サッカー協会を追われた切れ者、最強軍団を引き連れ凱旋。現在の日本代表を撃破し真の日本代表、そしてワールドカップ優勝へ〜今更日本サッカー界に戻って来てくださいと言われてももう遅い〜
2038年、日本サッカーはドン底を迎えていた。とにかくめっちゃ勝てない。敗戦後の弁は決まって監督の
「自分たちのサッカーが出来なかった」
ノーコメントで引き揚げた男、進藤大和はロッカールームでうなだれこう言った。
「自分たちのサッカーって、何?」
「自分たちのサッカーが出来れば勝てるのか?」
なんやかんや数日後、強化合宿で大和を含むメンバーが招集されシステム練習とかそういうアレをいい感じにこなしていた。
大和は敗戦のモヤモヤで練習に身が入らない。
遡ること前回の代表戦、とある産油国に0-4でボロ負け。個人技やフィジカルで敵わない上に最近は良い監督やコーチを付け戦略とかその他諸々もいい感じになってきた。
ボール支配率は互角だがそれはこちらの消極的なパス回しも一因している。
ボールを奪われればひとたび、あっという間に突破を許し点を奪われる。大和には「自分たちのサッカー」が分からない。そうして負けて先の敗戦の弁。この無間地獄とも言えるループに日本代表もファンも落胆していた。
そんな思考は意外な形で遮られる。
「おい!部外者は入ってくるな!」
「部外者?へへっ、15年前はそうじゃなかったけどなぁ…」
サングラスにスーツ、怪しい出で立ちの男の名は影山蓮二。本人曰く15年前にとある理由でサッカー協会を追われたらしい。
影山は続けた。
「俺の計画は15年前から始まっていた。だが協会は全会一致で俺の追放を決めた。今日はその間違いを証明してやるよ。入ってこい!」
影山の号令と共にゾロゾロとガタイの良いユニフォーム姿の選手が15〜6人ほど入ってきた。黒人と白人が半々、日本人は一人もいる様子はない。フランスのユースチームか?
大和はぼんやりとそんな疑問を抱いた。そして影山は続けた。
「こいつらが今日からサッカー日本代表だ。お前らは全員代表を辞めてもらう。」
「なっ…!日本代表て!日本人1人もいないじゃねーか!」
誰もが驚くのは無理も無かった。大和含め現・日本代表は呆然としている。
「驚くのは無理も無い。こんな出で立ちだからな。だが彼らは正式に日本で生まれ日本国籍を有しており日本の義務教育も修了している。日本語もペラペラだ」
「ただ唯一コイツらがお前らと違う点は、各国のサッカーエリートを日本に帰化させ、子を産ませ、海外のサッカーコーチを招集したエリート施設で極秘裏にサッカーの練習をさせていた点だ。練習試合も日本ではさせず海外に遠征し行なっていた。」
「み…認めないぞ!そんなの!」
声を荒げたのは現・日本代表の喜多川健太だ。
「サッカーの為にそんな見境ないことして…こんな連中がサムライブルーのユニフォームに袖を通せる訳ないだろ!」
「何故通せない?」影山は短く言った。
喜多川含め一同は黙った。「日本人ではないこと」を理由にしたいが先の影山による説明の通り彼らは一応日本人である。
論理的な反論が浮かばない一同に影山は続けた。
「なんならここで練習試合でもすればいい。こちらは全員15〜18歳だがハンデは要らない。まあ押しかけて言うのもなんだから我々が2点差を付けられたらその時点で我々の負けでいい。逆にこちらが2点差を付けたらこちらの勝ちだ。試合時間は40分。どうかね?」
「やってやろうじゃねえか!こんなガキンチョに俺らが負ける訳ねーよ!コイツらが持ってない侍の魂を『俺たちのサッカー』で分からせてやろうぜ!」
喜多川が威勢良く啖呵を切り練習試合で戦うことが決まった。
だがその間、心に何かが引っ掛かっていた大和は何も言い出せずにいた。
試合が始まった。
大和たちはボロ負けした。
開始7分で立て続けに2点入り終戦。影山チームは最新式の戦術と圧倒的なフィジカルで赤子の手を捻るように現・日本代表に圧勝した。
こうして協会も納得させた影山は自身のメンバーを全員日本代表にメンバー入りさせ影山監督体制のもと新しい侍が誕生した。ちなみに大和と喜多川はサッカーを引退した。
当初は肌の色で賛否両論を呼んだが、影山ジャパンは結果で黙らせて行った。
そして影山ジャパンはW杯で優勝し世界一となった。
優勝インタビューで影山日本代表監督は誇らしげに答えた。
「自分たちのサッカーが出来ました。」
Happy End.