ジェイの夢
暖かなベッド。 柔らかな枕。 母さんみたいに優しい人がそばにずっといる。 母さん、ここにいたんだね。ねえ母さん、僕、お腹がすいたよ。
物音がしたのでゆっくり瞼を上げてみたら、茶色の長い髪が目に入った。
お母さんじゃない。
茶色い髪の天使かな・
きっとそうだ。
天使は、金髪が多いと思ったけれど、
あれは、大聖堂の絵がそれだっていうだけで、
誰も天使を見たことはないはずだ。
だって、聖教会の司祭は、天使の訪れは、3百年も前に止んだって、言ってたもの。
大聖堂が作られたのは、100年前だから、きっとあの絵を描いた人は、天使を見たわけじゃない。
でもこの人は、天使じゃないかな。 だって、この人は、寝ているみたいだけど、知らない人なのに、暖かい感じが伝わってくる。
そんなことをうつらうつらと考えていると、天使が、頭をむっくり上げて、僕の方を向いて、目を丸くした。
「ジェイくん! 目が覚めたの? 痛いところは? ああ、お腹がすいているわよね。
いえ、お水? ああ、スーザン、スーザン!!!」
天使の声が大きいのって、ちょっと意外かな。
天使は、その手で僕の前髪を優しくよけた。
「ごめんなさい。びっくりさせたわね。 ジェイくん。 わたしは、メイよっ!
あなたのお友達のえーっと名前を忘れたけど、あーとにかくお友達からあなたを引き受けたのよ。だから安心してね。 あなたの怪我や病気が良くなるまで、良い子で、看病されていなさい!」
「メイ様、ここはどこですか? 」
「 ここはサザーランド家の屋敷の中よ。あなたの友達のメイのお家よ。」
「サザーランド家って、丘の上の方にあった大きな大きな白いレンガのお屋敷?」
「そうね。白いレンガの家の中よ。」
「僕は、どうしてここにいるのですか。 僕、咳が出て、たくさん働くことができなくて」
「お金はいらないわ。 あなたは、わたしの友達の友達で、わたしの友達なの」
「よくわからないのですが、僕は、ここに居ていいのですか?」
「もちろんよ。怪我と病気が治るまで居ていいのよ。お金はいらないわ。もう一度言うわ。お金はいらないわ」
「わかりました。お金がいらないなら、病気が治ったら、この家に仕えればいいのですか?」
「それも必要ないわ。わたしは、あなたの友達の友達だからあなたを助けたのよ。それに、このことは、聖者様も許可してるの」
「聖者様?」
「そう。聖者様が、言ったの。あなたが、わたしと家族と国に祝福をもたらすって」
「祝福? 僕が?」
「そう」
「僕は、ただの孤児だ。 そんなことありえないよ。病気で、怪我もしていて、何もできない。僕がいたために、母さんは、無理して死んだんだ。 僕は、ただ、迷惑なだけだ。 工場長が何百回も言ってたように、僕はクズ以下だ」
「クズ以下じゃないわ。 あなたは、素晴らしい男の子よ。 お母様が自分の命よりも大切にしてきた宝物よ! あなたがクズ以下なら、わたしはクズについているほこり以下だわ。 でもわたしは、ホコリじゃない。 あなたもクズじゃない。だって、わたしは、いつか、宝物になるのよ。 誰かにとっての宝物。
んん。なんか、やる気も出てきた! あなたが頑張るなら、わたしも頑張ってみる 」
「何を頑張るの?」
「えーと、生きるのを頑張るのよ! 迷惑をかけても、生き続けるの。創造主が許したのよ。あなたが生きることを。 わたしが生きることも。
いつか、誰かの宝物になる日がきて、わたしもあなたも生きててよかった!ありがとう!って思うこともできるのよ」
「メイ様?」
「なあに?」
「メイ様って、もしかして、公爵家のお嬢様なの?」
「そうよ」
「僕は、本当にここに、しばらく居ていいのですか?」
「もちろんよ。」
茶色い髪の天使は、聞きもしないのに、お金はいらないと何度も繰り返し、友達の友達だから友達と言いつつ、その友達の名前(多分ロイのことだろう)も覚えていなくて、ちょっと話があっちこっち飛んでて、よくわからないけど、とにかく僕を励ましてくれて、心をあたためてくれて、本人も僕がいることを喜んでくれているようだった。
母さん、まだ僕は、母さんのところに行かないで、ここに居ていいのかな。
父さんも母さんもいた小さい頃のように、安心して過ごしていいのかな。




