23話 闘志
春野弥生視点となっております。
よろしくお願いします。
「第三部隊。準備はいいね! じゃあ、行くよ!」
今回の作戦の第三部隊の隊長、朝倉玲奈さんが、私たち第三部隊の隊員に、不敵な笑みを浮かべながら、やる気に満ちた声で突入の合図を出した。
近接戦闘の人たち10人が前に出て進む。この部隊には30人いる。全員女性で構成されていて、残りの20人が職業【魔法使い】を選択している。
そして、私と玲奈さんはしにがみに【眷属化】されている。
数分前に、レベルが大幅に上がって第ニ職業に【使役者】を選択した。
ステータスも大幅に上がって、スキルも魔法を中心にいくつか習得した。
「ストップ」
若干のバラつきはあるけど、全員玲奈さんの指示で動きを止める。
「【気配察知】に反応があった。この先に敵がいる」
静かな声量でそう言い、建物の陰から顔を少し出して先を見た。
「敵はゴブリンだね。確認できる数は……20。いちおう、倍の40とおもっていて。それじゃあ、作戦通りに魔法組はグループになって魔法と矢が当たる位置に待機。近接組はアタシときな」
私は【魔法使い】で弓矢を装備してるから、なるべく高いところに向かう。
あまり高いところに行くと、魔法と矢が当たらなくて、建物も倒壊の危険があるからそんなに高いところにはいかない。
「あそこにある物。ちょうど良さそうな感じね」
見つけたのは横転したトラック。踏み台代わりになりそうな物もある。
他の3人も連れて、まずは物の陰に潜む。
ここからなら、敵の攻撃は届かないだろうし、壊れる危険もなさそう。【気配察知】は私も習得しているので奇襲の心配はない。
あと少しで玲奈さんたち近接の人たちが、魔物を引きつけてくる。
――『闘えるか?』――
思い出したのは、しにがみに言われたその言葉。
「ふふふ。やってやろうじゃない」
もう覚悟は決めた。何があっても諦めない……。経験を積んで、絶対に強くなってやる。
――出撃前、ショッピングモールにて――
『以上のメンバーで救出作戦を決行する。なお、これからのことも踏まえて10歳以上の子供を参加させている。何かある者は、この後3階西側の部屋まで来るように……以上』
何かある者は……ね……あるわ!
なんで鉄たちがメンバーに入ってて、私だけ入ってないのよ!
「鉄。私、ちょっと行ってくるわ」
「お、おう。あ〜一緒に行くぞ。な?」
「えっ? あっ、はいっす!」
あれ? 私、怒った表情じゃなかったよね? 笑顔だったよね?
「3階西側の部屋……ここね。――バン!――ちょっと! 救出メンバーに私が入ってないって、どういうことよ!」
勢いよくドアを開け中に入ると、仮面をつけた男がいた。
(こいつが『しにがみ』。私たちのリーダー……いや、それよりも……)
目につくのはやはり、うさぎのような仮面。
(なんで目の穴から瞳が見えないんだろう? というか、もっと可愛くできなかったの?)
そんなことを思っていると――ニヤ――
「ひゃぁっ!」
か……仮面が、笑った……?
「ねぇ! あんたたち、い……いまの、見たよね? 仮面が……笑って」
後ろにいる鉄たちに確認が……
「いや、弥生。さすがに仮面は、表情を変えないだろう?(笑った。たしかに動いたが、言わぬがなんとかってやつだな)」
「そうっすよ弥生さん。見間違いっすよ。(鉄さんが言わないなら、俺からは何も言わなくていいや)」
気のせい……なの……?
「……モ。い…………はダ……ボソボソ」
(ひ……1人で、喋ってる……鳥肌が〜)
私は腕を組んで擦っていた。
「(わざわざ3人で来たのか……)春野弥生以外、部屋から出てくれないか? 彼女と話がある」
(はぁ⁉︎ えっ⁉︎ こいつと二人? 鉄……えっ‼︎ もういない!)
