14話 『適合』
だいぶご都合主義になってきておりますが、読んでくれている読者の方々に感謝です。
ありがとうございます。
「時間になった。説明を始めるぞ」
「おい! てめぇか、こんなふざけた紙をばら撒いたのは! それにその仮面はなんだ? こんなことをするんなら顔を見せるのが礼儀だろうが」
台の上で口を開くと、あの問題大学生のリーダーの男が絡んできた。
仮面のことは良いんだよ。
なんでそこだけ正論なんだ!
まず以前の自分の行いを省みろよ。
「別にふざけてはいない。それに、『気に入らないなら来なくていい』と書いてあったはずだが……」
仮面のことはあえて触れないでいよう。
「他の奴らが『ここに来たい』とか言い出したからな。別に俺たちはここに来なくても良かったんだがよ」
ならお前たちだけそこにいろよ……魔物は間引いていたからレベルが0の人でも来られるんだから。
「あの大学生たち、私と同じ所にいたの。なんか手当たり次第に女の子に声をかけてて、私も『こんな状況でいつ死ぬか分からないから楽しもうぜ』とか言われて感じ悪かったんだよね」
ヒソヒソ声でそんな話の内容が聞こえた。
【聴力強化】を取っていたので聞こえたのだろう。
話をしていたのは、『月野明梨』と仲の良い『島田彩香』だった。
「えっ、そうなの⁉︎ 何もされなかった?」
「うん。なるべく女性で固まってたし、絶対に3人以上で行動するようにしてたから大丈夫だったよ。それに、言ってることが変なんだよね。私たちがここに行くって言ったら、『俺たちがいるからいいだろう?』とか『こんな紙をばら撒く奴は碌な奴じゃない。何かの罠だ』とか言って、最終的に『俺たちも行く』とか言い出したんだよ」
なるほど……『碌な奴じゃない』ね。
どうやら、この人たちはブーメランというモノを知らないみたいだ。
「なら、ここから出ていってくれて構わないぞ。俺もここに来たくない人を入れるつもりはない」
というか、俺はこの人たちをここには入れたくない。
しかし、このまま放置しても良い結果にはなりそうも無いのが事実……どうするべきか。
「あぁ? 何言ってんだ? てめぇが出てけよ。お前、仲間がいないんだろう? お前が何かするより、俺がやった方が物事をもっと上手くやれるんだよ! 支配者気取りのぼっちが、しゃしゃり出てんじゃねぇよ!」
そう言いながら、右手で拳を作り、左手を伸ばして俺に掴みかかってこようとした。
……支配者気取りのぼっち……ね。
――シュッ――ピト――
「……っ」
リーダーの男はいきなり現れた大鎌とそれが首に添えられていることにびっくりしている。
「『支配者気取りのぼっち』……否定するよ」
「なに?」
俺をすごい形相で睨んでくる。
「気取りじゃない。ここの支配者は俺だ! それに、仲間ならここにいる」
この人たちに遠慮なんて必要ないだろう。
一気に畳み掛けてやる。
「グループで強姦に痴漢冤罪。随分とひどいことをやってきたみたいだな。そんな奴には任せられない」
ここにいる全員に聞こえる声量で言い放ち、男に対して殺気を飛ばす。
「くっ……」
俺の殺気にビビるリーダーの男。
「改めて言おう。俺が気に入らない奴は、ここから出ていってくれて構わない」
俺は台の上から見回してそう言った。
ちなみに、集まった人たちの中で一部の女性たちが、さっきの事実が本当だと思っているのか、小声で『グループで強姦?』『痴漢冤罪とか最悪ね』など、聞こえるか聞こえないかの微妙な声量で話している。
リーダーの男もそれが聴こえていたのだろう。
「ちっ……」
舌打ちをし俺を睨んだ後子分の3人を引き連れてこの場を出ていった。
あのメンバーは要注意だな。
それに、まだ不満を持っている人たちもいる。
いや、不満だらけなのだろう。
家族を殺され、友人を殺され、大切な人も失った。
それでも、自分では何もできないからここに来た。
矛盾した感情と事実。
受け入れるには、かなりの時間がかかるかもしれない。
「あー。えーと。いくつか聞いてもいいですか?」
騒ぎが収まった後、1人の男性が声をかけてきた。
あの大学生グループに注意しようとしていた人だ。
