25話 続々到着
現在、次章のプロット作成に挑戦中です。
素人なりにやってみようかなと思っています。
――少し遡り、魔物討伐数500達成後――
【覚醒】の残り時間はあと110秒。
事前の調査と推測では、1000以上の敵がいたが、あとどれくらい残っているだろうか?
「クロ。【飛行】する」――(カー)――
『黒翼のパーカー』のスキル。
というより、クロのスキル【飛行】を使って、病院を目指す。
その際、【気配察知】にかかった魔物を見つけ次第狩っていく。
――シャリン――
上空から急降下し、狼の魔物の首を切り落として、すぐに【異空間倉庫】の中に入れる。
何回かそうした方法で狩っていたが……
「そろそろだな……」
【覚醒】の効果がきれ、ペナルティーが発生した。
右手に大鎌を持って肩に担ぎ、捕食のグローブをつけている左手を前に出した体勢で固まる。
(フィギュアって、こんな感じなのかな……なんか新鮮な気分)
そんなことを考えたが、すぐに思考を戻し、ちょっとした確認にはいる。
「あー、あー。声は出せるな。スキルは……ウィンドボール……使えるな」
風の玉が手のひらの少し前あたりから放出された。
「眷属装備は、どうなんだ?」
「ワタシハ特ニナニモ。モトモト動カナイ物ナノデ」
「…………そうか。ライムとミカン、ベリーはどうだ?」
攻撃系の装備であるこの三匹も動けないとなると、【覚醒】のスキルは本当に重要な場面でしか使えないな。
(ふるふる)(きー)(ウォン)
「スキルも使えず、動けないか…………装備解除。これならどうだ?」
装備状態の時は、それぞれに意識があっても俺の一部となっている。
だから解除をすれば……
「ふるふる」
特に問題ないと言うライム。ミカンとベリーも同じだ。
「ドウヤラ、【覚醒】ノペナルティーハ、使用者の特定動作停止ミタイデスネ」
「みたいだな……」
クロの【飛行】はもちろん、ライムの【触手】やミカンの【飛斬】はペナルティー時、装備状態では使用不可能か……。ベリーの【神速】も止まったままじゃ何も効果無いしな。
そして、一番の問題は、俺の戦闘スタイルの要である【気配隠蔽】だと考える。
動きながら気配を隠すスキルと、動かずに気配を隠すスキルが合わさったのが【気配隠蔽】だが……例えば、敵の集団のど真ん中で動けなくなったとき、俺の姿を捉えられるモノがいない、故に、踏まれ続ける、当たられ続けることになる。
何か踏んだ、ぶつかったが、まぁいいか、くらいの感覚で……。
さらに、流れ弾によるフレンドリーファイアの可能性も高くなる。
何せ戦闘中は、味方にも俺の存在が認識できないのだから。
まぁ、そうならないようにするのが一番いいが……。
「フォン。今、何秒経った?」
「50秒デス」
「あと10秒か……」
俺が60秒間のペナルティーだから、他の人は【覚醒LV10】で30秒のペナルティーか……。
結局、110秒間で狩れた数は200だった。
俺が【眷属化】した人たちは、どれくらいレベルが上がっただろうか?
