赤くして低く、唸るように怒りを抑え込んで話している侯爵に対して涼しい顔でつるっと周りが悪いと言わんばかりのことを言いのけ、カッカッと笑い飛ばすボブ爺。
確かにアレックスがシルヴィアの周りで光が瞬いているのを見ていた。そしてそれはシスコンという“妹ワイカー”“妹は僕の天使ちゃん”なる病の為、見事にスルーされていた。
それを言われれば、気付かなかったのはそっちでしょ?見ていて誰も聞かないんだもんっと責任転嫁されても仕方がない。
「ううぅっ・・・、では、・・・今回のことはどう思う?アレックス、それにそこの護衛のコーディなどは“穢れの溜り場”に足を踏み入れた。しかし、健康状態も問題ないようで、身体的にも可笑しな痣やコブも見られない。シルヴィアもあの娘も同じだ。」
シルヴィアが妖精に加護をもらっていたことについて話を続けてもこちらの分が悪いだけ。そう判断した侯爵は、さすがの切り替えの早さで妖精の持つ力に詳しい爺だからこそ知り得る情報を聞き出すことに話の方向を変えた。
「そりゃあのぉ・・・」
ボブ爺曰く
シルヴィアに対する妖精の溺愛は凄まじく、執着に近いものがある。だが普段呼びかけるまで静かに待っているのは偏に、曾祖母の王女様にあれもこれもと纏わりついたせいで王女様がキレてしばらく呼び出しも見えても無視されたつらい経験があり、さらに高位の妖精にもクレームが入って厳重注意されてしまったことに由来する。それでも一たびシルヴィアが呼びかけ、助け願いを口にせずとも思うだけで叶えてあげようと動き出し、それはもうわんさかたくさんの妖精が押し掛けるのだ。
今のシルヴィアの呼びかけに答えていち早く姿を見せるのは中位の妖精が主。そのため光が大変強くその光だけでも空気の浄化になっている。少しの間くらいならあの場の穢れも清めてくれることだろう。ただでさえすごい量の妖精が付いていったのだから、心配はない。あの母親も恐らくはまだ3日とあの場に入って間がないことから今もシルヴィアの願いを叶えようと妖精たちが付いているし問題ないとのこと。後は医者の治療で元気になるだけ・・・と、きっつい方言訛りで説明された。
「・・・そうか、はぁ、ありがとう。」
内容にも、きつい方言での話し方にも少々お疲れ気味の室内の面々。
「でだが、・・・この妖精の加護をもらっていることは、勿論、秘密にしておく必要がある・・・」
疲れた表情からキリっと、厳しい侯爵当主、宰相の顔に意識して戻しアレックス、特に護衛の3人に視線を流す。
そして、引き出しから一枚の厚手の上質な用紙をだす。
それらにはすでに何やら文言が記載されていた。
「コーディ、ダレル、ユーインこれに目を通せ。」
そう言って差し出された用紙を、3人は受け取るとコーディから順に目を通す。
用紙はただの厚手の上質な紙というわけではなかった。契約を交わすときに用いられる魔法用紙だった。
それらは、高位の貴族間で行われる公式な契約だけでなく、使用人を雇い入れるときにも使われる。このレーヌ侯爵家でも雇用されるときには侯爵自ら説明し、サインすることから3人は勿論、一度は手にしたことのあるものだ。
そしてその内容はというと、今後、今日あったことのみならずシルヴィアに関する秘密のこと、それに追随することすべてに関してこの執務室以外での発言、記載を禁じるというものだった。
この秘密という言い回しに内容の幅を待たされたことでおそらくは今知りうる以上のこともあるのだと、一番侯爵家に仕える歴が長いコーディは感じ取った。他2人はまだ10代のまだ1,2年しか使えていない若造。それを思うとこの契約内容の幅の持たせ方で万が一口にしたときの罰則が考え物だ・・・
「侯爵様、この内容に罰則規定がございませんが?」
気になった罰則なのだが、いくら見ても罰則の記載がない。
雇用契約の場合、禁じることの後にそれに応じて罰則、解雇についても記載されていたが、この用紙には禁じるという文言の後は署名する欄のみだった。
「罰則はない、何故なら口にできないという契約魔法がかけられているからな。」
罰則無し、というよりも書かれた内容通りにこの執務室以外で口にしようにも声に出すこともそれを紙に書くこともできないという。
オイオイっ、マジかよ・・・
コーディの内心は冷や汗ものだった。
この契約用紙はつまりは行動制限を記載した瞬間からなされるという高度な魔法がかかっている魔道具だ。
このただの契約遂行に縛りを待たせたり、用紙を無くしたり破損することがないように掛けられた魔法と違う。