【神眼】で確認すると『中村樹也』年齢は30と出た。
「はい。どうぞ。それと俺は貴方より歳下なので敬語は不要です」
偉そうなことを言ったが、独裁者になるつもりはない。
現時点で協力できる人とは、良い関係を築きたい。
きっとそれは、後から良い連鎖を生んでくれるはずだ。
「そうか。わかったよ。君は、私たちを何故ここに集めたんだい? それと何を提供してくれるのか……それを聞いてから、ここに残るか出ていくか、判断してもいいかな?」
「もちろんです」
警戒するのは当たり前なのだ。
こんな状況になって、都合良く安心できる拠点が確保されたなどあまり信用できないだろう。
「集めた理由は、ただの親切です。まぁ、約束があったから、人手が欲しいという理由もありましたが……。それと、提供できるモノは『衣食住』と『便利な情報』、あとは『スキルや職業』なんかについても教えます。携帯も、『通話とメール』だけですが使えるようにできます。この説明ではダメですか?」
俺の言葉に、みんな唖然としている。
そして、1番に口を開いたのは最初に発言した中村樹也さんだった。
「いや、予想していたことより遥かに良い条件だ。俺たちの知りたいことを全部教えてくれる、ということだろう?」
動揺して一人称が『俺』になっている。
そんなに驚く事だろうか?
たしかに『ゲーム』では教えないが、これは命がかかっている。
そして、おそらくだが、俺は1つ間違えた。
ここにいる人たちが全員、魔物を一定数倒していたなら、今頃は何人かレベルが20近くまでいっていたかもしれないのだ。
上手くやれば、職業も第3職業まで解放されていた可能性がある。
ここにいる人たちの中で最高レベルは7。
「全部ではないです。俺も知らないことはあります」
そして謝る事はできない。
いま俺が頭を下げたらどうなるかは、ある程度の予想がつく。
何人残ってくれるかわからないが、できれば残ってもらいたい。
都合の良い話かもしれないが……。
「わかった。俺はここに残るよ。他に行くと言っても厳しそうだ。それに、あの時助けてくれなかったら今頃30人が死んでいた。ありがとう」
「……いえ、お礼を言うのはこちらです。ありがとうございます」
この後、残ってくれる人には名前を書いてもらった。
結局、出ていったのはあの大学生グループだけだった。
中には、家族と再会できた人たちもいた。
この地域の人口はどのくらいか知らないが、だいぶ減ったのだろう。
そして、昨日はこのショッピングモールから近い所しか探していないので、まだどこかに生きている人もいるかも知れない。
『謎の店』に何人いるのかも気になる。
あそこは消滅するまでは安全地帯だからな。
全員に名前を書いてもらっている中、俺は書き終わった人に、12時の謎のアナウンスだけ聞き逃さないように指示をし、掃除やここでの生活の大まかな決め事や、子供たちに無事だった絵本を読んでもらったりした。
ある小学生の発言で俺の名前が『しにがみさん』になったり。
そして12時になり、脳内にあのアナウンスが響いた。
《12時00分になりました。当初の予定通り、レベル0の者は強制的にレベル1にします。各種『謎の店』が出現します。各種『謎の店』に『情報掲示板』『依頼ボード』を追加します。新たなスキルを追加します。これより、世界の適合を終了します》
そんなアナウンスが流れ終わった後、俺は『世界の適合』という言葉と『予定通り』という言葉が、ずっと頭から離れなかった。
読んでくださりありがとうございます。
主人公に、と言うよりは、人類に新しい謎が増えました。
作者は基本、優しい世界が好きな人間です。
現実ももっと優しくなって欲しい(税金などのお金関係)と叶わない幻想を抱いております。
ですので、15歳以下の子供に対しては、救済措置的なものを取り入れるつもりでいます。
賛否両論あると思いますが、ご了承……は少し違いますね。
作者のわがままにお付き合いください。
そして、主人公に【眷属化】されたままの先生は一体レベルはいくつなのか?
主人公を除くと断トツのトップであります。
明日も更新しまーす。




