17話温もりと冷酷と[改稿版]こちらをお読みください。
『17話温もりと冷酷と』の改稿版になります。
違いは主人公が強姦グループの死を直接確認するかしないかです。
あと、強姦グループの死ぬシーンが書かれています。
まぁ、やってる事は変わりませんが……。
こちらの方でこれからストーリーを続けます。
作者のワガママに付き合ってくださりありがとうございます。
尚、改稿前の話はそのまま残します。
「【スリープ】」
――ドサッドサッドサッドサ――
《スキル【スリープ】のレベルが上がりました》
夕食を食べる前に地下に行った俺は、あの4人グループに【スリープ】の魔法をかけた。
レベルが10になると100秒間眠り状態になる。
不思議な魔法で、起きるという意思があれば100秒後に目が開くようだ。
抵抗が弱ければそのまま眠ってしまう。
普通の【スリープ】はレベル5だから50秒だ。
しかし、俺の場合はレベルが10ということになる。
なので俺の【スリープ】はレベル6だがレベル12として扱い、120秒効果が現れることになる。
男4人……は担げないので2人ずつを担いである場所に【転移】する。
全員を運び終え、魔力の残量が少なくなるまで【スリープ】をかけた。
《スキル【スリープ】のレベルが上がりました×2》
これで、起きても夜中だからこの場所から出ることは……余程のバカでもない限りしないだろう。
あとは、この紙を置いて――
「それじゃあ、あいつらが起きたら教えてね」
「カー」
向かいの建物に式神クロを配置し、携帯をもう一台【眷属化】し【眷属装備】で小型バッジにした後式神クロにつけた。
「マスターカラノ任務ハ、絶対ニ失敗ガ許サレマセン。良イデスネ?」
「リョウカイ」
一旦ホープの所に戻ったあと、名倉さんに報告し、「明日の8時にまた来ます」と言って後のことを任せてキーパーの家に戻った。
「ただいま〜」
玄関のドアを開けリビングに行くと嬉し驚きな出来事があった。
「一宮、帰ったのか。すまない、勝手に台所を借りているぞ」
なんと先生が料理をしていたのだ。
俺はリビングの入り口に突っ立ったまま、しばらくフリーズしていた。
あの先生が……
俺から見たら、基本周りのことはどうでも良さそうで、何事にも興味を示しそうもない。
いつも無愛想でミス無く仕事を淡々とこなしている
あの先生が……
料理……だと……
しかも、あのエプロンって俺のばぁちゃんが着てた奴だ。懐かしい。それに結構似合っている。
確か……割烹着という物だっただろうか?
なんだか母性力が凄い、この人保育士とかやったら性格は置いといても、人気出ただろうな。
割烹着の前を押し広げている所なんか凄いんだが……眼福です。
俺が頭の中で膝をついて拝むというアホなことを考えているとフォンの言葉で我に返った。
「マスター。先生ノレベルヲ調べナクテ良イノデスカ?」
「はぁっ! そうだった」
そういえば先生って最初のスーパーにいた魔物50匹の時から【眷属化】しているんだよな。
行進ボスの経験値も入っただろうから……あれ?
先生ってもしかして、|ホープの所にいる人たち《あの中》では一番レベルが高いんじゃ……【神眼】発動。
名前:汐田澪
年齢:26
レベル:37
体力:149/149
魔力:154/154
攻撃力:116
防御力:126
器用さ:185
敏捷性:120
魔攻力:138
魔防力:135
第1職業:内職者LV8
第2職業:
第3職業:
職業スキル:【作業経験値化LV8】【効率化LV8】【ファイル保存】【血行促進】【家事上手】
スキル:
CP36
SP37
【作業経験値化】
屋内でやる作業が経験値になる。
【ファイル保存】
スキルを発動すると紙を保存できるファイルが現れる。レシピや文書などを保存できる。書籍の保存は不可能。
【家事上手】
料理、洗濯、掃除など家事が上手くなる。
『器用さ』依存のスキル。
なるほど……先生は【内職者】を選んだのか。
そういえば家の中が綺麗になっている。
そして第3職業の解放に【作業経験値化】でレベルも上がっているのだろう。
というか、器用さ高っ!
第2と第3職業、スキルは決めてないのか……俺の意見を聞いてから決めるつもりなのかな?
