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出会いと別れの異世界召喚  作者: ゼロカムイ
3/8

第一話 異世界で

 暗闇の中、突然意識が戻る。

 

 その感覚は寝起きみたいなもので頭の中がモヤモヤしている。

 

 目を開け、昨日のことのようにさっきのことを思い出す。

 

 そうだ。なんか変な光が教室で起こったんだ。

 

 けれどここは教室ではなく、どこかの大広間?みたいな場所だった。

 中世の城みたいな感じで無駄に広い。

 オレはこの状況に困惑しながらも体を起こし、なぜこうなったかと考える。

 

 「・・・・・・」


 しばらく考え、一つの仮説にたどり着いた。

 

 多分、異世界というありえないところに来たのではないだろうか。教室の魔法陣、それに瞬間移動。この二つの異常現象が当てはまるのは異世界召喚意外に思い浮かばない。

 

「心矢くんも起きたんだね」


 オレがそう考えていると奏也が近づき、話しかけてきた。

 

 相変わらずこんな状況になってもパニックになったりしていない。

 改めて奏也の精神力はすごいと思う。


「ああ、ところで奏也。お前はこの現象についてどう思う?」


 多分、奏也ならこの状況ぐらいわかるだろう。


「どう思うっていうか非現実的な現象が起こっていると思うよ」


 もしかしてこいつは周りを心配して当然の疑問を考えなかったのか。

 まぁ取り敢えずもっと聞いてみるか。


「その非現実的な現象とは具体的に何だ?」


 オレの質問にやはり奏也は考えてなかったのか右手で顎を支え、しばらく考える。

 そして頭に浮かんだであろう結論をオレに話した。


「多分だよ、異世界召喚とかいうやつなんじゃないかな。だってこの場所の雰囲気とか魔法陣が異世界っぽい感じを出してる」

「やっぱお前もそう思うか」


 やはり奏也も同じ考えのようだ。あまり異世界小説とか読みそうにないが異世界召喚だと思ったらしい。流石、テスト上位で頭のいい奏也だ。


「心矢くんもそう思ったのか、一緒だね」


 そう話しているとちょうど生徒全員が起きた。

 その事に一早く気づいた奏也は行動をする。

 

「ごめん、心矢くん。みんな混乱してると思うから落ち着かせに行くよ」

「ああ、行って来い」


 だが奏也が生徒を落ち着かせようと前に立とうとすると、

 直後、まるでタイミングを図ったかのように、一人の女性がオレたちの前に現れた。

 いかにも王女様っぽい服装を身にまとい、その女性はオレたちの前に立つと名乗り始めた。


「勇者様。ようこそおいでくださいました私達の国。シュリガン王国へ。私はシュリガン王国第一王女ミレーシュリガンです。混乱されていると思いますが、まずは私のお話をお聞きください」


 王女様が名乗るとぞろぞろと異世界人が出てくる。見た感じ神官や魔術師、騎士と思われる異世界っぽい奴らがいる。どうやら魔法や剣などがこの世界には存在するらしい。

 

 だがそれよりも言葉がわかった事に驚いた。何か女神様とかがいて言葉を通じるようにしてくれたのだろうか。そうだとしたらありがたいことだ。

 そう思いつつオレはしっかり周りを確認する。


  生徒たちはオレみたいに冷静じゃないのか眼の前の王女様に気を取られている。

 

 まぁ一部を覗いてだが。

 

 見た感じ生徒たちは不安、悲しみ、怒り、驚き、混乱、迷い、と色々な感情が見える。勿論、楽しみなどの感情も見えるが誰だってこんな状況だったら普通、不安などネガティブな感情が多いだろう。

 

 それにしても王女様は見た目が素晴らしい。美しい赤髪に整った顔。それに出るところはちゃんと出ていて出ないところは出ていない。まさに完璧だ。

 

 だが何故王様ではなく王女様なのだろうか。小説とかだと最初には大抵王様が出てきてこいつ嫌な奴オーラを出すのだが実際は違うのか。

 