「用件は救出メンバーのことか?」
しにがみは、戸惑う私にそう聞いてきた。
「そ、そうよ。私も行くわ! どうして私は入ってないのよ!」
「(やっぱり先に言っておくか。どうせあとで分かることだしな……)春野弥生。お前は【キーパーソン】つまり、『鍵となる人間』という状態になっている。発動するのは、次の魔物行進開始時刻の1時間前だ。どんな効果なのか分からない」
キーパーソン?
でもステータス画面には何も書いてなかったけど……
「……確認するぞ」
「確認? 何の?」
「どんなことになっても……闘えるか?」
その言葉が、とても重く聞こえた。
次の魔物行進。100%、私が狙われる。だから私を救出メンバーから外したんだ……何かあったら、どうなるか分からないから……でも……
「闘える」
というより、選択肢がそれしかないじゃない。それに、私も結構負けず嫌い。何もしないなんて、私じゃない!
(やってやろうじゃない。かかってきなさいよ)
「そっかそっか。それは良かった〜。お前の所属部隊は、朝倉玲奈さん率いる第三部隊だ。頑張ってくれていいが、動けなくなるほどの無理はするなよ?」
「………………」
あまりにも軽い返事に、私は何も言えなくなった。
普通、こういう時って「何かあれば言え。助けになる」っていうセリフが出てくるんじゃない?
もしかして、最初から私が文句を言いに来るのを予想してて、元から第三部隊に入れるつもりだったとか?
「それじゃあ、【眷属化】するぞ」
「……なんで?」
「色々と便利だから。おい……腕を組んで体を横にするな。別に変なことは命令しない」
○
――きた!――
「みんな、【気配察知】に反応があった。5秒後に攻撃する」
私の言葉に頷く3人。
私も弓矢を構える。
弓矢は素人だけど、SPを使って【弓術】を取ったから扱いには困らないはず。
「カウント4……3……2……1……攻撃!」
「「ファイアボール」」――ピュンピュン――
私と一人が矢を放ち、残りの二人が魔法を使って攻撃する。
私の放った矢はゴブリンの肩に刺さった。
「ふっ!」――シャリン――ゴト――
朝倉玲奈さんが、すぐにそのゴブリンに剣を振って首を落とす。その後も、玲奈さんはダメージを負ったゴブリンを中心に、どんどん倒していく。
私も矢と魔法を交互に撃っていく。
「ファイアカッター……よし!」
【火魔法】のファイアカッターでゴブリンの首を狙い倒す。
近接戦闘をしている人たちが、武器で攻撃を受け止めている隙に、私たち魔法部隊は魔法使いのスキル【魔法操作】で視覚から魔法を当てる。
逆に、魔法で攻撃している間に、態勢を整えた近接部隊が武器で攻撃する。
型にハマればこっちのもの。
「よし。とりあえず、1回目の戦闘は無事に終えたね。武器が使い物にならなくなった人と遠距離武器の人は、ゴブリンの持っていた武器を使ってくれ。ちょっと休憩したら先に進むよ」
矢の本数はあと4本。元々そんなに数は多くなかった。
私は近くに落ちていた槍を手にとって隊列に並び進軍する。
――ピキーン――
何か【気配察知】にかかった。
玲奈さんが合図を出して、全員息を潜める。
「またゴブリンだ。数はさっきと同じくらい、だけど……奥に大剣を持ったデカイ奴がいる。作戦はさっきと同じでいくよ。『こちら朝倉玲奈。大剣を持ったデカイゴブリンが率いる集団と戦闘を開始する』。いちおう連絡は入れたから、無理そうなら引いて応援が来しだい撃破ね。全員深追いはしないこと。それじゃあ近接部隊、いくよ!」
近接部隊の人たちが行き、私たち魔法部隊も素早く配置につく。
全員、今までにないくらい緊張してる。でも、目がすごくギラギラしてる……私も同じだ。
視覚、聴覚、感覚が鋭くなってるのが分かる……ここを乗り越えれば成長できる。
それが、ここにいる人たち全員が思っていること……。
「カウント5秒前、4……3……2……1……攻撃!」
ここを乗り越えれば病院まで、あと少し……!
読んでくださりありがとうございます。
前話『ケンカ』の後半を少し編集しました。
『田口鉄』を戦闘狂っぽくしました。
次回の更新は25日です。
あと4話で一区切りです。