「一宮、ずっとこっちを見てどうした? 夕食ができたぞ。運ぶの手伝ってくれ」
ずっと先生を見ていた俺に、先生が話しかけてきた。
「はい。わかりました。……先生、その割烹着似合ってますね」
カウンターの上にあるオカズを運びながら、素直に感じたことを言った。
そして運び終え椅子に座り話をする。
「そうか? というよりサイズが合わなくてこれしか着られなかったんだ。それより替えの服は買ってきてくれたのか?」
何がですか! どこのですか⁉︎
そんなことは聞けないので、『謎の店』で買っておいた大きめのシャツを先生に渡した。
念のため、シャツはあの店にあった一番大きい物を買った。
『大は小を兼ねる』と言うからな……。
まぁ、そこはいいとして、あのことを言っておこう。
「あの……先生」
落ち着け俺、深呼吸をするのだ。
ただ事実を言えばいいだけだ……すぅーはぁー。
先生を見ると、俺の真剣な表情と雰囲気に戸惑っているのか、オカズを箸で掴み空中で静止している。
そして……
「一宮、私とお前は教師と生徒だ。確かに、生徒の家でご飯を作るのは普通ではないが、今はお前の気持ちには応えられないぞ」
違う!
そしてさり気なくフラれた……
いや、俺が悪いのか? 変な空気を作り出した俺が悪いのか……
「…………実は、ショッピングモールを拠点にすることに成功しまして〜俺がそこの代表的な存在になっているんです。……先生はどうしたいですか? かなりの人数が向こうにいて学校の生徒も何人かいるんです。一応、報告しておこうかなぁ〜と……あはははは……」
先生の箸のスピードが若干上がったような気がしなくもないが……きっと、オカズが美味しいんだよね。
俺も食べようとオカズに箸を伸ばし、咀嚼する。
……むぐむぐ……ゴクリ
「おぉ、この料理美味しいですね。先生って料理上手なんですね。普段からやるんですか?」
話題を変えさせてもらおう。
そしてホープの所にいる人たち、非常食やインスタントばかりでごめん!
落ち着いたら『料理部』なるものを作ってみよう。
「まぁ、基本一人暮らしだからな。それに料理人を目指していた時もある」
「どうして料理人にならなかったんですか?」
というかこの先生、随分と家庭的な人だな。
「グルメブログが嫌だったんだ。高校生の頃、好きだったお店があったんだが、ある時から客足が遠のいて潰れてな。調べたら、お店の酷評が書かれた記事を見つけて、それで嫌になって諦めたんだ。そんなに不味くはなかったんだがな。教師になったのは失職がないと思ったからだな。家庭科部の顧問になりたかったが、無理だったので顧問はやっていなかったが……」
箸を止め、少し落ち込んだ表情でそう言った。
そんな過去があったのか……そしてあの学校に家庭科部なんてあったのか。
いや、そもそも学校では俺はぼっちだったんだ。
何の部活があるかなんて把握すらしていない。
「それなら先生。ショッピングモールに行きましょう。そこで料理長なんかをやってくれると助かるんですけど、ダメですか?」
誰かに作られた料理というのは、今の状況ならかなりモチベーションを上げることができる。
ぜひとも来て欲しい。
「……………」
先生は俺を見て何か悩んでるようにみえる。
いったい何について悩んでいるんだ?
……いや、これじゃあダメだ。
あの時に公言したじゃないか、俺が支配者だと……この意見料理のことについては反対は出ないだろう。
ショッピングモールあそこには料理人が必要だ。
先生には絶対に来てもらう。
「先生、やっぱり来てもらいます。貴方が必要です。拒否は受け付けません。俺に期待させてください」
先生は目を真っ直ぐに見て言う俺に、決心がついたのか
「……わかった。行こう」
承諾をしてくれた。
「はい。ありがとうございます。でも、ここに来たくなったら言ってくださいね。いつでも招待しますので」
「あぁ、わかった」
そう言うと、先生は少し微笑んで、ご飯をゆっくり食べ出した。
――翌日の早朝――
「くそっ! あの野郎覚えてろよ! ……ん? 何だこれ?」
リーダー格の男は起きたあと、絶対にあの仮面の奴を殺してやろうと思った。
腹が減ってイライラしているし、ここにいるのも自分に口答えしたあの仮面が何かしたのだろうと思っていた。
ここからショッピングモールは車で30分以上かかるため、正直もう歩いて行きたくはない。
窓からはダンジョンが見える。
これからどうしようか? と考えていると、机の上に置かれた手紙を見つけた。
それを読むと……
「おい! これを見ろよ。あんだけ粋がっていたのに傑作だぜ! アハハハハ!」
仲間を起こし手紙の内容を見せる。
俺は式神クロからの連絡を受け、例のグループのいる民家から向かいの家の屋根の上にいた。
グループを寝かせた部屋は窓のカーテンを取ってあるので外から丸見えだ。
おうおう、リーダーは盛大に笑ってるね〜。
「『昨日の一件はこちらの失態でした。人を上手くまとめることができないので武力でまとめるために戻ってきてください。一生のお願いです』だ〜。ハハハっ、いい気味だぜ。勝手にやってろってんだ」
1人の男がそう言った。
わざと、『一生のお願い』と強調したのだ。
これで効果が無くて戻ってきたらどうすればいいだろう?
