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ボケッとしてる  作者: ミーリア
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聖者とセルージュ先生と王家と私

あれから数日経って、ジェイが元気になってきた。

肩もしっかりと固定していれば、痛みも少ないようだ。

咳も格段に減り、眠っている時の呼吸音も静かになってきた。

清潔な部屋と十分な休息のおかげで、喘息も急速に良くなっていると思う。

ジェイの体が、快方に向かっていることに、ホッとしていたのに。

イケメンは、ジェイの寝顔とお兄様のお顔だけで十分なのに。

なのに、目の前にいる人のことが理解できない。

なんでクラウス様がまた家にいるんだろう?

数日前に、ヒステリーをおこして、お断りしたのに。

それも私の部屋に来ているんだろうか?

スーザンが、部屋でお茶の支度をしてくれているけれど、

何で難しい話を平気で小学生にしているのかしら。



「貧しい労働者を助ける方法は、彼らの生活を助ける制度や、資金を出すことだが、貴族が、気まぐれに、施す寄付では、やっていけない。 

ロワール国の清教会は300年前は、王より強い権威を持っていたといわれるが、今は強くない。

だが、いまだ、清教会に献金する貴族も多く、儀式だけは、清教会で行う者が多い。多くの者が、儀式などのために、必ず寄付をする清教会が援助すれば、十分に貧しい人たちを援助できるはずなんだが、清教会は、貧しい者たちに割く資金は、全体の1%に満たない。

一方で、聖者セルージュの啓示に従う聖者教会は、権力者や多くの金を持つ人々に、人気がないから貧しい者たちを助けられるだけの資金力がない。

何故か分かるかい?」


「きっと聖者教会が発表する創造主の啓示の内容が必ずしも権力者が気にいるようなものじゃないからだわ。

でも、清教会の信者の中にも貧しい人々がいるでしょう? 信者だけでも助ければいいのに、なぜ、1%しか割かないの? 」


「清教会の中にも貧しい信者を助けようとしている人たちはいるさ。だが、教会に集まった資金の分配は、本部が行う。

そして清教会本部は、貧しい人を助けることに力を注ぐ代わりに、金を持つ新興の平民が儲かるような法が成立するよう権力者に働きかけているのが実態だ。

清教会で一番偉い司教達は金を持つ人々の寄付で自分自身の城を持ち土地を与えられ、煌びやかな服を着て、妻を持たずに主に仕えると言いつつ何人もの愛妾を持ち、自分の子供達に法外な贅沢をさせている。」


「それは、酷いわね」


「でも、その清教会を支持している人々がこの世界の大半になっている。 一方で聖者教会は、教える者も自分で職業を持ち教会への寄付を自分たちのために使わない。寄付の9割以上を必要な人々、特に貧しい人々に、分けている」


「そう聞くと、聖者教会の方が、正しく聞こえるわ。

聖者教会に資金が集まればいいのにね。

でも、その聖者教会だって、権威を持ったら

同じようになってしまうかもしれないわよね。」


「その通りだね。

だけど聖者教会の信者には、教会が行なっていることや、聖者が言うことが真実かどうか分かる方法があるんだ。創造主を信じて謙遜な気持ちでその真実性を問うと疑いようもなく体が暖かくなり、それが真実かどうかがわかる。

聖者が道を外れて、正しくないことを告げれば、何の反応も起きない。 教会全体に、自浄機能があるんだよ。そして、創造主からの啓示を伝えているならば、その啓示は、常に慈愛と正義に基づいた正しいものとなるんだ。

そして、その、真実を知る感覚は、聖者の血筋の者に特に

濃く現れると言われている。」


「その感覚というのは、少しわかるわ。 セルージュ先生が話すときに、

心がひどく温かくなるもの。 まるで、湯たんぽを胸に抱えているみたいに、

わぁーと温かくなって、いい気持ちになるの。 それは、血筋だからって、セルージュ先生も言っていたわ。」


「そう。

聖者の血を引く王家と公爵家の者たちには、敏感に、聖者の言葉の真実性を感じる者が多い。

今、この国にある7公爵のうち、

聖者教会を強く支持している公爵家が、4つある。

サザーランド公爵家、グレイル家、アーバイン家, そして、聖者セルージュを輩出したベンソン家の4つだ。

カニング家は、清教会支持派だ。

コープ家、ギラード家は、中立だな。その時々の利害に応じて、動いている。

この国の王家、公爵家となると聖者の血筋だけあって、他国よりは、聖者を支持する者が、圧倒的に多い。 しかし、心が離れたときには、逆に酷い敵対者になることが多い。 カニング家は、その先鋒だ」



