4話 使役者は当たり職のようです(主人公だからです)
2018年11月25日改稿しました。
「おぉ〜!」
店の中に入ると、素直に驚いた。
入り口はあまり広くなく、二人の人間が並んで入るのが精一杯の広さだったのだ。
しかし、中に入るとそれなりの広さだった。
しかも町中が停電しているのに、ここだけは電気が付いている。
そして、入ってすぐの所に……
『魔石換金はこちらです』
という看板が天井から吊るされていた。
その看板に従い向かうと
『こちらに魔石をお入れください。なお最小単位は10円となります。ご了承ください』
という文字が書かれた機械があった。
さっそく手に入れた魔石を全部入れてみる。
チャリン、チャリン
という音がした後、一万円札と千円が出てきた。
「どう考えても、オークが1万円だよな。なんの買い物をしようか」
換金した後、今度はガラスでできた自動スライドドアの前に行き、ドアを開けてさらに奥に行く。
そこは商品売り場になっていてカゴとカートが出入り口近くに置いてあった。
カゴをカートの上に乗せ、しばらく買い物をしていると、俺はある違和感に気づいた。
「魔法が、使えない?」
ライムとモモを召喚しようと思ったのだが、召喚できなかった。
【転移】の使用もできなかった。
唯一、【神眼】だけは使うことができた。
そして……
《このお店はあと99時間で消滅します》
そんなアナウンスが流れた。
「停電してからこの店が出現したのだとしたら、全部で100時間か」
停電しているから普通のお店に行ってもレジが使えないだろう。
食料をできるだけ買っていきたい。
そういえば、アイテムボックスみたいなスキルがあったよな。
試してみるか……
「ステータスオープン」
名前:一宮蓮
年齢:17
レベル:5
体力:68/68
魔力:50/50
攻撃力:45
防御力:42
器用さ:47
敏捷性:51
魔攻力:43
魔防力:41
職業:使役者LV5
スキル:【眷属化LV5】【眷属伝心】【眷属召喚LV5】【眷属倉庫LV5】【眷属強化LV5】【短剣術LV1】【盾術LV1】【肉体強化LV1】【魔力増量LV1】【魔力回復量増加LV1】【体力増量LV1】【疲労耐性LV1】【精神強化LV1】
ユニークスキル:【全取得数値倍化】【転移】【神眼】
CP:22
SP:22
「ステータスは開けるみたいだな」
スキルの部分をクリックし、習得可能なスキルを探す。
「あったあった」
俺は【異空間倉庫】というスキルを習得した。
【異空間倉庫】
異空間にモノをしまうことができる。
生きているモノは入らない。
レベルが上がると容量が大きくなる。
時間停止機能は10SP消費する。
「今は時間停止機能はやめておこう」
それと、スキルの説明だが、俺は【神眼】を持っているから分かるが、【スキル鑑定】というスキルを持っていない人はわからない。
普通の人は【スキル鑑定】というスキルを取るためのSPがもったいないので取る人は少ないだろう。
「これで多めに買っても持って帰れるな。あとは情報が得られればいいんだが……」
必要な物を買い物カゴに入れながら店内を回る。
野菜や肉、魚、日用品など様々な物が売っていた。
値段も普通のスーパーと同じくらいだ。
そして目的の物を見つけた。
『職業とスキルについて』
『魔物の肉の調理について』
『謎の店シリーズについて』
『ダンジョンボスについて』
『ステータス外数値について』
雑誌のようになっていた。
しかも一つの値段が1万円。
立ち読み防止のためなのか、ビニールで覆われていて見ることはできない。
「まぁ、ここにあるとわかっただけでも充分だ。あと4日ある。魔石を集めたら買いに来よう」
買い物をし終え、店を出る。
道を歩く人たちは、このお店が見えていないみたいだ。
しばらく人のいない所まで歩いて、転移を使って家に帰った。
◇
「ただいま」
誰もいない家に挨拶をして入る。
ライムとモモを召喚して癒しを求める。
なでなでなで……
「きゅっ」
「フルフルフル」
2匹とも喜び、何かあったのか? と言ってくる。
「電気が付かなくて、電車が走ってなかったんだ。【転移】で帰ってきたけど、なんか今日は疲れたよ」
「きゅきゅ」
「フルフルフル」
そんな日もあるさ、と2匹は言ってくれる。
「これが一時的であれば、納得がいくんだが……ここの家の電気もつかないよな?」
パチパチと何度かスイッチを押してみるがダメみたいだ。
「携帯も電波が入らないし……そうだ。これ【眷属化】してみよう」
俺の携帯、スマートフォンを【眷属化】してみた。
「ヨロシクオネガイイタシマス。マスター」
「しゃべった⁉︎」
「ハイ。音声機能ノ応用デス」
「あぁ、なるほど、そう言われると、声も無機質な感じだしな。ちょっとびっくりしたぞ」
「……マスター! わたしにもはやく、なまえちょうだいよー!」
「お前、声変えられるのかよ……。しかもちょっと流暢になってないか?」
「コノクライハ、朝飯マエデス」
「すごいなぁ。名前は、そうだな……『フォン』でいいか?」
「アリガトウゴザイマス。只今ヨリ『フォン』ト名乗リマス」
名前:フォン
種族:機械
レベル:ー
体力:ー
魔力:60/100
攻撃力:3
