16話 理解者
こんな人いたら良いなぁ、という思いで書いていました。
それと、読みにくいかもしれませんが地名は全て記号で書いています。
「あの、名倉課長。あの仮面の奴は信用できるんでしょうか?」
教えられた『謎の店』に少し速めに歩いて向かっていると、部下の1人がそんなことを聞いてきた。
今まで見たことのある町の風景は、今は崩れかけた建物に、道には割れた窓ガラスの破片が散乱し燃え尽きた車が放置され、もう何の面影もない。
この男は仕事も積極的にやり、責任感も強い男だ。
ただ、偶に強すぎるのが痛いが……。
「不満なのか?」
私は短くそう問う。
「えぇ、まぁ。あの大学生グループがいなくなったのは良かったと思っていますが、仮面くらいは外しても良いかと……それに、もっと早く動いてくれていたら、課長の奥さんだって死ななかったかもしれないですよ」
どうやら仮面に不満があるようだ。
そして私の妻のことをわざわざ出すのか……。
「君の親御さんだって、どうなっているか分からないんだよ。心配にならないのかい?」
「ならないです。連絡も取れないですし」
やれやれ……確か、もうすぐ28だったか?
会社が続いていれば企画を任せようと思っていたが、なかなか思った通りにいかないな。
「仮面くらい許してあげなさい。私はあんなこと、絶対に無理だから、こうして方針を決めてくれるだけでも有難いわ」
今度は女の部下の1人が口を開いた。
確か、彼女の両親も今回の魔物行進とやらの被害にあって亡くなったはずだ。
しかし、見る限りではあまり落ち込んでないように思える。
ふむ……この男には何という言葉をかけるべきか……。
おそらく、仮面の子供は内部亀裂など望んでいないはず。
組織である以上小さなイザコザはどうしても起こる。
しかしまだ子供。
社会など経験したこともないだろう。
適切な指示もスキルのおかげだと言っていたし、時間が経てば他の者にリーダーを任せるだろうな。
私としてはもう少し若い者に頑張ってもらいたいが……。
「不満は生きている限りでは一生あるものだ。それに向き合えたか、逃げ出したかで得る物は全く違う。彼は自分以外の人たちを見捨てずに、助けることを選んだ。その結果が私たちの命を救った。君と違い、あまり人前に出ない子なのだろう。それで仮面を被った。これからどうすればいいのか分からない人たちを導いた。これだけで最低限の信用はできる。違うか?」
「……そう、ですね」
これで割り切ってくれるといいが……彼はきっと堂々としていないのが気にいらないのだろうな。
数十分後『謎の店』についた。
中に入ると、ある場所にかなりの人数がいた。
どうやら『情報掲示板』を見ているようだ。
私たちもそこに向かうことにした。
情報掲示板とは巨大な電光掲示板のようだ。
「課長。あれを……」
部下の1人が指をさした所を見ると――
『名前:しにがみ
件名:拠点確保
公開範囲:○○地区〜隣接する地区
本文:○○にあるショッピングモールの拠点化に成功。来たい者はいつでもどうぞ。衣食住や便利な情報の提供。相談などにも乗ろう。』
「ほぉ、こんな感じなのか」
【書き込み】のスキルがどういうものか気になったが来て見てわかった。
「……ん?」
そして私は、死神君以外の人たちの記載を見つけた。
というよりこれは……。
『名前:結城誠
件名:自己紹介
公開範囲:世界
本文:僕の名前は結城誠です。ユニークスキル【勇者】を持っています。今は□□の△△にある『謎の武器屋』にいます。こちらはだいぶ落ち着いたので、何かあれば掲示板か依頼ボードに知らせてください。拠点は△△駅です。それから、ユニークスキルを持っている人へ、連絡を取りたい。この記載を見たら【書き込み】で書いてください。』
「なぁ、半田くん」
半田くんとは、先程の気が1番強い部下だ。
「何ですか? 課長」
「私はゲームをやらないので分からないんだが、個人特有のものは公開するのかね?」
この結城誠という人物は、死神君とは正反対の性格なのだろう。
こう、直球で公開されると何だか感覚が麻痺しそうだ。