しかし、これであいつらは現時点でショッピングモールに戻るという選択はしないだろうな。
何せ、目の敵にした俺が困っているんだから。
もっと困れと思っているだろうな。
「それにあの仮面の奴は馬鹿だよなぁ。『ダンジョンを攻略すれば【転移】という、どこにでも行ける便利なスキルが手に入るそうです。一緒に手伝ってほしいです』って、一緒にって……ハハハ、手伝うわけがないだろう! それに、そんな便利なスキルがあるなら秘匿して、女連れ込むために使いまくるわ。クハハハハ」
その言葉に全員が下品に笑う。
用意された情報エサだと分かっていても、それはとても魅力的な物に見えた。
「あ〜笑った笑った。なぁ、さっさとダンジョン行って攻略しちまおうぜ。ここからダンジョンも見えるしよ〜。それに【転移】を手に入れたら、あのモールにいた女ども全員犯してやろうぜ。中高生が多かったよな」
そして、目的を『時間をかけてレベルを上げること』ではなく。
短期間で攻略させることに意識を向けることができた。
「そうだな。良しお前ら! すぐに行くぞ!」
今ので腹の減りはどこかに飛んでいったのか、リーダーの男がそう言い、他の3人はそれに続く。
歩いて五分ほどの所にあるダンジョンに着くと、何の準備もせずに小走りで中に入っていった。
ちなみに全員レベルは4〜6だ。
「昨日から飯も食べず、しっかりとした準備もせず、何の緊張感もなくダンジョンに入って大丈夫なのか?」
俺は【情報屋】のスキル【情報検索】で『ダンジョンについて』調べていた。
ダンジョンでは食料は出てこない。
持参して行かなければいけない。
ダンジョンで死んだ者は時間が経つとダンジョンに吸収される。
「……なぁフォン」
「何デスカマスター?」
これは完全に見殺しだ。
あいつらの性格を分析したうえで、俺が……自分で、自ら考えたことだ。
「いや、何でもない。それよりも腹が減ったな」
しっかりと受け止めよう。
そして、あの場所はこれからも絶対に守る。
……早く戻って先生の料理を食べよう。
ダンジョンの入り口に行き、手を合わせてお辞儀をし、キーパーの家に帰宅した。
◇
「くらえや!」
強姦グループの1人が【体術】でゴブリンの頭をめがけて蹴る。
ボコッ!
その一撃でゴブリンはよろめき膝をついた。
その後はゴブリンの体力が尽きるまで殴る蹴るを繰り返す4人。
やがてゴブリンは息絶えた。
「ハハハ。楽勝だな。これならダンジョンの攻略なんて余裕だろ。今よりレベルも上がるし、武器はこいつらから奪えば良いんだからな」
リーダーの男がそう言い、他の者は笑う。
「早く【転移】とやらを手に入れて、俺たちのことを侮辱した奴らに後悔させてやりたいぜ」
メンバーの1人がそう言ったすぐ後のことだった。
――ヒュッ――ブス――
「……ぅぁ……」
バタン! と音を立てて倒れたメンバーの1人。
その額には矢が刺さっていた。
「おい! やべぇ、一旦引き返すぞ!」
リーダーの男の指示に振り返り戻ろうするが……
「「「グギャャ」」」
「「「グギャ」」」
「「「「「ギギギャギャギャ」」」」」
かなりの数のゴブリンに周りを囲まれていた。
「ぉ……おい……これ、やべぇぞ」
その声は震えていた。
「おい! 【覚醒】を使え! 全部経験値にするぞ!」
「か……かくせ――ブスッ――ぎゃぁぁ」
横腹に矢が刺さる。
そして、ゴブリンたちはその隙を逃さなかった。
「くそっ! おい、2人だけでも……はぁっ」
リーダーの男は目を見開いた。
もう1人も、既に背中から剣が突き出していたのだから。
「おい、嘘だろ……ひっ! くっ来るな! 来るんじゃ……ぁ」
リーダーの男の動きが完全に静止した。
【覚醒】の効果が切れたのだ。
「や……やめ……」
ゴブリンたちが近づいてくる。
不気味な顔で不気味な声をあげながら……。
この男は気づかない。
今までは、自分たちがこの顔をしていたことに……嫌がる女性にこの顔をやっていたことに……。
「たすけ、誰か……あ゛あ゛ぁぁぁぁぁぁ」
リーダーは数十の数のゴブリンに殺され、やがて、4人の死体はダンジョンに吸収された。
読んでくださりありがとうございます。
故意に人を殺すシーンというのは書くのが難しいです。
何度もくどい様ですが、読んでくださりありがとうございます。
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