まさしく書いたとおりになる、かなり最高難度な魔法がかけられたものなのだ。噂では国間で行われる契約に用いることが多いその契約用紙は、一般的に出回らない高価なものだ。それを用いるほど、このことを口外無用と強く念を押されているのだ。いや、違う、言えないようにされるんだ。強制的に・・・
それほどまでして、極秘にしておきたい事柄ということは、ここでサインを拒めばどうなるのか・・・
「ああ、勿論今日の護衛に対しての報酬は、上乗せしよう。君らの仕事ぶりも良いようだし、給金アップの話も出ている、もしも希望するのなら正騎士として城勤めの口利きが可能だ。どうする?」
どうする?と疑問符で締めくくっているが、その前に含まれる言葉如何に?それこそ明日は日の目を見れないことになるかもしれない。
選択肢は最初から一つしかないのだ、正直アレックス坊ちゃんのことは気に入っている。このまま坊ちゃんの護衛でいることを望む・・・
悩むことはなにもない、そう思うと用紙と共に渡されたペンをとりサラサラとよどみなくサインをする。
書き終えた瞬間にその文字は、わずかに青白く光り緑色で落ち着いた。
その後の2人もコーディに続きサインする。同じように光り緑色のサインがそこに3人分並んだ。
インクまで魔道具をしようするとは、すごい念の入れようだな・・・
サインにつかわれたインクは、本来は罪人の証言をサインするときに虚偽を言ったかどうかの真偽の為に用いるものだ。これもまた、普通には出回らないものだ。今回の場合、この内容で署名したものが契約を破り、どこかでしゃべりそうになれば赤色にかわるそういうものだ。
それほどまでに厳密に秘匿する必要があるようだ。
「うむ、今日はご苦労だった。明日は特別に休日を与えよう。先程の話、騎士への口利きがほしいなら遠慮なく言ってくれていいぞ。」
そう言って魔法用紙を受け取り、署名されたインクの色をしっかり確認した侯爵は、3人に話は終わったと退出をうながした。
「ほうじゃあ、わしも・・・」
わすれかけていたが、爺も室内にまだいた。
3人に続いて退出をしようとして声を出すが、それは意味ありげに侯爵へ視線を送るばかりで足は一歩も動いていなかった。
「爺・・・、わかってるくせに、この妖怪爺が・・・」
小さく怨嗟の声をつぶやくが、爺の視線がしっかりと侯爵を見据えているのを見て口を閉ざす。
そんな呟きよりも大事なことを渋々ながら、爺に声を掛ける。
「爺よ、シルヴィアに妖精のことをもっと師事してほしい。それと同時に無闇矢鱈と妖精にお願いごとをしないように見張りを付けたい。誰か妖精が見えてそれを担えそうなものに心当たりがないか?」
いまだ解明されていない妖精の生態。
本来ならば対価の末、願いがかなえてもらえるのが一般的に知られていること。
だが、爺の様に加護をもらい常に妖精が手助けをしてくれるものもいる。
しかし、それに対価はどうなっているのか、爺から聞いてもいつも話が脱線してわからない。
見たところ対価をなにか取られている様子はない。
が、わからないというのは怖いもので。
それが愛おしい娘のことならば、震えるほどの恐怖を感じる。
「ほうほう、いい判断じゃのぉ。ええでぇ、心当たりがあるけえ、近々呼んでみちゃろうかのぉ。まあ、心配せんさんな。お嬢ちゃんはええこじゃぁ、無理なことはゆうとらん。わしもたまぁに世間話ついでにようけえ話して聞かせちゃるけぇ、心配せんでええで。」
そう言いながらフォフォフォっとわらいながら扉を出ていく。
扉をくぐるときにしわがれた顔でウインクまでして。
パタリとしまった扉に侯爵当主としての威厳を一生懸命たもっていたブラッドリーは、歴代侯爵が座り続けた重厚な椅子にくたりと凭れかかった。
普段の背筋の伸びた姿からは想像できないだらしのない姿。
室内にはまだアレックスもいるというのに・・・
あまり息子に見せる姿ではないとこっそり気を利かせたアレックスは、母のリーリエに目礼だけをして室内を後にした。
「・・・・・・・・・爺との会話は疲れる・・・・・・」
息子が退出したとき、閉まりかけた扉越しにわずかに聞こえた父の情けない声は聞こえなかったことにしようと思ったアレックスだった。
読んで下さりありがとうございます。
ボブ爺の方言は書いててこっちが疲れました( ;∀;)
新たに評価やブクマをしてくださりありがとうございます
毎日更新難しくなってきましたが、それを目指してがんばります。「あきらめたら そこで試合終了ですよ…?」(©安西先生)
あきらめずに頑張ります!!!