ステータスを確認したら、レベルは100が上限らしく俺はそこまでいっていた。
レベルの上限数値には、俺の【ユニークスキル】は適用されないみたいだ。
「よし、解除された。【眷属装備】。行くぞ!」
60秒が経ち、硬直ペナルティーが解除され、眷属たちを再び装備化し空に飛ぶ。
そして、目的地である病院へ着くと、外と中、両方に魔物の反応があった。
「病院の中は、アンデッドだろうな。生存者はあそこか……」
生存者は病院の半分に固まっている。
おそらくアンデッドが発生したことで、半分を捨てたのだろう。
「う〜ん……先に外からだな」
病院から少し離れたところには、魔物の群れが100匹ほどいた。
スンスンッ、スンスンッ。
ウルフの魔物が、鼻を動かし臭いを探す。
「グルル……ウォォォン!」
先頭の一匹が人の匂いを嗅ぎとると、仲間に合図を送る。
さらに少し離れた別の場所では……
「ブヒッ」
「ブヒヒブヒッ」
「ブヒヒヒー!」
「強くなるのは俺たちだ」と吠え、オークたちは人の匂いを嗅ぎとり、他の種に経験値を取られないよう、我先にと急ぐ。
合わせて100匹ほどの魔物たちが、病院に攻撃を仕掛けようとしていた。
――四十八……四十九……
「ブヒヒブヒッ。ブヒ? …………ブギャ?」
最初に攻撃するのは俺だ。そう言って仲間に確認をとるが、いつまで経っても返事がないので、不審に思い振り返った。
「ブヒーグゴゴ?」
どこに行ったのか? そう考える。先頭にいるオークの後ろには、49匹の仲間がいたが、全員いなくなったのである。
「ブギャギャ?」
敵か? と思ったが、こんなことができるモノは思い当たる節がない。
自分以外が何も言わず、音も無く突然消えたのだ。
「グゴゴォ……」
今までにないことに、いちおう警戒をし武器を構えるオーク。
だが……
「最後……」――シャリン――
一言も発することなく、オークの意識は、闇に眠った。
「これで、オークの群れは全滅だな。あとはウルフか……それと……」
このあと、ウルフも同じように最後尾から一匹ずつ狩っていった。
この時、行進ボスと思われる反応を察知し、【神眼】で確認したが、無理な刺激は与えたくなかったので病院に戻った。
「ヴアアァァ……」
やはり、病院の中はアンデッドで溢れていた。
患者の服をきたアンデッドはもちろん、看護の服を着た人や、白衣を纏った人もいる。
「少しだけ、待っていてください……」
攻撃をして体力をゼロにしたあと、ひとまず【異空間倉庫】に入れて、屋上に移動し、【火魔法】を使って火葬した。
骨の代わりには、パチンコ玉くらいの赤い魔石が残った。
「ふぅー。これで病院内のアンデッドはいなくなったな」
『こちら中村樹也。これより、第一部隊は、アンデッドの殲滅を開始する』
『こちら朝倉玲奈。大剣を持ったデカイゴブリンが率いる集団と戦闘を開始する』
殲滅? まぁ、たしかにアンデッドは脆いけど、でも精神的にキツイはずじゃあ……何があったか、あとで聞いてみよう。
デカイゴブリンってロードかな? それとも、また違う種類か?
そんな考え事をしていたとき、下の方から声が聞こえてきた。
「ねぇチャチャ。昨日からお母さんたち、ちょっと変だよね? なんだかピリピリしてる。薫さんもなんだか疲れてる。チャチャもそう思う? ……そうだね。きっと明日は、二人とも元気だよね」
弱々しい声で、自分が元気じゃないのに他人のことを心配する会話が……。
このあと、二人の女性が部屋に入ってきて、少女は寝てしまった。
――現在、屋上にて――
『第二陣補給部隊を、第一部隊のルートから順次送っていく。幸田君がなんとか間に合いそうだ。そちらはどうだ?』
「そうですか。今は病院の屋上にいます。それと、行進ボスの確認をしましたが、地面の中にいて少し厄介な状況です。攻撃手段がないわけじゃないですが、眠っていて……不用意に刺激するよりも、準備を整えしだい迎え撃とうかと……」
俺は名倉さんと通信で会話をしている。
各部隊の隊長が持っている携帯電話は、全て『フォン』がホストなので、どの回線に繋ぐかはこちらが決めることができる。
余計な情報は避けるようにしており、部隊同士の連絡はできないようになっている。
『地面の中か……塚、穴はなかったのかい?』
そうなのだ。普通、生き物が地面の中に潜るとき、塚と呼ばれる出入り口が存在するはず。しかし……
「ありません。それと、不思議なことに、コンクリートでできた道の下にいるんです。どうやってあそこまで行ったのか。掘り進めた形跡もないですし……だから、文字通り潜ったのではないかと……地球はいつからファンタジーになったんでしょう?」