 そんな疑問を抱いていると王女様が深呼吸をして話を続ける。


「ここはおそらくあなたがたのいた世界とは違う世界です。そして貴方方はこの世界に、この国に召喚された勇者なのです」


 王女様の言葉に、驚いたり不安を覚えたりする生徒が増える。

 オレも異世界召喚だと予想はしていたもの実物に遭うと流石に驚く。

 だが顔に出たりはしない。


「ゆうしゃかぁまじかっけぇ」

「何?どうなってんの!!」

「ここはシュリガン王国?何だそりゃ!!」


 と、どこかのバカたちが叫ぶ。

 あいつらはよくオレに絡む三人組。岡田善(おかだぜん)福宮春(ふくみやはる)品川守(しながわまもる)だ。男子二人の女子一人で簡単に言えば小悪党達だ。

 そして他にもいろんな生徒が騒ぐ。


「うそ!」

「早く帰らしてくれ!」


 暴れだす生徒もいたがその生徒は異世界人に取り押さえられる。

 それにしても周りの奴らがほんとにうるさい。

 異世界人もどうしようかと困っているようだ。

 

 だがここで王女様がうごく。


「静かにしてください」


 騒がしい中、王女様は胸に手を当て、生徒たちを一言で黙らせる。

 なかなか声が大きく、一瞬で場が静まった。

 ただ少し震えているようだ。緊張しているのだろうか。


「質問は後で受け付けます。だから今は私の話を聞いてください」


 そう言い王女様が話す。

 王女様の話は簡単に言えばこの国を守れということだった。

 

 魔族。そんな種族がいるらしい。そいつらが一年後、この国に襲撃してくるとこの世界では有名な占い師が言った。

 なんとその占い師は外れたことがないそうだ。それに前にも同じ予言がされている。

 

 その予言は別の国にされたがその国はそれを無視して行動し、予言をされた一年後、その国は滅んだ。

 シュリガンの王はそのことを恐れ、王族に伝わる能力、勇者召喚を使うことにした。

 そうして一年後に備えて勇者を育てこの国を守る、そのためにオレたちは呼ばれたらしい。

 

 全然わからないことだらけだがオレたちに戦えと言っているのはわかった。

 それにあってみたい人物と疑問が出来たので当分は退屈しなさそうだ。

 

 そういえば能力など細かいことは明日説明されると言っていた。能力というのは地球にはないものなので聞いてみたい。それに能力は全員使えるそうだ。なので使ってみたい気持ちもある。

 ただこの国の情報がないので能力のことも勇者召喚のこともまだ信用はできない。

 

「これでお話は以上です。何か質問はございませんか?」


 話を終え、王女様が質問はないかと聞いてきた。

 ただその際、王女様が一瞬、耳を抑えたのが気になった。

 

 だが今の段階では何もわからないので置いておく。

 するとこんなことを奏也が質問した。


「それはやる気がある人だけで構いませんか?」


 そんな質問に王女様は王様の代理なのか判断できないようだ。


「私だけでは判断できませんね」


 だが何故か奏也はそれでも下がらなかった。


「王様にも言っといてくださいお願いします、と」


 オレには何のことかわからない。明らかに今の話とあっていない言い方だ。奏也は何を考えているんだ?オレがそう思った時よくわからないことが起きる。


「姫様、王様からの通達です。そのものの願いを聞いてあげろとのことです」


 そう、王様に仕えているであろう兵士が王女様に言う。

 

 え?