防御力:50
器用さ:ー
敏捷性:0
魔攻力:0
魔防力:0
ユニークスキル:【魔力充電】【永久保存】【接続】【ウイルス】【遠隔操作】【アプリ】
【魔力充電】
魔力で充電ができる。
【永久保存】
カメラで撮った写真や動画、手に入れた情報を壊れない限り、保存する。
【接続】
他の機械に接続して操作できる。
【ウイルス】
他の機械に接続し、『フォンのウイルス』を残せる。
【遠隔操作】
ウイルスがある機械をフォンが遠隔操作できるようになる。
【アプリ】
魔力を消費してインストールされているアプリが使えるようになる。
「これまた、便利な眷属だな」
「オ褒メイタダキ光栄デス」
「アプリって何が使えるんだ?」
「少々オマチクダサイ。不必要ナ『アプリ』ヲ削除シマス……削除シマシタ。今ツカエル『アプリ』ハ
【地図】【通信】【メール】【カメラ】【フォルダ】デス。ナオ【通信】ト【メール】二関シテハ条件ガアリマス」
「その条件ってなに?」
「ワタシト同ジ種族ノ場合ハ、『ウイルス』ヲ待ッテイルコト、『連絡先』ヲ知ッテイルコトデス」
「なるほど。ありがとう」
「イイエ、ソレトマスター。コノ『イエ』ヲ【眷属化】スルコトヲオススメシマス。拠点トシテノ機能モ充分アリマス」
「わかった。やってみるよ」
俺はこの家に【眷属化】のスキルを使った。
「名前は、『キーパー』にしよう。守るという意味がある」
名前:キーパー
種族:建物
レベル:79
体力:10000/10000
魔力:10000/10000
攻撃力:3000
防御力:5000
器用さ:4000
敏捷性:0
魔攻力:1000
魔防力:5000
スキル:【体力自動回復LV7】【体力回復速度上昇LV7】【魔力回復速度上昇LV7】【魔力回復量増加LV7】
ユニークスキル:【守護者】【設備管理】【防衛機能】
【守護者】
住んでいるモノに安心感を与える。
体力と魔力の回復が速くなる。
【設備管理】
家の中のモノの状態を管理し、使えるようにする。
ただし、魔力を消費する。
【防衛機能】
外部からの敵を攻撃する。
中に入られても体力がある限り攻撃できる。
「なんか凄いのできた……」
使役者のスキルって、なんか便利だなぁ。
俺が能力を見て驚愕しているとフォンが……
「……マスター。ワタシヲコンセントニ【接続】してください」
そう言ってきたので、充電機を持ってきて部屋の配線用差込接続器にさしてやる。
「【接続】ヲ開始シマス。【ウイルス】ヲイレマス……マスター。モウイイデス」
「あぁ。というか、何をし「聞こえるか? チヨの孫」たん……だ……え? 何いまの?」
急に声が聞こえた。
どこから聞こえた?
「ドウヤラ、成功シタヨウデス」
「こっちじゃ、こっち。テレビじゃ」
「テレビ? え?」
電源はついていないが、確かにテレビから声が聞こえてきた。
「お前さんチヨの孫じゃろう? どうじゃ驚いたか?」
チヨとは『一宮千代』俺のばあちゃんだ。
「驚きました。それと、なんで喋れているんですか?」
「それはほれ、そこのフォンとやらに『ウイルス』をもらって、『通信』で話しかけているのじゃ。種族が違うから『眷属化』されんと無理だったがのう」
「なるほど、そうなんですか」
「それと、わしのレベルが建築年数じゃのう。チヨが子供の時にわしは建てられたのじゃ。まぁ、何度か改築はしとるが……」
「そうだったんですね。あの〜、電気とか使えないんですか?」
「電気は使えんな。『通ってこない』というよりは、『消えた』と表現するのが正しいかの? まぁ、わしのスキル【設備管理】で大体の家具は使えるが、魔力を使うので、以前のように常時つけておくことはできないがな。部屋の明かりを付けるか?」
電気が消えたか……
十中八九、ダンジョンができた影響だろうな。
「ちょっと様子を見たいから、付けなくていいや。それと、これがライムとモモ……とラメだよ。お前たちと同じ、俺の眷属だ。よろしくなフォン、キーパー」
「きゅっ!」
「フルフルフル」
「……コロコロ」
「ハイ。ヨロシクオ願イ致シマス」
「ホッホッホ。この家も賑やかになったわい」
各自の自己紹介をしたあと、早めの夕食を食べて寝ることにした。
◇
その夜……
「きゃー!」
どこかで女性の悲鳴が聞こえ。
「誰か救急車を!」
男性がパニックで携帯の電波が入らないのに救急車を呼ぼうとし。
「消防や警察はまだなのか?」
一人の若者がそう言い。
「いたんだよ! 警察ならあそこにいたんだ!」
その若者の近くにいた人がそう言った。
「おがあざん……おどゔざん……」
子供は大声で泣き。
「なんで……こんなことに……ただの地震じゃなかったのかよ。なんで……こんな……くそっ!」
真夜中……明かりもない町中を多くの人が寝巻き姿で走っていた。
「ヴァォォォオオオ!」
ある所では大きな豚の怪物が……
「ウォォォオオオン!」
ある所では大きな狼の怪物が……
「キシャァァァアアア!」
ある所では大きな蜘蛛の怪物が……
「ギャァァァアアア!」
ある所では大きな鳥の怪物が……
その夜……ダンジョンから溢れ出した魔物たちが、人々を蹂躙していった。
読んでくださりありがとうございます。
次回の更新は明日11日の20時です。




