第六話 彩
「それで奏也の能力が技系の、名前が長くてわからなっかたけど光の剣みたいなやつ」
光の剣?
よくわからないが技系ってことは強力なのだろう。
でも名前が長いとか絶対恥ずかしいだろ。シャイニングっていっても恥ずかしいんだから。
「金森は不明で岡田が技系の雲なんちゃらってやつ」
そうか金森はわからんのか。金森が一番知りたかったんだよな。
それに岡田の情報はいらんかったな。でも役に立たない情報はないから心の底にしまっとくか。そうするといつか使える時が来る。
「まぁ取り敢えず奏也と彩のを聞けたから能力はいい。次よろしく」
「はい、はい。次は特訓の様子だったわね」
めんどくさそうに彩が言う。
「ああ、それと能力確認の方法だ」
「わかった。特訓の様子はみんな初めてのことに戸惑い続けてる感じ。だけど奏也だけは例外だった」
「なるほどあいつが例外なのはわかる」
一人だけ戸惑わず何が起きても動じずって感じのやつだもんな。
「能力確認は変な水晶玉に手を当てたら頭に能力が浮かんできた」
おそらく魔道具ってやつだろうな。
「はい、これでいいでしょ」
「ああ、ありがとう」
かなり適当な説明だったが何となく向こうの様子がわかった。彩には色々頼っているから今度なんかあいつにあげよう。
「ねぇ山中」
「ちょっと話を聞く前にいいか」
オレが喋ろうとした彩を止める。
「ええ」
「オレもお前のこと彩って呼んだんだからお前もオレのこと心矢って呼べよ」
「え!?」
あれ?この赤面の彩、前の時に見たな。それにしてもなんで名前呼べって言っただけでそこまで恥ずかしがるんだ。しかもこの場にはオレしかいないのに。
「ちょっとまって心の準備が」
「心の準備なんていらないだろ。お前が呼べばそれでいいんだから」
心の準備って彩は何をやろうとしてんだ。名前を呼ぶだけなのに。
「・・・し、心矢」
戸惑いながらも小さな声でオレの名前を呼ぶ。
「よし、今度からそれで呼んでくれ」
「う、うん、わかった」
まだ緊張しているのか顔が赤い。
「ふぅー」
集中するために息を吐く彩。
「話を戻すわよ」
「ああ」
「し、心矢に頼みたいことがあるの」
彩は決意した様な顔をしている。何を話すのだろうか。
「私はこの世界で生き抜くために七色变化を使いこなしたいの。だからどんな方法でもいいから、心矢は私がおかしくなったら止めて。お願い!」
彩はこの世の終わりみたいな顔をしている。不安や悲しみ色んな感情が混ざっているんだろう。
「お前がそう思ったなら、オレは止めずに全力で協力するが、そんな大事な止める役をオレなんかでいいのか?」
何かホッとしたような悲しいようなそんな感情を抱く彩。
「あんた以外に私の本性を知ってて、こんなに協力してくれる人なんていない。だから、そんなあんたがいいの」
色んな感情は有ったもの最後には笑顔を見せる。
「ああ、わかった。しっかり止めてやる」
そこまで言われれば協力するに決まってる。
「ホントあんたは鈍感王ね」
最後のつぶやきは心矢には聞こえなかった。
「七色变化。赤」
彩が叫ぶとともに赤色の光が彩の周りから放たれる。
そして、しばらくすると赤色の光が消えた。
「お、おい。大丈夫か」
「え、ええ」
オレが叫ぶと彩は何もなかった様な顔をして周りを見渡していた。
「なんか何もなかったみたい」
「ホントか!」
あんなに光ってたのになにもないとは思えないがな。
「う、うん」
何かを我慢している気がする。だがその何かがわからない。
「なんか心矢最近変わったよね」
「そうか」
「うん、なんか元気になった」
確かにローズ達と出会って元気になったかもしれない。
「そうといわれればそうかもしれないな」
「じゃあもう用事も終わったし寝る時間だから帰っていいよ」
なんかちょっといつもの彩よりは強引な気がする。
「ああそうする」
オレはそう言い、立ってドアへ向かう。
「じゃあな」
「じゃあね」
そして彩の部屋から去っていった。
「ふぅー何とかなった」
自分の部屋で何故か独り言がやまない彩。
「でもこんな熱い感情を持ったあたしは私じゃない」
よくわからないことを連発していく。
「もう、一人称もあたしになる。私は私だ」
まるでもうひとり彩がいるようだ。いやこれはもうひとりいるのだ。赤い瞳で美しい赤髪の彩が。
「でも、一つ変わらない気持ちはあった」
それは・・・・・・
※
オレは彩のことが引っかかり、一人、女子の宿の前でベンチに座って彩のことを考えていた。
あいつは何もないと言っていたが何か様子が変だった。だがその何かがわからない。
「はぁー」
オレはこのまま帰るのもなんか嫌なので、ローズはいないと思うがローズガーデンに行くことにした。
ローズガーデンは女子の宿からは少し遠いところにある。およそ八分ぐらいだろう。
だがその八分の道はどこを見ても緑しか見えない完全な草原。
時々つまらなくなり満点の星空を見る。
そこには昔、奏也と見たような光景が広がっていた。
やっぱり綺麗だ。
ローズガーデンに着くといつものバラのアーチが出迎えてくれた。暗いが夜のバラというのもなかなか綺麗なもんだ。半分、バラに飽きながらもオレは夜のローズガーデンを歩く。そうしたらやっと中央部に出た。
すると、いるとは思わなかった人物がいた。その人物は赤髪でオレと同い年ぐらいの少女だった。少女はベンチに座りながら楽しそうに夜空を見ている。
こちらには気づいていない。ただオレは話すことにした。
理由はなんとなくだ。
「えっと、ミラーシュリガンでしたっけ」
「え!?」
急に話かけられて驚いている王女様。
「いえ、違いますよ。私はミレーシュリガンです」
「ああ、そうだしたね」
取り敢えずタメ口で話したい。だがどこに見張りがいるかわからない。
じゃあ、いっそふざけるか。
「なんか変な言葉になっていますよ」
「すまいせん。敬語が苦手なんですだ」
自分でも言ってて笑えるレベルだわ。
「敬語が嫌ならタメ口でもいいですよ」
「ありがと、おかげでスッキリした」
「絶対今のわざとですよね。私にタメ口でもいいですよって言わせたかっただけですよね」
王女様がジト目で見てくる
「そんなことはないですだ」
うわ、今のは完璧間違えた。
「フフッ」
クソ、笑われた。
「あなたッ完璧ッ、間違えましたッ、よね」
ツボに入ったのか笑いながら言う王女様。この少女の笑顔もローズや彩みたいに素敵だった。
それにしても色々疑問が出てくる。
「その疑問にお答えしましょう」
「は?」
何?今、こいつ、心の中を読んだか?
「こいつとはなんですか。これでも一国の王女ですよ」
「お前、まさか、心が読めるのか?」
「はぁもう訂正することは諦めます。そして質問の答えは、読めるんじゃなく聞こえるんです」
若干、楽しんでるように見える王女様とまじで驚いているオレ。
「聞こえるってことは近くにいる人の心を無差別に聞くのか?」
「はい。流石、頭がきれますね」
オレはすぐに冷静さを取り戻す。
なるほど、そりゃ苦しい。
オレに奪う力があったら色んな意味で奪いたかった。人の本音以上に苦痛なものはないからな。
「・・・・・・」
そう思っていると何故か王女様が涙を流していた。