「普通はしません。周りから妬みも買うからです。そんなスキルがあるならば、俺も欲しかったです。まぁ、堂々としている分、個人的に好感は持てますが……」
自分の居場所を堂々と世界に公開している所は凄いんだろうが……『落ち着いた』というのはどの範囲で言っているのだろうか。
そしてその勇者の記載に感化されたのか……
『名前:相沢駆
件名:自己紹介
公開範囲:世界
本文:僕は相沢駆です! 10歳です! 僕も【ヒーロー】っていうスキルを持っています! ◎◎の☆☆にいます! 僕も会ってみたいです! よろしくお願いします!』
他にも様々な記載があるが、それらの記載も含めてしにがみ君は見ているだろうな。
私は私たちのできることをやっておこう。
「良しみんな。ここにいる人たちに呼びかけをしようか。何人が来てくれるか分からないが……」
「そうですね」
「では、まずは自分が……」
私たちはこの人混みから少し距離を取った後、半田くんが一歩前に出て
「聞いてくれ! 今から重要なことを話す!」
情報掲示板を見ていた人たちは、一斉にこちらを向いた。
「そこの掲示板に書いてある通り、ショッピングモールの拠点化に成功した。衣食住や便利な情報、スキルについても教えることができる。そこを拠点化した奴も……まぁ、信用できる」
最後だけ若干苦しそうに聞こえたが……今はどれだけの人を味方に付けれるかだ。
「携帯での連絡も可能にしてくれた。向こうに行ってから考えて出ていっても構わないそうだ。いつでもいいから来てくれ。以上だ」
半田くんの演説が終わると効果があったのか、所々から『どうする?』だの『行ってみる?』などの意見が聞こえた。
私は咳払いをした後迷っている人たちにこう言った。
「私たちはここに食料を買いに来た。80万円をその代表から貰っている。この後は買った物を持って帰る予定だが、たった6人だ。なので現時点で迷っていても、選択はできるから手伝ってもらえないだろうか?」
私がそう言うと付いていくと決めてくれる人たちが多くいた。
自分のお金を持っている人たちも、何人かが貸してくれた。
しばらく様子を見てから行くという人もいれば、生き残っている魔物がいないか探してから行くという人もいた。
私たちは外に出ると向かいの建物にいた式神のカラスを呼び、しにがみ君に連絡を取った。
「念のため、このカラスを置いていくよ。『何かあれば文を書いた紙を持たせるように』ということだ。それでは、私たちは行くよ」
ここに残るグループのリーダーにそう言い、大勢で拠点であるショッピングモールを目指した。
無事に何事も無くショッピングモールにたどり着き、ここに入居する者には名前を書いてもらい、私たちが行っている間に男女の部屋割りやいくつかのルールが決まったらしく、プリントを配られた。
そして……
「名倉さん。実は地下にあの大学生グループがいるみたいで、今から少し行ってきます。それと、ある程度時間が経ったらまとめ役を交代してほしいんですが、いいですか?」
やはり、交代の件で来たようだ。
周りに人はいない。
最年長の私がやっている方が良いという考えなのだろう。
あのグループは地下にいるのか……。
何が狙いなのか……現金、食料そして女、辺りか?
掲示板のことはあえて触れてこなかった。
きっと面倒なことになると思ったに違いない。
「まとめ役に関しては、じっくりと話そう。君がやっても良い経験になるはずだ。あのグループに関しては任せるよ。もう警察も機能してないからね」
しにがみ君は首を縦に振り了承した。
私は夕食まで娘達の所に行って話でもしよう。
どうやって助けられたのかも詳しく聞いてみたい。
これからどうなっていくのだろうか……
私は今日見た掲示板の書き込みに、若干の不安を覚えながら、しにがみ君のサポートをすることに決めた。
読んでくださりありがとうございます。
名前だけですが、新キャラ続々登場です。
ここからどうやって主人公と絡ませ盛り上げて行くか悩み中の作者であります。
次の更新は26日です。




