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40話 会いたい人は

里川未来VS巨大タコです。

 

「前方に大きい気配あり! みんな気いつけや!」


 雨で視界が見えづらい中、里川未来は【神眼】を頼りにパレードボスの居場所を探していた。

 一時的な仮拠点を確保してから20分後、一際大きな気配を察知する。


(――いた!)


 パレードボス――巨大なタコを見つけた未来は、瞬時に頭の中で戦略を練りシミュレーションをする。

 ――と、その時巨大タコの足が一本、正面から迫っていた。


「全員散開!」


 未来の言葉で散り散りになった部隊員たち。

 ――ドゴーンッ!!!

 巨大タコの攻撃は、重く鈍そうな音を出して地面へと激突する。


「攻撃もろたら危険やで! 止まるな!」


 吸盤がついた巨大な八本の足が隊員たちに襲いかかる。


「――ぐうっ!!!」


 一人、横からくる攻撃を盾で受け止めた者がいたが……


「――がはっ!!!」


 威力に抗うことができず、そのまま横に転がされる。

 すぐにヘルプに入る他のメンバー。

 ダメージを負った者を抱え、すぐにその場から離れる。

 雨が降っていたのは幸運か不運か……足元がうまく滑ったことで、足の攻撃によるダメージを全部負うことなく、しばらくすれば再戦できるようだ。


(天候もあって普段の力が出せてない。やっぱり、ここはウチがやるか)


 隊員たちの戦闘を見て、不利な状況にあると選択した未来は、気持ちを固める。


「全員下がれ! パレードボスはウチがやる! でも小物は頼んだで!」


 パレードボスに敵わないことに、悔しさを感じた者もいたがすぐに切り替え、未来と巨大タコの戦闘に巻き込まれないようにしながら周りにいる魔物を倒すことにする。


「いくでポッカ! 眷属融合!」


 自身の眷属であるホットスライムのポッカと融合する未来。

 身体に炎を纏い巨大タコに突進する――が、横から足が迫る。


「――うおっ!」


【空賊】のスキルである空中蹴りを使い、上空へと回避する未来。

 そして、その未来を追い、巨大タコは八本の足全てを上空に伸ばし追撃する。

 空中を蹴って上下左右に、身体を捻りながら、スライムの特性を生かし腕を建物に伸ばしながら、ランダムに繰り出される八本足の攻撃を回避する。


「洒落臭いなぁ……!」


 頭にキタわぁ……。

 普段から我慢することが苦手な未来は、劣勢の状況が続くことに、頭がすぐに沸騰する。

【武器庫】から刀を四本取り出し、武器操作で自分を囲むように宙に浮かせる。


 四本の刀を巧みに操り、攻撃を回避しながら火魔法を放つ。

 そして、高速で攻撃を避けながら反撃していると――刀が自分に向かって飛んできた。

 このままでは刀が刺さりダメージを受けてしまう。

 だが、未来は笑っていた。

 そして、スライムの特性で刀を飲み込むと……


「眷属融合……」


 静かに呟き未来の右腕が刀の形になる。

 どこまでも伸びる灼熱の刀は、巨大タコの足を簡単に焼き切り焦げた匂いを漂わせる。

 残りの三本の刀も、未来に向かって進んでいく。


「ここから全部、ウチのターンや!」


 四肢が全て刀になった未来は、空を蹴り伸びる焔の刃で敵の足を切り裂いていく。

 その姿はまるで、炎と踊っているかのような光景。


「オォォォォオオオオ!!!」


 怒りと痛みが混じった悲鳴をあげる巨大タコ。

 残った六本の足で、未来を絞め殺そうと考え、全ての足で取り囲む。


「効くかっちゅうねん!」


 ――スパスパスパスパスパスパスパッ!


 炎の渦を発生させ、回転しながら自分を囲む足を切り裂く未来。

 さらに悲鳴をあげる巨大タコに、今度は未来が追撃を仕掛ける。

 地面を蹴って上空に行き、右手を上に掲げる。


 ――ゴウッ!!!


 テンションが上がった未来は、ほぼ全ての魔力を使い、巨大な炎の刀を作り出した。


「しまいや!」


 そのまま巨大タコに向かって勢いよく刀を振り下ろす。

 爽快な斬れ味を見せた炎の刀は、そのまま地面をも焼き切る。

 雨で冷えた空気と、灼熱の炎で辺りはすっかり湯気が立ち込めている。

 そして……


 《この地区の行進ボスが撃破されました。これより魔物行進を終了します。なお、制限時間外クリアのため報酬はでません》


 この地区にいる者たちに、頭の中にアナウンスが鳴り響く。


「はぁ〜。あかん、張り切り過ぎたわ。もう一歩も動けん。ポッカもありがとう」


 雨で濡れた道に寝転びながらポッカに話しかける未来。

 ポッカも主人に褒められて嬉しいのか、未来によって魔力を使い果たした体を横にぷるぷると振っている。


 ――完勝。


 しかし里川未来よ。油断大敵である。

 里川未来によって真っ二つに斬られた巨大タコ。

 倒れてくるのは必然。

 そしてその下に……


(あっ、あかん。……死ぬ)


 迫る大きな影。

 視界が徐々に狭まっていき、目の中に入っていた雨が消える。


(ごめん香澄ちゃん。ウチ、先に逝ってる)


 圧死を覚悟し、目を閉じた未来。

 そしてその時、一人の女性が未来の前に立ち塞がる。

【異空間倉庫】から長包丁を取り出したその女性は、縦に真っ直ぐ振り下ろす。


 ――ドゴンッ……!


「見ててよかった……」


 激しい音と、静かな声に瞼を開ける未来。

 目の前にいたのは、かなりの胸部の持ち主――汐田澪だった。


「はぁ〜しにがみはんに仮ができたな」


 見ててよかった……と、呟いていたことから、きっとしにがみが、自分の心配をして先生を付けたのだろうと予想した。


「あとは任せてくれていい。しばらく休んでいなさい」

「ありがとう。じゃあお言葉に甘えて……」


 ポッカを【眷属倉庫】にしまい、未来は雨の中でも眠ってしまう。

 澪は未来を背負ったあと、携帯を取り出して竹中の元へかける。


「……大阪班汐田澪。里川未来によるパレードボスの討伐を確認。これより殲滅に入ります」

『了解や。先生が連絡いうことは、未来はんは力尽きて寝てしもたんか?』


 若干付き合いの長い竹中は、見ずとも現状を推測できるようだ。


「はい。頑張ってくれましたよ」

『ほな、今回のことは青空はんには黙っておくか。ハハハハッ』


 豪快に笑ったあと通信を切る竹中。


「ぐふふ、しにがみはん」


 澪の背中で寝言を吐く未来。

 澪は蓮が出てきたこともあり、雨の音よりも未来の声に耳を傾けてしまう。


「ひょっとこにしてもモテへんよ〜」

「……くすっ」


 今、未来の夢の中では、蓮がウサギの仮面からひょっとこのお面にイメージチェンジをしていたのだろう。

 思わず蓮がひょっとこ面を付けているところを想像し、笑みをこぼしてしまった澪。


「香澄、ちゃん……まだ……」


 今度は親友の名前を呟く未来を見て、なるべく早くベッドで寝かせようと思い、澪は足取りを速くした。




読んでくださりありがとうございます。

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