王宮からのお使い
「お嬢様、本当にそのままでいいんですか?」
王宮の使者との面会用に着用した薄いグレーのドレス姿を見てスーザンが言う。
ビロード生地の抑えられた光沢が、上品でオフホワイトのレースが襟と袖口にあしらってあり 長い袖は、ラッパ袖 スカートもドレープがあってふんわりしているが、ぱっと見、メイドのお仕着せと大差がなくも見える。
「失礼すぎるかしら?」
「いえ、失礼ではないと思いますきが、ちょっと地味すぎるかと思います。」
「いいのよ。質問に答えるだけだし、これっきりで、私に何か縁があるとは思えないわ」
「まあ、そうかもしれませんが、いつもの明るくて、朗らかで、天真爛漫で、周りを小鳥が飛んでいるようなイメージとは、違うので、何となく心配です。今日のお嬢様は、 何というか、大人のような、話し方をなさいますし、落ち着いた装いでそのような口調ですと、聡明な貴族のお嬢様みたいに見えますので、誤解を招く可能性がございますよ」
「誤解って?」
「王太子妃にふさわしいとか?」
スーザンは、ニマッと笑う。
「それはないわよ。スーザンって、本当にはっきりいうのね。
でも、大丈夫よ。 取って食われる訳じゃないでしょう? 沢山いる令嬢の一人というだけなのだから、お使いの方がスムーズにノルマをこなせるように可もなく不可もなくって言う感じで対応するわ。 きっと本命は、だいたい他で決まっているのでしょうしね」
話していると馬車の止まる音がする。
「あぁ もういらしたわ 。 こういうのって玄関でお待ちしてなきゃいけないわよね。さっ 急がないと」
「あっ、お嬢様、お待ちください」
スーザンの言葉を振り切って、小走り気味に階段を降りて下から2、3段目で段を踏み外してしまい、前のめりになる。下にいたゲリーが急いで私を受け止めているところに、ノックがした。
「間に合ったわ」
「メイ様」
ゲリーの視線が、痛い。
「大丈夫でございますか? 迎えに行くまで部屋でお待ちいただくようにスーザンには、申し伝えたはずですが」
「え そうなの?
ごめんなさい」
そう言っているうちにドアが開く
「フィッツランド宮より参りました近衛騎士のアルベルト フォン アーバインと申します。本日は、急な訪問をお許しいただきありがとうございます。」
うわぁ。 淡い如何にもな金髪に青い目のイケメンだよこれ。30になってないな。
私は、何食わぬ顔で一歩前に出て
膝を曲げ、挨拶をしてみる。本当の挨拶の仕方とか、覚えてないけそ。
「メアリー ジョセフィーヌ サザーランドでございます。 本日は、ご訪問ありがとうございます」
微笑を浮かべて目を合わせるとちょっと目を見開いた。
「お嬢様直々にお出迎えいただき、恐縮です」
あれっ 迎えに来るのって、礼儀違反だったのかな。ゲリーを見るとちょっと苦笑している。
あちゃー。 もうやってしまった。
それでもゲリーは、ごく自然に、訪問の人に声をかけている。
「さっ 、こちらにどうぞ。公爵夫人と嫡男のデイビッド様が応接間にてお待ちです 」
お兄様とお母様もいるのね。学校の家庭訪問かこれ。
「お嬢様は、あとでお呼びしますので、学習室でお待ち下さい。アーバイン様は、最後にお話をされるそうですから」
あーそういう順番になっているのね。
「はい」
カッコいい騎士の人は、情けない声でで返事をした私をチラ見してた。バカにしたようではなかったけれど、まあいいか。 子供だし。
後ろでスーザンが、ちょっと怯えてた。 ごめんなさい、きっとあとでゲリーさんに怒られるよね。 スーザンのせいじゃないって、ちゃんとゲリーに伝えなきゃ。