『……(最後のは彼なりのボケなのかな?)たしかに不思議だね。敵はどんな姿なのか、わかっているのかい?』
あっ、ちょっとしたボケ入れたのにスルーされた……。
「はい。敵は巨大土モグラといいます。レベルは52。体力は870。属性が『土』で、弱点属性が『風』です」
『ふむ……そうか。引き続き調査を頼むよ。各部隊に何か異常があれば――『第二部隊、半田良弥。地中から現れたモグラと戦闘中、少し数が多い。救援を要請する』――さっそく連絡がきたようだ』
「では、救援に向かいます。すみません。説明は中村樹也さんに任せます。俺が行くよりはいいと思いますので……」
俺の言葉に「了解した」と返事をする名倉さん。
俺は第二部隊のもとへ急ぐ。
戦闘中の現場に着くと、モグラたちは地面から顔と手を出して進んでいた。胴体は地面の中にあり、全長にすると1メートル近くありそうだ。
とりあえず、【回復魔法】と【強化魔法】を第二部隊の全員に使う。
急に体力が回復し、ステータスが強化されたので驚いていたがすぐに敵に集中した。
モグラたちの数は120。第二部隊の三倍いる。
ステータスを見ると、全体的にあまり高くないが、土の属性が付いている。
そしてスキルには【潜地】というスキルがあった。
「ククククククククク」
鳴き声を上げたモグラは、一度地面の中に潜り、飛び上がって隊員の一人に攻撃を仕掛けようとした。
後ろから迫っているため、気づいていない。
大鎌を振って、そのモグラを撃破する。
どうやら主な攻撃方法は噛みつきらしく、こちらから攻撃を仕掛けることは難しいが、カウンター狙いなら十分にダメージを与えられるようだ。
他の人たちはカウンターで撃破をしている。
俺はカウンターを狙う必要はないので、顔と手を出した状態のモグラを倒してみた。
すると地面の中に埋まっていた半分がピョコッと出てきた。
『第一部隊、目的地に到着した』
モグラと戦闘を開始した五分後に、第一部隊から連絡が入った。
「……使えるかもな。【きび団子】」
隙をついて一匹にキャラメルを投げる。
《クレイモグラが仲間になりたそうです。仲間にしますか? YES/NO》
もちろん、YESを選択する。
今は枠がいっぱいで【眷属化】はできないが、あとで調整しよう。
それから数分後にモグラとの戦闘は終わり、全員に【回復魔法】をかける。
「第二部隊。お疲れさま、このまま病院を目指してくれ」
俺はそう言い残し、第三部隊の様子を見に向かう。
「もう終盤なのか……デカイゴブリンは、将軍か」
これは助けに入る必要はなさそうだな。
ゴブリンジェネラルの攻撃が当たらないように、魔法使い中心で、近接タイプの人たちは隙をついてヒット&アウェイで攻撃している。
「これで、終わりだよ!」
ゴブリンジェネラルの頭に、玲奈さんの強烈な一撃が入った。と同時に、剣が折れてしまった。
春野弥生が玲奈さんに駆け寄る。
「玲奈さん。剣が……」
「あぁ。折れちゃったか……とりあえず、これでいいか」
そう言って拾ったのは、さっきまでゴブリンジェネラルが持っていた大剣だった。
そして何回か素振りをしたあと……
「アタシ、こっちの方がいいかも……」
そう言った。たしかに、大剣を肩に担いだ彼女は絵になっていて、普通にカッコよかった。
約5分後、第三部隊も無事に到着し、補給部隊の面々も到着した。
幸田茂典さんにお願いしていたことが成功し、補給部隊は早めに到着した。
「ガラスは割れているが、乗せるだけなら充分だからな」
そう言って、【眷属化】した公共バスを見せてくれた。道路には瓦礫などのゴミが散乱していたそうだが、道自体は丈夫だったらしい。
幸田さんとの話を終えた後は、補給部隊のリーダーのところへ……。
「無事でしたよ。あとで様子を見に行ってあげてください」
補給部隊のリーダーの後ろには隊員の人たちがいる。親を亡くしている人もいるので、あまり大きな声で言えないが、これくらいはいいだろう。
「そうか……」
いつものように、短く答える先生。
でも、やはり嬉しいのは隠せないようで、口の端は少しだけ上がっていた。
読んでくださりありがとうございます。
最初、設定などあまり決めずに書いていました。それでもここまで続いたのは、読者の皆様のおかげです。ガバガバな設定でも読んでくださりありがとうございます。
あと2回で一区切り、年内に更新したかったですが、都合で無理そうです。
1月4日に更新します。
皆さま、よいお年を〜。




