表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ボケッとしてる  作者: ミーリア
17/25

お医者様

「スーザン、ジェイくんは、大丈夫?」


屋敷の端の一番静かなところにあるジェイくんのベッドルームに入るなり、

スーザンに、そっと、話しかける。



「腕が腫れ上がっています。服を脱がせる時 意識がないのにもかかわらず、うめき声をあげたので、かなり痛かったのではと思います。

顔を拭いたら綺麗なお顔で。」




「確かにイケメンね。」


目は閉じているが、スッキリした鼻梁に薄い唇 整った顔をほうっと見つめる。


「この子、ジェイくんって言って、お友達をかばって工場長に打たれたんですって。」


「まあ、可哀想に。こんな小さな子に、どうしたら、そんなことができるんでしょう。」


髪や体を洗うのは、体力を消耗するから良くないのだけれど、ばい菌やカビ、埃などを除かなければ、喘息にしても肺炎にしても治らないだろうから、スーザンに、体を綺麗にするよう、頼んでおいたのだ。




「お嬢様、お医者様をお連れしました。」


白い髭のいかにも柔和な雰囲気の紳士が、部屋に入ってきた。


「ドクターセルージェ! こんなに早くおいでいただいて、ありがとうございます。」


「いやいや、メアリー嬢、子供がひどく衰弱していると聞いてね。一刻を争う時もあるからな。」


セルージュ先生は、公爵家でお世話になっているおじいちゃんドクターだ。

この前、母が具合が悪い時に、来ていただいていた。

古くから続く家柄で、

王家が信仰する教会の長は、代々、この家から輩出されている。

教会長と言ってもちゃんと家庭があり、子供もいて、

教会のお金で暮らしているのではなく、領地にある畑と医師の収入で生計を立てているそうだ。

ちょっとしか会ったことがないけれど、

セルージュ先生の暖かい眼差しと使用人も貴族も区別なく、

誰をも人として尊重する態度には、

前世でも見たことのないほどの誠実さと謙遜さが感じられ、

サンタクロースの本物がいたらこんな感じかなーなんて、勝手に思っている。

私も大好きな人だ。


セルージュ先生は、

真剣な目でジェイくんをみて、細かく触診していく。


「鎖骨を骨折しているな。肋骨も何本か

親指の骨もだ。

骨折の方は、包帯と棒で固定して絶対安静が必要だ。おそらく、

激痛と呼吸困難によって気を失ったんだろう。

呼吸は、喘息のようだな。

ここ最近、工場の多い地域で特に、多くなっている症状だ。」



「こんな小さな子供が何て痛ましい。」

スーザンが、見ていられないという様子で、顔を顰める。


「しかし珍しいことでは、ないのだよ、スーザン。

私は、こんな子どもをこのところ、頻繁に診察している。」



セルージュ先生は、眉間にシワを寄せ、深刻な顔をしている。


「メアリーお嬢さんは、この少年を屋敷にしばらくおくおつもりで?」


「はい」


「よかった。そうでないとこの子は生き延びれまいよ。

暖かくして目を覚ましたら、スープなどの柔らかい食事を少しずつ与えて、とにかく安静だ

静かにして栄養を取れば

骨折は、1ヶ月ぐらいで、大分治るだろう。」



「安静にしていれば治るのですね。良かった。

お父様とお母様に許可は取れるかしら。」




「私からも、公爵ご夫妻に、話をしておこう。きっと公爵ご夫妻ならば、受け入れてくれるだろう」


「ありがとうございます。セルージュ先生」


「いや。この少年をあなたが見つけてくれて、良かった。 どんな子も大切だが、

この子は、特に大事な役割を持っているように感じるよ。

メアリー嬢とこの子が出会うことで、この家族、この国にも幸運が舞い降りてくるに違いない」


「国に幸運が舞い降りる? それは、どういう意味ですか?」


「詳細は、わからないが、この子が、ここに来たことで、貴方と、公爵家と、王家に、1つ大切な明かりが灯ったように感じるのだよ。 私のこれは、血筋でね。人と会っていると、たまに、そういう印象が天から下ってくるのだ」


天から印象が下ってくる?

あーっ。セルージュ先生は、教会長さんだったわね。

啓示っていうのかな。そーいう感じなのか。

突飛な言葉なのに、なぜか

先生の言葉は、柔らかな春の日のように、すーっと心に滲んでいく。


「セルージュ先生に、そう言われると、心が納得するような気がします」


「それは、メアリー嬢には、私と同じ血族の血が流れていて、主からのメッセージを感じやすいからかもしれませんな」


「同じ血族の血?」


「ええ、王族と全7公爵家の血は、繋がっているのですよ。だから、この国の王族と公爵家は、主の導きを受けやすい。 さらに、メアリー嬢、あなたは、特別に慈愛の賜物があるように感じますよ」



セルージュ先生は、それこそ、慈愛のこもった笑みを私に向けた。その笑みが、あまりにも暖かくて、心を穏やかにするので、先生ご自身が、この子と私たちに明かりを灯しているようだと思うのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