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ボケッとしてる  作者: ミーリア
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スーザンに今日の予定を聞くの

朝食を終えて私室の部屋のドアを開けると元気に声をかけられた。


「お嬢様!」


「スーザン」

スーザンは、ベッドカバーを外していたが、手を止めて、エプロンのポケットから紙を取り出し、私に歩み寄る。


「ゲリー様に聞きました。ゲリー様が、簡単な字で書いたメモを前の晩か、朝に用意するから、私が、朝、それをお嬢様に聞かせればいいと」


「ありがとう。それで、十分だわ」


「私で、わからないことは、なんでもゲリー様に聞いて良いといわれました」


「そうね。そうするわ。それで、手に持っているのは、今日の分のメモなの?」


「はい。えーっと、今日は、午前中に、アンナ先生の礼法と歴史の授業。午後、アフタヌーンティーのときに、王宮からお客様がいらして、お嬢様に会いたいということでした。 

本当は、先週の予定だったのですが、お嬢様が、倒れていらしたので、キャンセルになったのですが、期限があるので、いそぎで、簡単な質問に答えてほしいと昨晩知らせが来て、困った様子だったので、受けたそうです。」




「王宮?ねえ、王宮から、お客様って、よくあることなの?」




「いいえ。私の覚えている限りでは、めったにないです。旦那様には、届け物や、報告のような方がいらっしゃることは、ありますが、お嬢様に、というのは、初めてです」


「質問って、どんなものかしら?」



「わたしには、わかりません。ゲリー様は、『お嬢様だけに会いたいというあたり、王子様の婚約者選びのための面接ではないか』と言っていました。」



「えっ、それって、もしかしてすっごく大変なことじゃない」



「はい。でも、お嬢様のことは、繕っても仕方がないので、特に準備せず、ありのままを伝えなさいと旦那様からの指示があったということで、何も準備をしないでよいとのことでした。 

私共は、お客様のための準備は、いたしますが」


「それって、何も期待してないっていう意味よね。」


「それについては、なんとも私には言えません。

ただ、他のお屋敷のメイドに、市場で会ったときには、それはもう、どこの家のお嬢様とご家族も、ドレスや化粧も整え、作法も厳しく教えて、徹底した準備で、このお使いの方を迎えているとのことでしたけれど。」


「お父様は、正しいわ。私、普通にしているわね。」


「いえ、お嬢様の今の姿は、普通ではなくて、まるで、本物の貴族のお嬢様のようです。」



「何となく言いたいことは分かるわ。みんなの私に対する扱いから。」


「お嬢様、変ですよね。」


「あら、わたしは前から変なのでしょう?」


「いえいえ、お嬢様のヘンは、今のヘンとは全く異なります。」


「うーん。昨夜から記憶がないことと関係あるかしら?」


「え?記憶がないんですか?いつものように宿題出されたことも忘れたとか、旦那様に頂いた宝石を埋めた場所を忘れちゃったとかじゃなくて?」


「んーー、それはいつもそんな感じなの?わたしって。」


「お嬢様が、家庭教師のマーヴィン先生の授業中に、小鳥が外にきていると仰って、何も言わずに外に出て行って木に登り、何時間でも小鳥の巣を見ていて、夕方になっても見つからないと警邏の者も呼ばれて捜査網が街中に。それが国中になろうかというところを破れたスカートで食堂に雛鳥にあげるパンをもらい来て見つかったのは、去年の出来事です。」


「そうなのね。ごめんなさい。」



外出すれば、一瞬の隙に居なくなり、一人で蝶を追っていたり、遠くのお店で保護されていたり。

 行方不明はお小さい時から何回もです。


宿題もレッスンさえも予定を何度伝えても、覚えていないのが通常です。


公爵様に頂いた宝石を大事にしようと思われてか、庭に埋めたり、誰も知らない物置のツイートツボに入れたりなさるんですが、後で、自分が隠した場所も、隠したこと自体忘れてしまい、使用人総出で、探すことになったこともあります。

失くしものに関しては、何回もではなく、ほぼ毎日でございますから、皆慣れたものです。


井戸の中に落としていたり、鶏の卵と一緒に筆記具が置いてあったり、場所も様々でございます。



そんなに教えてくれなくてもだいたい想像はつくわ。


でも、今回は忘れちゃったっていうよりも、記憶がないの。




記憶がないんですね。

ゲリー様に相談しますか?


「ねえ、ゲリーって、50歳ぐらいの、黒い髪に白髪交じりで、目が細い、ちょっと視線の鋭い人よね?」


「はい。そのとおりですけど、本当に覚えていらっしゃらないんですね。」


「えっ。ではもしかして、お嬢様。わたしのことも覚えてないんですか?」


「うーん。可愛らしい女性が、わたしに良くしてくれていたことは覚えていて、あなたの顔には、親しみがあって、大好きって、思いは、あるのだけれど」


「ショックですー。あーだから言っていないのか。それでも、大好きって思いが残っているのは、嬉しいです。 このことを旦那様や奥様に、お知らせしたほうがいいですよね。」


「そうね。でも、だんだん思い出すかなーって思うの。 

お父様やお母様、お兄様が、私に優しいってことや、暖かい思い出があることは、心が覚えているのよ。

少しずつ思い出しているから。記憶がないとか告げて、あまり、家族に、負担をかけたくないわ。あーでも知らせないと迷惑をかけるかもしれないわよね。うん。やっぱりゲリーを通じて伝えておいてくれる?私だと伝えなきゃいけないこと自体を忘れそうだから」


「わかりました。ゲリー様を通して伝えます。分からないことがあれば、いろいろと教えますよ。」


「ありがとう。スーザン。大好きよ」


「それ、変わりませんね。 お嬢様は、いつも、『スーザン、大好きよ』って、言ってくれていました。」


「ところで、お父様は、どこにいるの?」


「今、外交で、隣国にいらしていると聞きました。」


「お父様は、外交官なの?」


「がいこうかん?えーと、外交を司る大臣だときいています。」


「外務大臣?」


「はい。それです。」


「そうなの、すごいのね。」


「はい。でも外国にいらしたときには、必ず、たくさんのお土産をお嬢様やお坊ちゃまに持ってきて、お菓子などだと、必ず、お嬢様は、私に分けてくれるんですよ。市井のお菓子と交換ですけど」


「まあ、そうなの?わたし、ちゃっかりしてるわね。」


「はい。それはもう!」


「フフッ」


「あ、お嬢様、今日、初めて笑いましたね」


「そう?スーザンのおかげよ。ありがとう」


「いいえ」


少し頬を染めて嬉しそうにしているスーザンは、本当に可愛い。


午前中、普段の私は、家庭教師が来ても集中が続かなくて、ぼーっとしてよく聞いていないのが通常運転だったそうなのだけれど、

今日は、集中するようにしよう。

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