《2-14》
何とか今日中に間に合いました・・・
殆どがアレックス目線です。流れがちょっと前後しています。
とっても短いけどすいません。
「だめだ!もとの場所に戻してきなさい!」
レーヌ侯爵家の執務室に自宅では珍しく声を荒げている現当主ブラッドリーがいた。
「お願いします、きちんとわたくしが最後まで面倒を見ます」
それに対して、この屋敷で怒鳴られたことなどないご令嬢シルヴィアは、両の手を胸の前で組んでうるんだ目で必死にお願いをしている。
上目遣いのあざとい顔で庇護欲をそそる姿に離れた場所で見守っていた老齢の執事長さえも効き目があり、反対している主人である当主に非難の視線をむけている。
もちろん普段から溺愛しているブラッドリーこそが愛娘からのそんなお願いに頷きそうになる。
だが!
隣で黙っている、娘と同じくらいに、いやもっと愛しく恐い妻からの冷たい微笑みを浮かべた睨みに心を鬼にして改めて説得にあたる。
「うっ・・・人に世話してもらっている子供が何を言っているんだ。
だめだ!絶対ダメ、離してやりなさい。」
「嫌です!わたくしはこの子と一緒がいいんです!」
そう言ってシルヴィアはぎゅっと抱きしめたのは、ピンクゴールドのふわふわした毛のトイプードル・・・ではなく、髪をした愛らしい顔を困惑した表情にして所在なく立ち尽くすマギーことマーガレット。
◇
侯爵邸に汚れて痩せ細り死にそうな女性と、かわいらしい顔立ちはしているが女性と同じように汚れている女の子を連れ帰ったシルヴィアたちは、出迎えた家令を驚かせ、老年の執事は卒倒した。
父である侯爵は宰相の仕事で城にいて、母の夫人も王妃様の招きでお茶会にこれまたお城に出掛けていた。
判断をゆだねるべき大人は皆おらず、一先ず意識をすぐに戻した老年の執事の指示のもと年若い家令が急ぎお城へと知らせに走った。
その間、オロオロとしている使用人たちに珍しくシルヴィアがすべての責任はとるから母親を医者に見せてマギーをお風呂に入れてほしいとお願いという名の命令をした。
その様子を、何故か嬉しそうに微笑んで見守るアレックス。
本当にうれしいのだ、去年のあの時から、どこか屋敷の使用人にも遠慮をしていたシルヴィアを見ていて、あの立ち話を聞かれて傷つけたことが原因だと思っている。オルグレン家で一旦は謝り気にしていないと言われたが、それまで以上に社交に出なくなってしまった。その代わり家の中では我儘も少なくなり、家庭教師の言うことを良く聞くようになった。喜ぶことなのかもしれないが、それまで喜怒哀楽がはっきりしていて、我儘を言われて困ることもあったが叶えてあげた時、それは本当に嬉しそうに喜んで、その顔見たさにどんな我儘も聞いてしまうとメイドたちが良く言っていた。それが最近はお礼も澄ました微笑みを浮かべるだけで前のように感情を表すことが少なかった。
だからみんなどうやったらシルヴィアから前のように素直な表情を引き出せるか試行錯誤している。
以前のシルヴィアなら、感情が瞳に出ることを恐れることなく素直に笑って泣いて怒って喜んでた。寧ろその瞳をもって生まれたことに誇りを持っていた。瞳の色が変わる、それはこのレーヌ家では普通のことだっただけに、シルヴィアがそれを出さなことが寂しくて仕方がない。寂しいだけじゃない、きれいな瞳だというのにそれを隠して表に出ないのはとてももったいない。
いきなり聞き分けがよくなったシルヴィアが、最近やっと言った我が儘がアレックスと街に遊びに行きたいというかわいらしいものだった。指名されたアレックスは大いに喜び、同行できない大多数の者が悔しさに涙したが最高のお出かけになるようにそれはみんな喜んで手配した。サラたちメイドは、町娘に扮するためにかわいらしく品の良いワンピースを着せ、少々お転婆しても大丈夫のように髪を編んで等支度を調えた。父母がシルヴィアにもたせた財布はアレックスに確認する隙も与えず持っていたポシェットに仕舞われた。一体いくらのお小遣いが入っていたのか・・・
そして街に出れば、久しぶりに見たキラキラとした嬉しそうな表情。まわりのものが珍しくキョロキョロと忙しなく眼だけでなく頭も動かして色々なものに興味を持った。瞳の色もシルヴィアの行動と同じように、様々に色を変えて言葉や表情よりも雄弁に喜んでいた。
いきなり魔道具屋で離れてしまったのは驚いたが、無事合流できてまた楽しそうに散策を続けようとしたところであの少女と出会った。
なぜか、シルヴィアは会った瞬間からあの少女に強い興味を示し、貴族が絶対に行くことがない、穢れの溜り場にまでお願いされて行ってしまった。
そして、驚くことにそこでシルヴィアの秘密までも知ってしまった。
ときどき庭でシルヴィアの周りをきらきらと光が舞っていると思っていたが、きっとかわいらしいシルヴィアの姿にエフェクトがかかっているだけと思い込んでいた。アレックスは考えた、きっと僕の目は、シルヴィアを見るために新たな機能が付いたのだ。普通に考えれば馬鹿なことと白けてしまうのだが、これが本気でそう思い込むほど、ちょっと前と違って今のアレックスはシルヴィアを溺愛していた。
その光が、まさか妖精だったなんて!
しかもシルヴィアの願いにこたえていた。
妖精や精霊の類は、召喚で手順通りに呼び出して、願い事をかなえてもらうには対価が必要だと聞いていた。稀にそれ以外の方法で妖精と共にいることができるが、それは加護を戴くということで本当に珍しいことだという。
まあ、家のボブ爺がそうであるとは聞いているが、あの御仁は、通常の人ではないので除外しておこう。うん、使用人のはずなのにそうは思えないあの存在感。いや、今それを考えるのはやめよう。
おそらくシルヴィアは、一つ二つでない属性の妖精から加護か祝福をもらっているだろう。そうアレックスが推測するほど妖精たちは色とりどりで銀色のシルヴィアの髪が虹色に輝いていたほどだった。その姿は本当に幻想的で、アレックスは本当に自分の妹なのかと、あれほ本当に天使か女神かと思った。
そしてそこから母娘を連れかえったわけなのだが・・・
メイドたちに指示を出しているが、シルヴィアもアレックスも汚れている。
手近な家令に指示をして、シルヴィアにも身綺麗にしておくようにそれとなく促してほしいと言って自らも風呂へ向かった。
恐らく知らせを聞いた両親は、取急ぎ帰ってくるだろうからそのあとが大変だ。
さぁて、最近娘が我儘を言ってくれないと嘆いていた両親は、このとんでもない拾い物をしてきた愛しい娘に何を言うかな?
読んでくださりありがとうございました。
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