 この事態が飲み込めないのはオレだけではないだろう。それぐらいスムーズにいきすぎだ。

 まるで最初から王様が奏也のことを知っているような感じだ。


「わかりました。ですが最低でも二十人は魔族と戦って欲しいです」


 オレはひとまず落ち着き、奏也の会話をよく聞くことにした。


「戦わない者はどうするのですか?」

「・・・・・・王様が何を考えているのかわからないので私からはなんとも言えません。なので一度あなたはこちらの扉から王様の部屋へ行ってください」


 王様のよくわからない通達に王女様はどまどい、悩んだ結果、奏也を王様の部屋へつれていくことにしたらしい。

 

 オレも生徒達も何が起こっているのかがわからない。

 だが奏也が関係するのは間違いないだろう。

 

 取り敢えず、オレはこのことを深く考えず、二三日過ごしてみることにした。何故なら今考えても答えは見えてこないと思ったからだ。だから二三日は情報収集をする。


 オレがそんなことを決めていると奏也が戻ってきた。

 そして奏也は王様と話したことについてオレたちに伝える。


 この報告は奏也の提案が通ったという報告だった。

 

 奏也の話によればオレたちは受けない選択をしていいそうだ。それに生活費など必要なものは王国が揃えてくれる。

 なんともこちらに都合がいい条件だった。

 

 なるほど、奏也は命をかけたくないとか怖いとか思っている奴らに逃げ道を作ったのか。

 最低でも二十人いれば十八人は戦わなくていいもんな。

 いわゆるヒモっていうやつだ。

 

 だがみんなが戦っているのに自分だけ戦ってないとか思って、変に罪悪感を感じる奴もいる。その選択は得策だとは思わないが。

 まぁ奏也にそれは任せればいいか。

 

 そしてオレの予想が正しければ奏也はこの話を受けるようだ。

 当然オレは受けるわけないが奏也についてくる奴はいっぱいいるだろう。


「じゃあ僕はこの話を受けます」


 話を伝え終わると奏也は王女様に目を合わせそんな事を言った。


 オレはわかっていたから驚かないが周囲は奏也の発言に驚きを隠せないようだ。

 

 

 そしてここから王女様に色々な質問が投げられた。

 どうしてオレたちなのかとか、お金の話とか、まぁ殆どは一人に一人メイドをつけるからそのメイドに聞けと言われた。

 

 執事は数が少なく、つけられないため女子もメイドらしい。

 メイドがどんだけいるんだよ、と思うが国王の住むところならありえる。

 

 その後もなんやかんや、やり取りが続き、結果、今日は休んで明日答えをいうことになった。


 

 勇者様の部屋へ案内します、とメイドさんに言われ、今は大広間を出て広い庭にいる。そこには宿みたいな建物がずらりと並んでいる。他にはバラが美しく、いっぱい飾られているところなどがあった。


 オレたちはそのまま用意された宿に向かい、取り敢えず一時間後に男子は奏也の部屋で会議、ということでみんな部屋に入って行く。

 みんなは心を落ち着かせる時間がほしいのだろう。ちなみに女子は七色の部屋だ。 

 

 そしてオレも部屋に入る。入るとそこにはこの世界で最高級の家具と思われるものが揃っていた。驚きながらベットで横になる。ベットはすごいふわふわしていて気持ちいい。

 

 ベッドでゴロゴロしたその後、一通り家具などをチェックし、部屋の中を探検する。

 

 だがすぐに暇になったので取り敢えずメイドさんに色々なことを聞いた。

 なのでこの世界の常識ぐらいは覚えただろう。やっとめんどくさいことをクリアした。

 

 だがまだめんどくさい事はある。


 オレはこの宿に来る前。七色や奏也、熊里と三人の生徒に話しかけられた。内容は多少違ったもの三人共、オレと話したいらしく会議が終わったあとオレは三人と話さなければいけない。

 

 まぁ嫌なわけではない。なぜなら元々話そうと思っていたからだ。

 

 だがめんどくさいのは一人ずつということだ。

 三人はどうやらオレ以外の人に聞かれたくないらしい。

  

「はぁ~めんどくさいな」


 ついついため息とつぶやきが漏れる。

 そしてあるものを持ち、操作する。


「やっぱこっちの世界では使えないか」


 予想はしていたもの、これは便利だから使いたかったな。

 そう思いオレはもう一度ため息を吐く。

 

「これからの異世界生活は色々と大変そうだ」

 

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