「どうして、聖者は、この国にしかいないの?」

「聖者教会は、聖者がたてたと言われている。

でも、権能のある聖者は、300年前に皆、清教会の異端審問官に殺されてしまったんだ。 昔の聖者は、メアリーのいうような癒しや異言を話す賜物、雨を降らせたり、猛獣をならす力を持っていたと言われる。 その聖者が次の聖者に権能を授けることで、創造主から力が注がれていたんだが、全ての権能を持つ人が殺されてしまい、誰も受け継ぐことができなくなったんだ。

その時に、予言を受けて生き延びた聖者の妹が王家に嫁ぎ、その姫が産んだ第1、第2王子が、霊感に優れていてね。 その中でも第2王子は、まるで、創造主と顔を見合わせて会話をするように、み言葉を受けていたらしい。 第1王子は、王家を継ぎ、第2王子はベンソン公爵となったが、ベンソン公爵の家系には、代々、創造主の御心を知る力だけが、血によって受け継がれている。世界中に、ベンソン家以外には、聖者が出ていないのだよ。」


「王家は、どうなの? その姫の第1王子の家系なのでしょう?」


「王家もそれなりに、霊感が強いと言われている。 だから、父陛下も私も、聖者の言葉を聞くとき、心にそれが真実であるという印象と共に、受け取れるし、父陛下は、国の方向を決める重大な決断のときには、聖者と話をして、それが御心かどうか、啓示を求めることがある」


「そう。ならば、創造主に、食べ物ください! 子供たちを助けて、悪い人に天罰を下してください!って、頼めばいいのでは?」


「創造主が、行動するときもあるかもしれないが、通常は、人が動くことを求められている。 人が自分で考えて、行動する指針を啓示によって、もらうのが精一杯なんだ」


「なんでかしら。 創造主が、全てやれば、ジェイやジェイのお母さんみたいに酷い苦労をする人もいなくなるでしょ?」


「私にも、なぜかは、わからない。だけど、こう思うんだ。創造主が、この世界と人間を作った理由は、人間が、創造主のいないところで、どれだけ、慈愛と正義の法則に従い、行動することができるのか見るためなんじゃないかって。

試練って、言葉があるだろう?

苦労したときに、どうするか、試しているんじゃないか?

試験をしているときに、解答があらかじめ示されていたら、誰も努力をしない。

火に近づいたら火傷をする。 だが、火に近づいても、いつも主が守って、火傷をしなかったら、子どもは、火に近づくのをやめないだろう? 苦労や悲しみがあっても、必ず守られると分かっていたら、その人は、学ぶだろうか?」


「それはそうだけれど」


「聖者と話をしてみるとわかるかもね。

と言うことで、その聖者が、言ったんだよね。 君が国にとって、祝福となるって。

私は、それが真実だと感じるんだ。

だから、私と婚約をしてくれないか?」


「どうしてそうなるの?」


「どうしてそうならないんだ?」


クラウス様は、当然のような顔をしている。

なんか、まるめこまれてるわ。わたし。

「でもメイは、ジェイと君が、幸せを招くという言葉に対して、

心が暖かくならなかったのかい?」



「な・・・・・なったけど。 きっとそれは、そうじゃなくて、単にセルージュ先生が

励ましてくれたことに対して心が燃えたのだと思ったわ。 私とジェイが、幸せを招くという言葉に対する肯定の意味じゃないわ」


「それに、セルージュ先生は、クラウス様と婚約するのが良いって、言ってなかったよ」


「メイが誰と婚約するか、聞きもしないのに、告げることはしないと思うよ。 いくら聖者であっても。

メイや相手自身が、創造主に尋ねる必要があるよ」


「そんなの尋ねる気にもなりません。 

ありえませんから」



「しょうがないね。

まあ、今日もこのぐらいにしておこう」


「じゃあ、婚約の件については、もしメイが主に尋ねて、正しいってわかったら了解するってことで。」



「いやいやいやいや。 主に尋ねる気がないって言ってるだけです」


「創造主は、メイに確実な答えを出すよ。絶対に。」


クラウス様は、この上なく幸せそうな顔をする。

そのお顔を見て、わたしは、嫌な感じは実はしないのだけれど。

でも王太子妃とか、王妃とか、ないないないない。絶対ない。

なんかの間違いだわ絶対に。










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