≪1-01≫
春から初夏へと移り変わる暖かい季節。
薔薇が美しく咲き誇る王宮庭園で伯爵以上の貴族の令息令嬢が集められた。
わたくしシルヴィア・レーヌと申しますわ
11歳になりますの
お父様はこの国で宰相をしていて、王族と同等とされるくらいの筆頭貴族の侯爵家ですわ。
本来ならば侯爵令嬢であるわたくしは、そう簡単にこちらからご挨拶なんてするような安っぽい女ではございませんが今日はとてもご機嫌が良いので微笑みつきでご挨拶をしてあげましょう
だって、今日は王妃様主催のお茶会という名のわたくし『シルヴィア』と王太子殿下『フェリクス』お互いに恋に落ちる日なんですもの
今日まで幾度となくお父様にフェリクス殿下と会えるように取り計らいをお願いしてもやんわりとはぐらかされてここまで来てしまいましたが今日こそ!ええ、そうですよ今日こそが運命の出会いの日になるんですもの!!
わたくしとフェリクス殿下は同じ年。
現在このマラカイト国の貴族においてわたくし以上に王太子殿下に相応しい女性はいませんわ!!!
月の光を紡ぎだしたような流れる銀髪、瞳は一見深い碧い色のようですが角度によって色を変える不思議な瞳。それは先祖返りのものでマラカイト国に伝わる降嫁した王女の瞳と同じ高貴な色です。その王女様はわたくしの曾祖母にあたりますもの。この高貴色合いの瞳に立ち振る舞いから存在に至るまでこの国どころか他国を見てもわたくし以上の令嬢はいないことでしょう。
物語に描かれているような、理想の王子様像そのものフェリクス殿下。
もう、このわたくしをおいてフェリクス様の隣に相応しい令嬢はいませんわ
顔だって、肌の手入れにはいつも気を配って保たれる白磁の肌に薔薇色の頬、ちょっとつり気味の瞳は長い睫に縁取られて愛くるしい子猫の目のようと言います
人々は、可憐で美しい精霊の成代りと褒め称えてくださいますのよ
さあ、わたくしの運命の相手フェリクス様はまだかしら♪
わたくしは待ちきれず、庭園入口に待機しています。
ここは淑女らしくそわそわとせず慎ましやかに待ちますわ。誰がなんと言おうが慎ましやかに待っています。誰ですか、はしたないという人は!ちょっと前のめりになっているだけですわ・・・
本日は晴天で太陽の光が燦々と降り注ぎます。
まるでわたくしに祝福が降り注ぐようですわ。
まだ、王族の方々はいらっしゃらない。
・・・
・・・・・・
ちょっと時間あるかしら・・・
・・・・・・始まる前に行っておきましょう粗相があってはいけないものね
緊張のしすぎですわ
庭園を出てすぐのところに控えている侯爵家から連れてきたメイドにお手洗いに行くと一言伝えて広い王宮の廊下を歩きます
なんでしょうか?
わたくし、王宮は初めて訪れるはずですのに何処に何があるかわかってしまうんです
本日初めて王宮を見上げたとき微かな既視感を感じましたわ
これは、あれです。
もう、前世よりわたくしはこの王宮に来る運命でしたのよ。
そうだわ、きっとこれは、運命ですわ。
そう浮かれた気持ちで廊下を暫く進んだ先、回廊に差し掛かったところで聞き覚えのある声が聞こえてそちらを向いた。
回廊からすぐの庭先にわたくしの1歳上のお兄様のアレックスと2人のお友達、そしてあれに見える金色に輝くさらさらの髪に品のある麗しのお姿は、フェリクス殿下ではございませんか
そういえばお兄様は、殿下とご学友でしたわね
ここは、他の令嬢より一歩抜きん出てご挨拶をしませんといけませんね。
「なあ、シルヴィア嬢の姿を見たか?」
殿下とお兄様のほうへ歩を進めようとしたところわたくしの名前が飛び出しました
いつもでしたら気にしませんのに何故だかその時は、回廊の柱に身を隠してしました
「シルヴィア嬢?あぁ、アレックスの妹君だったかな?」
殿下のお声ですわ。
初めて聞く殿下の声は変声期前の少し高く柔らかい声
出来れば傍でその優しい声をかけて頂きたい、そう思うのだけど
何故だか、急にズキズキと頭か痛くなりだした
「そうだよ、初めて見るけど本当に瞳の色が変わってるな」
「えっ、そうかな。普通に青に見えたが?」
兄の友人の騎士団長のご子息と魔法師団長のご子息だ
「いいや、俺は青から緑に変わるのを見たぞ」
「・・・そんなわけ無いだろう。そんなの聞いたこと無い」
「シルヴィアの瞳は生まれたときからそうだぞ。
普通は濃い青だが緑にも黄色にもオレンジにも見える。そう言う瞳だ」
憮然とした声のお兄様が友人2人にご説明されています
「へえ、聞いたことがあったけど本当にいるんだね。もう随分と昔の王女も持って生まれた特殊で奇異な瞳ってやつだろ」
殿下もお兄様の説明を聞いて答えます
─────ズキッズキッ
あぁ、また頭が痛い
「あぁ、そうだと聞いてるけど」
「へぇ、そうなんだ。でもさぁ、色が変わるってなんか魔女みたいで怖くねぇ」
─────ズキッズキッ
騎士団長ご子息が失礼なこと言いますね。名前はなんと言ったでしょうか?
頭が痛すぎて名前が出てきません
高位貴族の同世代についてはすべてお名前を把握していますのに・・・今は頭が割れそうに痛い
「魔女って!酷いなぁ。魔女に失礼だろ」
魔法師団長のご子息も酷いと言いながらゲラゲラ笑っています。もう、なんですかそっちが酷いですわ
「アレックスはその目でいつも見られてるんだろ、いやぁ俺は無理だなぁ。殿下もそう思いますよね」
バシバシと可哀想にとお兄様の肩を叩きながら騎士団長ご子息が笑いながら言っています
本当にこの人は何なんですか?いったい何が可哀想なんですか酷すぎます
「・・・そうだな、あの瞳で見られるの・・・いやだなぁってときもある。・・・・・・」
─────ズキッズキッズキッ!
あぁ・・・頭が痛いです。
「う~ん・・・なんていうか、ちょっと怖いというか・・・ありえない瞳色で見つめられると思うとゾッとする」
─────ズキッ!!!
フェリクス殿下の声を聞いた後、目の前が真っ白になるくらいの強い頭痛が襲ってきた
立っているのが辛く身を隠していた柱からヨロヨロと出て手すりを掴み離れようとするのですが、体中が酷くしびれて思うように足が動かない
あぁ、やっぱり悪役令嬢は攻略対象に最初から嫌われていたのね
何故だかそう思って納得してしまい
すぅーっと意識が遠のきそのまま大理石のタイルが敷き詰められた冷たい床に倒れこんだ
「キャーッ、お嬢様!」
薄れ行く意識の中で侯爵家から連れてきたメイドの声とその声で何人かのバタバタと近づいてくる足音が聞こえた
閉じる前の視界に映るのは、お兄様と殿下たちの困惑と驚愕が入り交じった顔でした。
読んで下さりありがとうございます
まだまだ稚拙な文章ですがよろしくお願いします
叱咤激励おねがいします
※いくつかご指摘があって不快な表現だったので変更しました
爬虫類⇒魔女
私の語彙力と知識不足で不快な思いをさせてすいません